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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第一目標! きれいな水を手に入れろ!
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ろ過器、ゲット!

「ティーチ、ターチ、ミーチ。ろ過器を作るには、何をしたらいいの?」

「まずは、砂と砂利と木炭を洗う!」

「汚れが出なくなるまで、じゃぶじゃぶね!」

「兄ちゃんは、ジョッキ4つの底に、ちっちゃな穴を開けて欲しいな!」

「分かった。刃物使うのは兄ちゃんがやるから、任せてな?」

「「「うん!」」」


 下準備の内容は、砂・砂利・砕いた木炭を別々に洗うのと、ジョッキの底中央に小さな穴を開けること。木炭はさっき兄ちゃんにワンパンで砕いてもらった。おかしいって。いくら脆いからって。

 受け皿予定のジョッキに砂たちをそれぞれ入れて、井戸水で濯ぎまくる。茶色や黒い汚れが出なくなるまで、地道に。川から拾ってきた砂と砂利はいいとして、木炭はいつまでたっても黒いのが出てくる。このまま全部水に溶けちゃうんじゃないか? 藁ゴーレムたちやジョッキの底に穴を開け終えた兄ちゃんも手伝ってくれて、やっと綺麗になった。……兄ちゃんのパワーで、木炭が、もっと細かくなったような気も、しなくはないけど。


 砂たちを洗い終えたら、いよいよ組み立てだ!

 底に小さな穴を開けたジョッキに、布の切れ端→砕いた木炭→布→砂利→布→砂の順に敷き詰めていく。ろ過器の下に普通のジョッキを受け皿として重ねて置いたら、完成!

 コンパクトだし、元がジョッキだから持ち手あるし、中は見えないけど木製だから割れないし!


「「「できたー!」」」

「これで、本当に水が綺麗になるの?」

「泥水なら! たぶん!」

「そしてここに、砂と砂利を洗った時の泥水が!」

「この泥水で実験しよ!」

「残してたのは、そういう事か。それじゃ、試してみようか!」

「「「うん!」」」


 さぁ、手順の④から続き、やってこう! 汚水を上からゆっくり注いでくぞ!

 俺が泥水カップを静かに傾けて、ターチが兄ちゃんと一緒に持つジョッキろ過器に砂が崩れないように注ぐ。砂と砂利と木炭と布を通った泥水は、多少綺麗になって、ミーチが支えるジョッキの中にポタポタと溜まっていった。


「すごーい! 綺麗になってるよー!」

「透明? 透明!?」

「俺からじゃ見えないけど、どう!?」

「うーん、兄ちゃんから見ると、お世辞にも井戸水より透き通ってるとは、言えないかな」

「「「そうだよねー」」」


 でも、それは想定内。何度もろ過器を通す事で、きれいにして、煮沸消毒するんだ。土臭さが少なくなるといいなぁ。

 同じ水をあと2度、ろ過器に通す。そしたら井戸水にも負けない透明度になった! これを兄ちゃんが起こしてくれた焚き火で沸かして10分以上かけて消毒して……。


「「「できたー!」」」

「おめでとー!」


 兄ちゃんがパチパチと拍手してくれる中、俺たちはついに! ろ過された水を手に入れた! 早速飲んでみよう! ジョッキ一杯分できた白湯を4人分にコップに分けて、ゴクゴク!


「「「わー! 炭の味ー!」」」

「うはははっ! ホントだね!」


 初めて作った浄水は、最後に通った木炭の風味が存分に混ざってた。飲めないこともないって評価は、煮沸井戸水と一緒! つまり、意味ない!


「なんでだろ、炭が多かったのか?」

「炭を砕きすぎたのかな?」

「同じ水をろ過をしすぎちゃったから?」

「すごい、直ぐに反省会してるんだね」

「「「井戸水より良くなきゃだもん!」」」


 せっかくやるなら、より高みに! 完璧に、とまでは俺たちも言わない。せめて、もう少し炭の匂いを抑えたい──


「遊びは終わったかい」

「!」

「「「あ、父ちゃん!」」」


 三つ子で円陣組んでたら、近くのジンニン畑から父ちゃんがやってきた。

 様子を見に来た父ちゃんは、色が俺たちと一緒で、顔は兄ちゃんをそのままもっと大人にした感じ。つまり普通にハンサムだ。流石、母ちゃんが押しかけ女房になっただけある。

 そんな父ちゃんが、ちょっと冷たい目をして、俺らを見下ろしている。


「あのなー父ちゃん! 俺たち、兄ちゃんと一緒にろ過器作ってさー!」

「布と砂と砂利と木炭で、泥水きれいにできたんだよー!」

「ほら、見て! きれいでしょー!」

「……ろ過なんて言葉、どこで覚えたんだい」

「「「えっ」」」


 あ、あれ? 俺らにとって一番マズイ相手って、もしかして、父ちゃん?

 うわっ、あ、身内ってか親だから、まだ5歳児の俺らが何を学んだかも、大体把握してる、よな。あっ、やっべ。た、助けて、兄ちゃん!

 立ち上がって、父ちゃんとほぼ同じ目線になった兄ちゃんが、俺らの前に立ち位置をずらした。


「俺が教えた。今日、山の中で、川の水を飲むにはどうするのかを教える為に」

「……そうか」

「この装置は、その時にこの子達が穴を掘らなくてもろ過が出来るようにと、考えてくれたんだ」

「なるほど」


 ほっ。兄ちゃんが庇ってくれた……。って、安心したけれど。やっぱり今日も、兄ちゃんと父ちゃんは仲良くなかった。敵みたいにしちゃって、ごめんなさい、父ちゃん。

 腕組みをした父ちゃんが俯いて、フンッと小さく溜め息をついた。


「うちの井戸水じゃ満足できないのかと思ったんだが、そうじゃないんだね」

「そうじゃない! でも、土臭さは変えられるかも!」

「ろ過する炭の量とか大きさを調節したら、今より飲みやすくなるはず!」

「それに、水瓶の中に木炭を入れたら、土の匂いが取れるかも!」

「……やってみなさい。水瓶のひとつを、お前たちに管理させよう」

「「「ありがとう!」」」


 やっぱ父ちゃん、兄ちゃんにはあんまりだけど、俺たちには普通に優しい! 兄ちゃんとも、もっと普通にお喋り出来ればいいのにな。仲良くしてくれた方が、俺ら、嬉しいのに。


 何はともあれ、家長である父ちゃんから許可を貰ったから、思う存分研究した。ろ過する時の炭の量や細かさを変えてみたり、炭自体をよく洗って、煮沸消毒してみたり。

 3日かけて実験した結果、


ろ過器

 泥水を注ぐ量をもっとゆっくりにする。


井戸水を溜めた水瓶

 よく洗って、煮沸消毒して、陰干しした木炭を数本、煮沸消毒した水が入った水瓶に入れて一日放っておく。


 こうすると、水から土臭さはだいぶ軽減されて、炭の匂いは移らない。良い方法が見つかった!


 清潔な水、ろ過器、ゲット!


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