7
女王様降臨。
「それで、進路希望調査には何を書くつもりなの」
放課後の残り時間も終盤に差し掛かった頃、補習課題も一日でようやく半分程進んだ楠木さんが不意に口を開いてそう尋ねて来る。
この時間になって彼女が質問以外で口を開いたならば、それは机に齧り付く時間に終わりを告げる合図でもあり、こうなった彼女は最終下校の鐘が鳴って宮野先生の元に課題の進捗を見せに行くまで何をしようとも頑なな様子で一切課題に手を付けなくなる。彼女は自分に厳しいところもあるが、甘やかすところはとことんまで甘やかすし、そうと決めれば梃子でも動かない頑固さを見せる。
それが良いことなのか悪いことなのか僕には計りかねるのだが、この後の帰り道が平和に過ごせるのであれば僕にとっては良いことなのかもしれない。しかし、結果的に課題に追い込まれそうになった楠木さんは機嫌を悪くするので、総合的に判断すれば悪いことなのだろう。
そんな傲岸な女王様を地で行く楠木さんの質問に、僕はペンを置いて頭を悩ませる。
結局この日は、楠木さんの課題を手伝うことに気を取られて進路について考えることは出来なかった。
正確には、考えることから逃げていたとというべきか。
それを証明するかのように手元に置かれた進路希望調査の紙は空白のままで、楠木さんの視線がそこに向いているのが分かるがゆえに、咄嗟にそれを隠そうと動いてしまったのは実に情けないことだろう。
「……将来やりたいこと、やってみたいことを書いてみろ、って言われたけど、何を書いていいのか分かんなくて」
「あれだけ私の話を聞いておいて何も書けないの? 感受性、ぶっ壊れてるんじゃないの?」
「……楠木さんのマネージャーにでもなれって言いたいの?」
「あんたみたいなのが私の周りをウロチョロしてたら目障りだもの。お断りだわ」
「はぁ……。どうしてそう、人当たりが強いのかな……」
「モデルはアイドルじゃないもの。愛嬌や愛想なんてのは必要無いの。そこら辺の犬にでも食わせたわ。誰かに左右される人生なんて、誰に言われようともごめん被るわ。何せ、私が気に食わないもの」
――私の人生は、私が決める。
そう言って背筋をピンと伸ばして我の道を歩む楠木さんは、ただ流れに身を任せるだけの僕とは違う。かと言って楠木さんが無理なことを口にしているようにも思えず、彼女ならばその道を貫き通せるだけの強さを兼ね備えているのが目に見えていた。
僕には、そんな楠木さんの強さが何よりも羨ましく思えて仕方がない。
「でも、何かしら書かないといけないんでしょ。あんたは何に興味があんの。こんな部活に入ってるくらいだし、映像関係? 映画監督?」
「い、いや、僕にはそんな大それたことなんて、出来ないよ。せめて、身の丈に合うような……」
「それもそうかもね。陸上部全員が必ずしもオリンピアンを目指しているわけでもないし、誰もが上を目指してるわけじゃないのは当然だもの。私だって、自分に合った生き方っていうのが誰にでもあると思ってるしね。それこそ別のベクトルで上を目指しているかもしれないし。……でも、結局は部活なんてのは好きだからやってるんでしょ? それは理解できたけど……じゃあ、結局あんたは何がしたいわけ?」
「何がしたいかと聞かれると……。えぇと、」
「はっきり言いなさいよ」
「いや、う、うぅんと……」
僕はいちいち楠木さんの表情を、顔色を窺って言葉を組み立てる。
不興を買わないように、機嫌を損ねないように。
誰が相手でも必ず決まって顔色を窺うようになったのは、いつからだろう。
両親が離婚してから? 姉と離れ離れになってから? 父親と、二人きりになってから?
