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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
帰ってきた三つ子
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世界へ見せるレシピに! ハンコを!

 やり取りをしてる間に20分は過ぎていて、一度石窯から鉄板に乗ったガジャ芋を取り出してもらう。

 バターを入れた小鍋2つの内、片方には刻んだニンニク、リクッガを入れて、扉を開けたままの石窯の中で溶かす。あっという間に溶けたそれを、4つあるガジャ芋に2つずつ分けてかけていく。


「「わ~~~! いい匂い~~!」」

「食欲唆るねぇ、リクッガの香りは」


 鉄板にかかったリクッガバターがジュワーッ! て音を立てて香りも立った。味見だから一個全部食べられないの、惜しいことしたって感じ。俺とフェンとクガニ兄ちゃんはヨダレを垂らすけれど、フミジティだけは、うへぇ、って顔してた。臭うのが嫌って言ってたもんな。


 さて、ホクホクだけでいいなら、これで完成でいい。けど、生焼けがちょっと心配なのと、サクッと感が欲しいから、もう10分、様子見しながら焼きたい。鉄板を石窯に戻してくれてありがと、フシールお兄ちゃん。


「鉄板を扱ってくれて、ありがとう、フシール君」

「べっつにー。頑張ってる妹たちの手伝いくらい、兄貴として当然だし」

「ふふっ、そうだよね。俺もそうだったよ」

「……そっすか」


 クガニ兄ちゃんの微笑みに照れたのか反発してんのか、フシール兄ちゃんは短く返すとプイッとそっぽを向いた。

 ……そういや、俺、ティーチのまんま生きてたら、今頃フシールお兄ちゃんと同じくらいなんだよね。いいなぁ、お兄ちゃん。立ったままの目線の高さが近いじゃん。

 ちなみに、俺の今のお父さんお母さんは、フェンとフミジティの家族にクガニ兄ちゃんが来たことを報告しに行った。あの空を蹴る音で伝わってそうなもんだけど。


 あ、そうだ。兄ちゃんにアレ、持ってきてもらお。


「なぁクガニ兄ちゃん。三つ子だった頃に描いたレシピ、まだ手元にあったら持ってきてくれね?」

「え、どうして? 勿論良いけれど」


 いいんだ。水飴もとい、水甘のことは領主様に伝えてるから、流れで全部渡してるもんだと思ってた。取っといてくれたんだ。嬉しっ。


「あのな、俺ら前世と前々世をうっすら思い出したあとな。神殿で料理を捧げたり、皆が再現できるように、レシピも書いて公開してんのー」

「知恵の神様の願いは、僕らの再発明した料理のレシピを世界に広めることだから、皆に真似してもらったり、進化させたりするのがいいんだけどねー」

「万が一、悪巧みで『あの三つ子が書いたんだ』っていう、私たちの名前が使われた詐欺が横行しても困るのー」

「「「だから、レシピの原本には、自分たちの魔力を入れたインクで、ハンコしてんのー」」」


 料理のレシピ自体には確か、著作権は発生しない。この世界や国ではどうかまだ知らないけど、知恵の神様が『広めろ』って言ってるんだから、再発明したものを俺らが秘匿するのは絶対に違う。見るのも作るのもどうぞご勝手に。

 でも、“俺ら三つ子を騙った詐欺が横行する”のは話が違う。『これがあの知恵の神の愛し子たちが作ったレシピだ』って話に騙される、そんな被害者が生まれるようなことはあってはならないんだ。テメーが開発したもん、自信持って公表しろや!


 ゆえに開発したのが、魔力入りインク。愛し子の魔力は虹色に儚く光るのを発見したから、今のところはレシピの原本に押すハンコの、インクに、3人の魔力を流して押してるんだ。用済みインクは布に吸わせたあとでフェンが燃やしてる。

 愛し子パワーがすごいのか、今のところインクの儚い輝きは変わらない。流石神様って感じだよな。


「はぁ……詐欺。考えてるんだねぇ」

「“愛し子が作った”って言わなきゃいいだけなんだけどな」

「参考にして、新しくレシピを開発するのは、むしろ推奨してる」

「でも、作ってないものに私たちの名前を使われるのは、気持ち悪い!」

「「「だから牽制してるのー!」」」

「なるほどねぇ」


 ……あれ、兄ちゃんに魔力の話、して良かったのか? いや、ま、もう気にしてないことに賭けるしかねぇか。うっかりした。

 腕を組んで情報を受け入れた兄ちゃんは、ちょっと晴れやかな顔を俺たちに見せて、口を開いた。


「そういうことなら、堂々と『三つ子が作ったんだ』って証明を貰いたいね。君らの魔力が込められたインクが欲しいや。あ、ついでに領主様のとこにあるレシピの紙にも、署名を貰ってもいいかな」

「いいよー。あっちの領主様も安心できると思うしー」

「でも、僕らも水甘とかのレシピ、公開するからねー」

「私たちも甘いの、たくさん食べたいからー」


 秘匿なんか、させねーから! 砂糖が高いのがわる、あれ? これずっと言ってんな。


「分かった、そうお伝えするよ。……話が一区切りついたところで、さ。そろそろ、焼けたんじゃない?」

「「「たしかにー!」」」


 10分って当たりを付けたけど、石窯の温度は一定じゃない。フェンが火力調節出来たとしてもね。だから、もう素材たちが焼ける香ばしい香りが、すごい香ってる!


「皿とか取ってこよーぜ!」

「いつもみたいにバケツリレーで!」

「洗うの大変だし、私は葉っぱ摘んでくるわね!」

「「気を付けてなー!」」


 準備に急ぐ俺たちを、木製の敷物を持ったフシールお兄ちゃんが「走って転けんなよー!」って忠告してくれた。クガニ兄ちゃんはのんびりしてた。


 さぁ! 焼けた芋を試食するぞ! お母さんたち? 改良したのを食べさせればいいでしょ!



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