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槁木死灰の私から  作者: 案山子 劣四
飛花落葉の私と父

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第30話 飛花落葉の私と桜桃②

「ちょっと話脱線しちゃったね。」


一果はそう言って、咳払いをする。


「普段はそういうエクソシストとしての仕事をやってるんだけど、しばらくは槿ちゃんの日常生活のお手伝いと教会の業務をメインにするように、って言われてるわけ。」


「それだけ、教団は吸血鬼の事を警戒しているわけです。」


横から合いの手を入れるように、双葉は補足した。



涼の話だと、連花さんは2人に『藍上央』の危険性を伝えたくなくて帰したらしいが、結局気づかれたらしい。


良く考えれば、そうでなければ私の事を彼女達に頼まないか、と思い立つ。



「最初はめーちゃん1人で対応しようとしてたけど、天竺葵大司教に凄く怒られたらしいです。」


「れーくんそう言う所あるから。」


2人はそう言って、からかうように笑う。



天竺葵大司教という知らない人の名前が出たが、恐らく上司だと思う。


あの真面目そうな彼が、上司に怒られてしょんぼりする所を想像して、私も思わず笑ってしまう。



「だから、私達も吸血鬼問題が解決するまでの長めの休み、みたいな認識だから本当に気にしなくていいよ。」


「エクソシストはブラックだからこっちとしても休みがもらえて嬉しいです。」


気を使ってくれているのか分からないが、彼女たちは嬉しそうに話す。けれど、そう言って貰えると、少しだけ迷惑をかけている、という罪悪感が軽くなるような気がする。



「で、槿ちゃんさ、私達にあった感想、どうよ?」


椅子に腰を掛けたまま、一果は顔をこちらに近づける。


「どうせめーちゃんは当たり障りのない事しか言わないのです。聞いた時の印象とは違いますか?」


同じ様に、二葉も身をこちらに乗り出す。


鋭い。確かに、連花は当たり障りのないことしか言わなかった。



「確かに、思っていた印象とは違いましたけど、でも、お2人とも優しそうだし愉快な人で安心しました。お2人とも凄くお綺麗ですし。」


私も、当たり障りの無いことを言ってしまう。だが、本音ではある。



「綺麗ですって、お姉様。」


口を押さえるような含み笑いをしながら、二葉は一果に話し掛ける。彼女は央に魅了される前から、ふざける時はお嬢様言葉になる癖があったのだろうか。


「ねー!嬉しいこと言ってくれるね!」


同じように、口を抑えて含み笑いをしながら、一果は私を見た。


「槿ちゃんだって可愛いじゃーん!目も青くて綺麗だし、お化粧をしてないのに目もパッチリしてるし!」


「そうです。微笑んでる顔も、少し困った顔も、ちょっと儚げで『守ってあげたい!』って男ならなるに決まってます!」


2人は勢いよく捲し立てる。


「あの、いや、その…………。」


あまりこういった状況に慣れてなくて、私は顔を赤くてして、俯く事しか出来ない。



「やだ……。めっちゃ弄りがいあるよ……。」


「本当ですね……。これからの生活が楽しみです。」


そう言ってニヤニヤ笑う2人を見て、私はちょっとだけこれからが心配になる。




「まあ、ちょっと意地悪しちゃったけど、私達れーくんと違ってあんまり真面目な方じゃないしさ、普通に友達として話してくれればいーよ。」


そう言って、脚の間に掌を置き、一果はにかっと私に笑いかけた。


「そうですそうです。敬語も敬称もいらないですから。」


二葉は、胸に手を置いて、私に微笑んだ。



流石にタメ口は躊躇ったが、これからも過ごす2人に遠慮をすると、2人もやりづらいというのはわかる気がする。私も2人と仲良くなりたいと思っていた。だから、私は、



「うん。よろしくね。一果、二葉。」



と2人に改めて言った。



「さて、仲良くなれば後は。」


「ええ。『あだ名ドラフト』ですね。」


「え、なにそれ?」


「槿さんは気になりませんでしたか?何故、私達が連花黎明をそれぞれ違うあだ名で呼ぶのか。」



言われてみればそうだ。双子なら、普通同じあだ名で呼びそうなものだ。


「それは、過去に私と一果でお互いが彼を好きだった頃、『れーくん』と呼びたいと、2人で争った末に起きた出来事なのです。以来、友達が出来ると2人別々のあだ名で呼ぶ事にしているのです。」



しれっと明かされる衝撃の発言に驚愕する。



「え!?じゃあ2人とも……?」


「いや、今は一果だけです。その時も私が勝ったけど、一果が泣き出して面倒だったから譲りました。」


「ちょっ!?違うから!私は神に身を捧げる敬虔な信徒だし!」



そう言って、一果は顔を赤くする。


ああ、多分今でも好きなんだな。最近、こういう話が多くてにやにやしてしまう。



「何槿ちゃんも笑ってんの!?」


顔を赤くして、少し涙目になりながら一果は言った。



「ごめん、一果が可愛くて。」


私は、そう言って口元に手を当てる。


「もうやり返されたんだけど……。」


一果はそう嘆いた。


だが、私はそこであることを思い出した。


この前、連花が恐らく椿木に一目惚れをしていたのを。



(三角関係って言うのかな、こういうのも……!!)


私は自分だけがその事実を知っているという高揚感と、これからその関係がどう変化していくのかが楽しみだった。出来れば、私が死ぬまでに何らかの形を迎えてくれればいいな、なんて勝手なことを思う。



ちなみに、今回の『あだ名ドラフト』は、一果が『つっきー』、二葉が『むーちゃん』で、特に取り合いにならなかった。


2人があだ名を取り合っているところが見たかったから、ちょっとだけ、残念。

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