明確な答えは分からないが、僕は今、彼女が僕のことを不愉快そうに見ている理由を探らなければならなかった。
しかし、その答えを求めるだけの時間的余裕は与えられず、僕の欲していた答えは楠木さん自身の口からもたらされるのだった。
「……私の機嫌を伺う必要は無いでしょ。今は、あんたの話をしているの。あんたが将来何がしたいのか、それを考えるのにどうして私が介入するの? あんたはただ、あんたのやりたいことを考えてそれをここに書けばいい。ただそれだけのはずでしょ。私の顔色を窺う必要なんて、ないの。……今、私は誰と話してるの? あんたでしょ! なら、あんたも私と向き合って話してよ。こんなんじゃ、私の一人芝居みたいじゃん……!」
「う、えっと……」
何も発せずにいると、楠木さんは苛立ちを隠せない様子で捲し立てながら、真っ新なままの進路希望調査の紙を指先で叩く。
ここでこれ以上彼女の機嫌を損ねないために僕が取るべき行動は、最低でもヘラヘラと笑って「そうだね」と同意と共に反省の意を示すこと。
それしかないと分かりつつも、僕はその行動が何よりも禁忌であることを直感しており、僕の知る限りの最善策を取ることが出来ないでいた。
人の機嫌や顔色ばかりを伺うようになってからというもの、僕のそういったどっちつかずの態度が気に食わないと指摘されることは多々あったが、僕はどうしてそれが誰かの逆鱗に触れるのか理解できておらず、そうやって乗り切る方法しか知らなかった。
だけれども、その手段を取れば相手は矛を収めてくれてその場を乗り切ることが出来てきたのだが、それ以降、決まって相手は僕と関わらなくなる。僕のその張り合いの無いつまらない態度が相手の興を削ぐのだろう。八方美人で、あっちを立ててこっちも立てる。そんなことを繰り返してばかりいたから、人が離れていく。そしてそんな処世術と呼ぶのも烏滸がましいような舐め腐った態度が僕のつまらない人間性から来ていることは百も承知であった。
僕のその退屈な人間性が表に出たから、誰もが僕から興味を失っていく。だから僕は、初めからこの退屈な人間性を表に出すようにして、八方美人でいることを止めた。そうすれば、初めから本当の僕を見てくれる人がいるんじゃないかと、期待して。
その結果、僕はただのつまらない人間に成り下がり、孤独はさらに加速したのだがそれももうどうでもよくなっていた。
それでも。
どうでもいいなんて思っていながらも、友達が欲しかった。
だって、一人は寂しいから。
どうでもいいことは、どうでもよくなんかない。
自分でも分かるくらい面倒くさい人間性をしていることを自覚しつつも、そんな素の僕を曝け出すのが怖くなって、結局僕は嘘を重ね続ける。自分自身の価値を下げる、くだらない嘘を。
自分から孤独を選んだくせに、一人で居るのは寂しいと宣う。
そんな中途半端な気持ちで、覚悟で居るからこそ、僕はいつまで経っても一人のままなのであった。
だから、今回も彼女の留飲も下げる方法として、八方美人を気取る態度を取ればよかった。
そうすれば、楠木さんは留飲を下げてくれるのと同時に、僕から興味を失う。
僕は再び、この部室で静かに卒業までの時間を死んだみたいに生き続けるのだから。
そうするべきだと頭では分かっていたのだが、どうしてか僕は楠木さんの前ではその行動を選択することを憚られる。それが何を意味するかは自分でも分からないのだが、僕は必死に思考を巡らせて別の答えを探すのだが、頭に沸いてくる言葉の数々はどれも感情的で、どれも口に出すのも恥ずかしいような言葉ばかり。
だが、これ以上楠木さんを待たせては更なる不興を買ってしまうのではないかという恐怖を抱くと同時に、どうしてそこまで言われなければならないんだ、という酷く自分勝手な苛立ちも募らせていた。
