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槁木死灰の私から  作者: 案山子 劣四
虚実古樹の私

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202/219

第202話 飛花落葉の私から、あの時、ハロウィンパーティーをしたけれど。

10月31日。その日に『ハロウィンパーティがしたい』と言い出したのは、私の記憶違いでなければ二葉(ふたば)一果(いちか)だったと思う。『コスプレして皆で集まろうよ』とも言っていた、はずだ。



その2人が、いつも通りのシスター服を着ている、と言うのはどういう事なのだろう。ハロウィンらしい装飾が施されたその部屋で、私達は2人に対して冷めた目を向けていた。



「……槿(むくげ)から、君達が『コスプレをしてこい』と言い出した、と聞いたのだが。」



(りょう)も腕を組みながら、不服そうに2人を睨みつけている。昔の貴族のような服装をして、吸血鬼のコスプレだと言い張っている吸血鬼の彼に指摘する権利があるのかは分からないけれど、少なくともいつもの恰好をしている2人よりはマシだろう。



「してるじゃん。シスターのコスプレ。」


「そうなのです。これが結局一番可愛いのです。」



「それを言えば何でも許されるわけではないですからね?」


ピエロの恰好をした連花(れんげ)は、白塗りの顔の下で分かりやすく不愉快そうな表情を浮かべる。体格のいい不機嫌な表情をしたピエロは後で夢に出そうなほどに怖くて、私は出来るだけ視界に入れないようにした。



「いいでしょ別に。それを言いだしたらつっきーだって、黒いボサボサのウィッグ被ってるだけでいつもの白いワンピースだし。」



自分の手抜きが気付かれて、私は思わずどきっとする。


「だ、だって、あんまり私が本格的なお化けのコスプレしたら、洒落にならないし……。」



私の言葉に、全員が気まずそうに目を逸らす。しまった、と慌てた私は、


「で、でも。まだコスプレで済んでいるから。」



と付け足すが、空気は更に重くなるばかりだった。



「あの……。」


気まずい空気の中、人参の着ぐるみをきた小春(こはる)はおずおずと手を上げる。



「そもそも、ハロウィンパーティーって何するんですか?」


数秒の沈黙の後、各々口を開きだした。


「私も知らないな。」


「異教徒の豊穣祭ですよ。」


「コスプレしてお菓子とか食べるんでしょ?」


「『トリックオアトリート』とか言うのです。」


「それって、トリックかトリートされる側がいないと成立しない、よね?」


「まあ、そうなのですが……。」



ここで誰も言葉を発さなかった事から、大人が全員コスプレして集まるハロウィンパーティーの答えを誰も持ち合わせていないらしい事は分かった。言いだしっぺの二葉と一果も、きっと『何か楽しそう』以外の認識を持ち合わせていなかったのだろう。




「とりあえず、乾杯しよっか!」


一果はそう言って場を取り仕切り、二葉と双子ならではのコンビネーションで強引に全員にグラスを配り、何に感謝しているのか分からない『ハッピーハロウィン』の言葉でハロウィンパーティーは始まった。




ーーーーーー



大分散々な始まり方をしたハロウィンパーティーだったけれど、食事を取りながら談笑をしているとなんとなくパーティーらしい雰囲気になるらしい。楽しげな雰囲気でめいめいがざっくばらんな会話をしている中、お酒を飲んで楽しくなっていた一果が、話の流れを無視していきなり、



「そういえばさ、クリスマスパーティーやろうよ。」


と提案した。私の横にいた小春は嬉しそうに目を輝かせて、


「やりたいです!」


と元気よく返答した。


「そうですね。去年の12月は散々でしたから……。」


「ね……。」



遠い目をして肩を落とす2人を見て、そういえば2人は去年、(おう)のせいで散々な目に遭ったのだったな、と思い出す。



「去年、何かあったんですか!?」


「まあ、色々とね……。」


「そんな事より、小春ちゃんはクリスマスパーティーするなら参加出来そう?」


心配そうに一果と二葉を見つめる小春がそれ以上話を深掘りしないように、私は話を切り替えた。小春は目を瞑り、唸るようにしていた。やはりクリスマス時期は忙しいのだろう。



「出来るだけ、参加したいです……!!」



考えた末に口から絞り出した小春からは大人しての葛藤が見えて、今更ながら彼女が社会人だという事を思い出した。



「涼も参加するよね?」



ソファで酔っ払った連花に絡まれている涼に声をかけた。彼は顔だけこちらに向けて答える。



「ああ。私は特に予定はないしな。」



すると、小春は不思議そうな表情をした後、涼に訊ねた。



「いつも思ってたんですけれど、岸根(きしね)さんて何のお仕事をしているんですか?お昼はずっと忙しいのは聞いていますけど。」



不意の小春の質問に、一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに涼は悲しそうな表情を作り、悲しそうな声色で答えた。


「……もう、槿とどれだけ一緒にいることが出来るかは分からないから、出来るだけ一緒にいてあげたいんだ。」


小春の質問には一切答えず、精神論で押し切るつもりらしい。小春もその言葉を聞いて、


「岸根さん……!!」


と呟いて目を潤ませていた。よく咄嗟にそんないい訳が思い付くものだな、と私は呆れよりも感心が上回った。



とにかく、そんなこんなで私達はクリスマスパーティーをすることになった。










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