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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
帰ってきた三つ子
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焼けた! 焼けた! 薄切り込み芋!

 石窯の扉替わりの石を外して、棒で引っ掛けて鉄板を取り出す。その上に乗ったガジャ芋は刻んだリクッガ(ニンニク)と一緒に濃いこげ茶色になっている。香りも素材の香ばしく焼けた美味しい匂い! 大丈夫。これはもう焼けている!


「「「やったー! おいしそー!」」」

「ほんと! いい焼き色だね!」

「芋が、ご馳走に見える……!」


 でしょー? えーっと、5人居るから、1種類につき2等分と3等分にする感じかな。


 切り分けようのナイフで表面を撫でると、カリカリッと小気味いい音が鳴った。おおー! さすがフェンが火を点けた石窯! 火力がモノを言ってるぜ!

 切り込みに合わせて刃を当てて、サクサクッと芋を切り分ける。立ち上る湯気と香りがまた食欲を唆って、盛り付ける時に思わず喉を鳴らしちまった。

 フジミティが摘んで水で洗ってくれた広めの葉っぱが敷かれた皿に、プレーンとリクッガ味をひと切れずつ盛り付ける。緑で映えてる! なんかこの葉っぱ、餅乗っけたい! っとと、余計なことはここまで!


 さぁ! お手々を合わせて!


「「「いただきます!」」」

「「いただきます」」


 挨拶を済ませたら、フォークを手に取って! プレーンな方からグサリ! うひゃあ! ホクホクな感触と、染みてたバターがジュワッと! 断面からいったからなんかジューシー感が真っ先に感じる! 絶対に熱いから、ふーふーして!


「「「はぐっ! んっ、あふっ、……ん~~~!!」」」

「ほっぺ押さえるとこまで……。お前ら、ホントに三つ子だったんだな……」

「フシール君も食べてごらん? これ美味しいよ!」


 しっかり焦げ茶色になった切り込み部分はサクッとしてて、中の方はしっとりホクホク! しっかり効かせた塩がすごい合ってて、バターのじゅんわり感も堪らない! これ、俺の手が5歳児モチモチお手々じゃなかったら、ちぎって食べるのもアリだったかもなぁ!


「ホントだ、うまぁ! これがふかし芋の代わりなら最高なのに!」

「食べ盛りには最高だよねぇ。お酒のアテにもいいかもな」


 続いてニンニク、じゃない。刻みリクッガ入りをムシャ! うおおっ! 匂いもそうだけど味もリクッガのパンチが! 間違いなく美味しいし、少ないからまだおこちゃま敏感舌でも耐えられるけど、これはスゴイ! 現にフジミティが「ウッ」って内臓にキてる顔してる。慣れろ。

 ただ、フシールお兄ちゃんとクガニ兄ちゃんは目を見開いて「美味しい!」って顔だ!


「う、わぁ……! 芋が、芋じゃねぇ! リクッガがあれば、これが肉代わりになりそうだ!」

「肉、そうか、薄い肉を挟めば立派な主役になるよ!」

「「「それいーねー!」」」


 実際、俺もベーコンを挟んだことあったわ。ホントにそれだけでメインディッシュになるんだよ。

 なんてことを考えてたら、自分の巨大なリュックサックを漁りに行ったクガニ兄ちゃんが、両手に何かを持って「これこれ!」って言って帰ってきた。どっちも布に包まれた、細長いのと、漬物石くらいのなにか。クガニ兄ちゃんは細長いのから括る紐を外した。


「こっちが乾燥セパリで、こっちは干しボア肉。あー、フシール君、薄く切ったの挟む?」

「あ、はい。貰いたいです。セパリもいいっすか」

「どうぞー」

「「「くっそー!」」」


 ずるいぞお兄ちゃんたち! 少ないからもう平らげちまった俺たちの前で、うまそうなもん開発すんな! もー怒った! お母さんたちの分を作る時はお兄ちゃん達の分作らねぇから! って、あ。もうバターねぇじゃん。どうしよ、ただのベイクドポテトになっちまう。


「そんな悔しがらないでよ、テーラ、フェン、フミジティ。君らにあげる食材と調味料、このカバンにいっぱい詰めてきてるからさ!」

「「「やったー! クガニ兄ちゃんだーいすき!」」」


 そういやそうだ! 思い出したぞ! 俺らが料理研究するのに困らない位の調味料があるのは、クガニ兄ちゃんが世界から集めてきてくれたからだったな! 『思い出したあとですぐに研究出来るように』ってさ! 今の再発明方針が、“この土地で無理せず作れるもの”だったから頭から抜けてた! ゴメン!


「なぁテーラ。母ちゃん達の分もこれから作るよな? おかわり分も作らねぇ?」

「え、でも、バターが無いんだけど……」

「んなの、クガニさんに牧場まで連れてってもらえばいいじゃん。フェンもフミジティも一緒に」

「「「いいのー!?」」」


 フシールお兄ちゃんは自分が石窯の火を見たり、芋の下拵えをするから行ってこいよって勧めてくれた。クガニ兄ちゃんも俺らをおんぶしてくれるって! 台車から進化しちまったなぁ! え? 歩く? そうじゃねぇだろ、クガニ兄ちゃん!


「「「兄ちゃん、兄ちゃん! 飛んでー!」」」

「えっ大丈夫? 結構、風が強いよ? しっかり捕まってないと振り落とされちゃうかもしれないし、舌を噛んじゃうかもしれない」

「「「めっちゃ! 歯ぁ食いしばる!」」」


 空を飛ぶなんて、どんな気分なんだ!? せっかくなら試してみてぇじゃん! 兄ちゃんの言いつけ守るからさぁ!

 説明を受けたら、善は急げと兄ちゃんのデケェ背中によじ登る。3人まとめて幅広の紐でくくられたら、準備は完了だ。


「さぁ、行くよー!」

「「「はーい!」」」

「ちゃんと歯を食いしばってね!」


 最後にもう一度言うと、クガニ兄ちゃんは深く、深くしゃがみこんで……ドォーーンッ!! 地面をヒビ割る勢いで蹴って! 飛び上がった!!


 すげぇーーーっ! 重てぇーーっ! この重力のかかり方、なんか、逆バンジーみてぇだー!

 おっ、ふわっとした! ここが最高到達点か! 目ぇ開けたら、村が見渡せるー! スッゲー高さだーー!!


「このまま水平に、牧場まで行くよー!」


 分かったー! 返事の代わりに兄ちゃんの服を強く掴んだら、ドォーーンッ! って音と同時に、またすごい重力がまた体に顔から当たるぅーー! キャーーーッ!! 風すごーーい!!


 俺たち、空飛んでるーーー!!!



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