僕は喉から空気を絞り出すようにして彼女に『反論』と言う名の感情を口にする。
「何、その目は。言いたいことがあるなら──」
「ぼ、僕は……! 君みたいに、素直に自分の感情そのままを口に出すのが、怖い……っ、から! 一つ言葉を選ぶのにも、時間が、かかるの……! だから関係無くても人の顔色を伺うし、機嫌だって取らなきゃいけない。そうしてやっと、僕は人並みに話せるようになれたから! はぁ、はぁ……。理解してほしい、わけじゃ、ないけど……」
息を切らしてまで啖呵を切った直後、目の前には確かに僕の言葉に目を丸くしつつも耳を傾けてくれていた楠木さんの呆気にとられたような表情が目に映り、瞬間的に僕の胸の中には罪悪感が溢れていっぱいになる。
「……不快に思ったなら、謝ります、ごめんなさい」
余りにも突然普段使わない喉の筋肉を動かして捲し立てたせいか、僕の体は途方もない疲労感を抱えて息を切らしてしまう。
ここまで軟弱だったとは自分でも驚くばかりで、それでも僕が生意気なことを言っている自覚はあった。
不興を買ったのは自分のくせに、取ってつけたような謝罪と何様のつもりで語っているのか分からないような話の中身は、このまま部室に留まっていることすら恥ずかしく思えてくる。
聞く人によっては大胆不敵とも取れるような発言は、普段から女王様と揶揄されている楠木さんを鼻で笑えるくらい高慢ちきな考えを露呈しているよう。
何が、理解してほしいわけじゃない、だ。
理解してほしいに決まってる。理解した上で、僕を許容してくれる誰かを、僕はずっと待っていた。自分から探そうともせずに、待ち続けていた。それがどれだけ怠惰で、どれだけ馬鹿げた話かなんて言うまでもないだろう。
つまりは、今しがたの発言はそういう僕の拗らせた人間性がいつの間にか発酵を通り越して腐っていたものを開示しただけに終わったようなもので、それを自覚した僕は最早彼女の顔なんて見れなかった。
どんな顔をして彼女と対峙すればいいのか、分からなくなる。
自分で生み出した部室に留まってなど居られないような空気に耐えかねて逃げ帰ろうと部室の外に足を向けた、その時──。
「待って」
楠木さんに背を向けて部室の外へと向かって歩き出そうとした僕の体は背中にかかった声と共に腕を引かれて、足が止まる。腕を振り払うことも可能であったが、今しがた黒歴史に名を刻むような重大事変が起こった直後にそんな真似が出来るはずもなく、僕は「参った」と言わんばかりに彼女の方にゆっくりと体を翻す。
地獄の一丁目はここか、とすら錯覚出来る程に重たい空気の中、恐る恐る楠木さんの顔を見上げるとそこには、目元に影を落とした表情の読めない彼女がそこにいた。
「やっとこっち見た」
僕が顔を上げるのを見計らったかのように端正な顔立ちが僅かに上を向いたかと思えば、興味津々と言った様子で猫のようにくりりとした目が僕の捻くれた目を真っ直ぐに見抜く。
ただそれだけで僕の肩肘張るように入っていた力が抜け、些細な抵抗も無に帰したかのように錯覚してしまえる。
「……私は、なんでも言ってもらわなきゃ気が済まないの」
「は……?」
楠木さんは僕の腕を掴んだまま、僅かに逡巡する様子を見せた後に、僕とは違って言葉をスルスルと口にしていく。
「嬉しいとか、悲しいとか、辛いとか、好きとか、嫌いとか。全部、言ってもらわなきゃ気が済まない。だから陰口みたいに遠回しに悪口言われるのとか、大っ嫌い。でも、私がそう言われる原因を作っているのは確かな事実だけど……、それが、私だから。誰かの為に私を曲げることは、他の誰が許したとしても、私自身が許さない。そうじゃないと、私が私じゃなくなってしまうような気がしているの。だから、私はなんでも言うし、なんでも言ってもらいたいの」
