いよいよ、ろ過器を作るわよ!
俺らの家庭の事情に頭突っ込んで、微妙に怪我したランタン屋のおっちゃん。兄ちゃんは聞こえてたのか、気まずい空気を読んだのか。ランタン屋のおっちゃんに軽く挨拶しただけで、直ぐに俺ら三つ子を回収して荷台に乗せた。同乗するのはランタンオイルの保管箱に、塩の入った麻袋1つと、紐で括られた布の山。糸の入った袋には一緒に布の端材が詰め込まれていた。これでオシャレにポケット付けたり、同じサイズの服でも端材の色で自分の服が分かりやすく出来るな。
てか、布の端材!? 多めに必要なガーゼ替わりにできる!? やったぁ!!!
三つ子で顔を見合わせて、両手でグッと拳を握った。早く帰りたいって気持ちをちょっと抑えて、ランタン屋のおっちゃんにバイバイした。ニッコニコな俺たちとゴキゲンな兄ちゃんに対して、おっちゃんは愛想笑いの下の困った感情を隠しきれないでいた。ま、それを気にしない方が、お気遣いってもんよな。
早く帰ろう! と言おうとしたら、その前に兄ちゃんがとっても魅力的な提案をしてくれた!
「ティーチ、ターチ、ミーチ! お遣い以外にもお買い物しよっか! 一人一個、好きなの買っていいよ!」
「「「いいの!?」」」
「山に入った時も、ランタン屋でも、とてもいい子だったからね!」
「「「ありがとー!」」」
これは、またとないチャンス! 浄水装置で自分たちの為だけの容器をゲットできるぞ! だけど買えるのは一人一個まで。なるべく、手に入りにくいものを選んでおねだりしねぇと……。
「「「うーん……」」」
「えっ、んっ? あれ? な、なんでそんな真剣な顔してんの? ……あ、あんまり高いのは、止めてよ?」
必要なのは、ろ過器になるボトル・煮沸する鍋・消毒した水を入れる水瓶……。他に受け皿も木炭も欲しいけど、作れないのは先の3つか。俺、ボトルおねだりするわ。
「……何か、作りたいものがあるの? 兄ちゃんも手伝うし、道具揃えるよ?」
「「「ホント!?」」」
「勿論! 楽しそうな事には、乗らないとな!」
「「「やったー!」」」
兄ちゃんと一緒に、工作できるー! 早速、浄水ろ過器の計画と材料を教えなきゃ! あのな、あのな!
クガニ兄ちゃんっていう強力な助っ人が参入してくれたおかげで、材料も全部手に入ったし、計画実行が早まった。コソコソしなくても、兄ちゃんが計画者だってカモフラージュ出来るからな!
……そうなんだ。俺たちは、失念してた。『浄水ろ過器を、誰が考えたんだ』って質問に対する、答えを。い、いや、無かったワケじゃないんだぜ!?
「どうして木炭が必要なの?」
「え!? えっ、えっと、ほら、灰の水で汚れ落ちるじゃん!」
「灰じゃ細かいから、木炭ならどうかなーって!」
「木炭って、穴が空いてるからさー!」
「なるほど! うちのチビたちは発想がすごいなぁ!」
「「「へ、へへへー!」」」
身内で俺たちに甘々な兄ちゃんくらいなら、こうやって誤魔化せる。けど、他の村人だとこうはいかない。『井戸水があるのに泥水を浄水したがるなんて、おかしい』ってな。詰められたら、泣くしかない。
でもその点、兄ちゃんが矢面に立ってくれると、躱しやすい。山の中の水を使う兄ちゃんなら、泥水をどうにかしたいと思うのは自然な事だから。やっぱり兄ちゃん最高! ありがとう! 俺たちの兄ちゃんでいてくれて!
「山での水生成に困ってた俺の為に、ろ過装置を考えてくれるなんて! 兄貴冥利に尽きるよ! ありがとうね!」
「「「どういたしましてー!」」」
そんな深くまで考えてない俺たちに代わって、明確な理由付けまで! いやぁ、なんというか、操りやすいなぁ。いつまでもそういてくれるように、可愛い弟・妹でいなきゃな!
村の中央からの帰り道で兄ちゃんにろ過器の計画を伝えた俺らは、帰ってきて直ぐ、揃ってる道具を確認した。
《手作り浄水ろ過器》
準備するもの
・砂 ・砂利 ・砕いた木炭 ・ガーゼ
・ボトル ・受け皿
・焚き火 ・鍋 ・水瓶
集まっているもの
・砂 ・砂利 ・砕いた木炭 ・〇布の端材
・〇中古品のジョッキ
・焚き火 ・〇鍋 ・〇水瓶
手順
①砂などは別々に、汚れが出なくなるまでキレイに洗う。
②ろ過器になるジョッキの底に5箇所、小さな穴を開ける。
③ジョッキに底から順に洗った砂などを詰めていく。
④汚水を上からゆっくり注いでいく。
⑤濾過された水がある程度貯まったら、煮沸消毒を約10分行う。
⑥消毒を済ませたら冷まして、水瓶に貯めていく。
〇を前に書いてるのは、兄ちゃんの協力で手に入った道具。多めに買ったジョッキは、砂とかを入れるボトルと、受け皿の両方をやってもらう。大体の道具が中古道具屋で手に入っちゃった。やっぱ金は偉大だぜ。
そんじゃあ早速、手順通りにやってくぜ!