今この瞬間の僕の顔は、分かりやすいくらい怪訝な表情をしていることだろう。
それくらい、楠木さんの言葉が理解できなかった。否、理解できなかったのは彼女の言葉ではなく、どうしてそれを僕に言うのか、という疑問。
そうして僕が頭を悩ませていると楠木さんはフッ、と口元を緩めたかと思うと、より一層掴んだ手に力が込められる。
「……どう? これでお相子ね。だから、これからもあんたには私という存在を強要していくから、よろしくね」
堂々と価値観の強要を宣言して見せる楠木さんの姿は、正しく無理難題を押し付けて来る邪悪な女王様そのもののようで、どこか生き生きとしているようにすら思える。
よくよく観察してみれば、笑みの裏に何かが見えてくるような気がしてくるのだが、それが見えたらおしまいだと本能が警鐘を鳴らしてくるようで、触らぬ神に祟りなし、という言葉があるようにその件には触れないよう心掛けながら、様子を伺う程度ならと甘い考えでそっと袖の下で手を伸ばす。
「こ、これからも……? というか、価値観を強要するのは、良くないんじゃ……?」
「なにも悪いことを強要しているわけじゃないじゃない。それに、あんたにとってみれば薬みたいなものでしょ? 私が、あんたに友達の一人や二人作れるよう鍛えてあげるって言ってんの。何が不満なの」
「い、いえ……不満じゃ、ないです、けど……」
その結果、待っていたのは「黙って言う事を聞け」という女王様のお言葉であり、それに留まるどころかむしろ感謝しろとすら言ってくる始末。最早手の付けようが無いよコレ、と尻すぼみに小さくなっていく自分の声量が情けなく感じて涙がちょちょ切れる。
「というか、楠木さんにも友達って、いるんですか?」
「別に必要だと思ったことないけど。それよりも、何で敬語?」
「いや、うん……。まぁその……、はい。今後とも、よろしくお願いします……」
拒否権など初めから存在していないかのように、眼光だけで彼女の意見が押し通されたのは偏に、僕の意志の弱さゆえ。
決して彼女の押しが強すぎるとか、断った後の方が面倒だとか思った訳じゃない。かと言ってそれらの意見が一ミリも頭に過らなかった訳でもない。単純に、頷く事でこの場をさっさと乗り切れるのならば乗り切ってしまった方がいいと、僕の弱い心がそう言って聞かせるかのように精神面を鑑みて正しいと判断したまで。
「それじゃ、今日も宮野先生に飲み物を奢ってもらいにいきましょう」
「課題の進捗、ね」
「今日は誰かさんのせいで全く進まなかったけど」
「うっ……、返す言葉も無い」
部室の鍵は壊れて締まりはしないが、出入り自由な点は楽が出来て非常に良い。ただ、出入りするのはもう僕と楠木さんの二人しかいないのだけれども。
それから真っ直ぐに職員室へと向かって、今週一週間の定番と化した補習課題の進捗確認の儀式を行った後、宮野先生に先導されて自動販売機までやってくると「好きなのを選べ」と言われる。
僕は決まって初日に選んだ缶のサイダーと同じ物を選ぶのだが、楠木さんは毎日違うものを選んでいて、今日はいろいろな名前がある紙パックの乳飲料を選んでいた。先生は相変わらず、ダンディなおじさんの顔が目印のブラックコーヒーを飲んでいた。
「喧嘩すんなよ~」
まるで今日の部室での出来事を見聞き知ったるかのように帰路につく僕達の背にその言葉を投げかけてくる宮野先生に僕は驚きの表情を見せたものの、楠木さんは冷静なまま「いつも適当言ってるでしょ」と肩を竦めていた。
「……き、今日は、ごめんなさい」
楠木さんは徒歩で、僕は自転車を押す帰り道。
普段なら滅多に会話の一つもしないその道すがら、僕は勇気を振り絞って謝罪を口にする。部室を出てから今まで、今日のことはきちんと謝るべきだと考え続けてタイミングを見計らっていたのだが、いざ口に出してみれば「急だったかな」とか、「気持ち悪がられてないかな」なんて余計な心配ばかりが浮かんでくる。
それでも、楠木さんはそんな僕を笑うわけでもなければ、距離を取る訳でもない、変わらぬ距離感のまま、あっけらかんと言ってのける。
「随分急に謝るのね。別に、一緒に謝ってたでしょ。それで十分。後になっても過去のことを引きずるような暇人じゃないの。私はもう、今を生きているんだから」
「それでも……。この謝罪は、僕が満足するための、ケジメ……。そう、自己満足のケジメなんだ。だから、受け取ってくれると、嬉しい、んだけど……」
「そういうことなら、黙って受け取ってあげる。小指とかは、いらないけどね」
相変わらず、僕から見える楠木さんの言動全てが憎らしい程にかっこいい。
昼が伸びて夜が短くなる季節。茜色に染まる水平線と、暗闇に染まる夜の空。二つが交わる夜道を、僕と楠木さんは並んで歩く。
同じ景色でも、僕と楠木さんとでは見ている世界が違うかもしれない。
学校から駅までの十数分の道程の中、街灯のスポットライトだけでも輝かしい彼女ではあるが、伺うようにチラチラと盗み見るばかりでは彼女の横顔から表情を読むことはできない。
けれども、彼女の声音からして僕の謝罪を受け入れてくれたのは不承不承というわけでもなさそうだった。
「それで? 進路希望にはなんて書くつもりなの」
「うっ……」
思い出したかのように聞かれたその問いに、僕は慌てて言葉を選ぶのだが、その間楠木さんは急かす素振りも無く、ただ黙って緩やかになった歩様を合わせて歩いてくれていた。
「えっと、姉さんに、聞いてみてから考えようかと思ってる」
「……へぇ、お姉さんいるんだ」
「う、うん。く、楠木さんは、どこの大学に行くつもりなの?」
「女子大よ。私立の、梅ヶ峰女子大学。奨学金貰って、行くつもり」
「梅ヶ峰……」
「何、一緒の大学にでも行きたかったの? でも残念。女子大でした」
「いや、姉さんの大学と一緒だな、って思って」
「そうなの? お姉さん、梅女の人なの? ……オープンキャンパスには行くつもりだけど、実際に通ってる人の意見も聞いてみたいわね。お姉さんと会って話がしてみたいんだけど、紹介してくれない?」
「え? あ、うん。時間があるかどうか、聞いてみるよ」
「ふふん、ラッキー」
確かに、彼女の性格ではオープンキャンパスに行ったところで仲良くなれるのは大学の先生くらいだろう。……いや、むしろ年上には礼儀を払うのであれば、大学生相手でも十分やっていけるのではないだろうか?
なんて考えてみても、女同士の花の園の事情なんて男の僕では分かりっこない。もしかしたら楠木さんは年齢問わず自分に敵意を向ける相手ならば誰あろうと噛み付いていくのかもしれない。
ふふん、と鼻を鳴らした楠木さんは上機嫌な様子で、駅前に近付くにつれて明るさを増していく街並みに比例するように明るくなった口調で「また来週」と言って改札を潜っていく。
「ひめ姉に連絡入れとかないと……」
スマホを取り出してチャット形式のメッセージアプリを開いて今し方頼まれた件について一報を入れると、すぐに既読の表示が付いてスタンプが送り返される。姉はまだ仕事中のはずなのだが、これがどういう意味を持つのか、学生の身分である僕には到底わかりかねる事情が含まれていそうで、聞くのも野暮かと思いスマホをポケットに仕舞い込む。
サドルに跨って家に向かってペダルを踏み込んでいく傍ら、頭の隅で進路希望調査の事を考えながら帰路を駆け抜けていったのだが、家に付いた頃には思考は無数の人と光で混ざり合う繁華街のように混沌と化しており、ろくな考えの一つも生まれないまま今日が過ぎ去っていくのであった。
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