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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
最終目標! 白いパンを焼く!
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焼けた! 焼けた! 白いパン!

 石窯の様子を見ながら、20分。お昼ご飯は贅沢にボア肉ステーキ! それが鉄板の上でジュージューパチパチ焼けるのを横目で見ながら、パンの焼き上がりを見極めた。ターチが。てか、小麦の焼けるいい匂いメッチャする! 美味しそう!


「兄ちゃん、そろそろ取ってー!」

「分かった。鉄板ものすごく熱いから、離れててね」


 いつもの注意をしっかり聞いて離れたら、兄ちゃんが鉄板を棒で引っ掛けて取り出してくれた。少し離れたところから首を伸ばして見たら、鉄板の上でパンがちゃんと膨らんで、ちょっと薄いけど良い焼き色が付いてる! しっかり焼けてる! 思わず両腕を天に突き上げた!


「「「やったー! おいしそー!」」」

「ほんと! 優しい焼き色だね!」

「あら、見るからに柔らかそうね」

「……食べてみないと、分からないだろう?」

「「「そうだよね! 早く食べよー!」」」


 父ちゃんの誘いに上手く乗って、ちょっと早めのお昼ご飯になったぜ! ボア骨出汁の野菜スープに、ちゃんとしたボア肉のステーキ。付け合せの焼き野菜に、それから、俺らの焼いた、白いパン!

 外でのダイニングテーブルの準備をしてる間に、パンかごに移された白いパンは粗熱が取れた。気もそぞろにいただきますをして、三つ子揃ってパンかごに手を伸ばした。


「「「わぁ……!」」」


 手に取ったのは、丸い方のパン。皮が混じって茶色いけど、それでも焼き色が薄いのはショ糖じゃなくて麦芽糖が多い水飴、水甘を使ったからだろう。それでも触ってみるとすっごくふかふかで、軽かった! 少し冷めて表面はシワが寄っていたけれど、そんなのはちぎっちまえば気にならない! ──おおっ!


「「「中、しろーい!」」」


 いつもの硬いパンなら絶対に出来ないのに、このパンなら5歳児の力でも簡単に半分にちぎれた! そんでもって、中はふんわりして、白かった! 白かった!!

 厳密に言えば、卵を使ってるからちょっとだけ黄色みかがっているし、小麦の皮が入ってちょっとだけ茶色い。けど、そんなのは小さなこと! 俺らが目標にしてた、“白く”て、“柔らかく”て、“ふんわり”したパンが、出来たんだ!


 感動してたら、ボア出汁野菜スープや焼き野菜を取り分けてる大人組が、微笑ましそうにクスクス笑ってた。焼けたステーキを切り分けてた父ちゃんが、俺らの前にそれを盛った皿を置いて、頭を順番に撫でてくれた。


「喜ぶのは、食べてからでも遅くないだろう?」

「「「はっ! そうだね! いただきまーす!」」」


 大きく口を開けて、ちぎって現れた白い部分に、かぶりつく! あぁ! 噛んだ瞬間からもう違う! ふんわり優しい噛み心地! 香りがふわっと甘い! 優しい甘さがある! そして何より! 噛み切れる!!


「「「わー!! おいしー!!!」」」


 これが、俺らが作った、白いパン! 感動する美味しさだー!

 三つ子と兄ちゃんで作ったパンが美味しくて、夢中で1個、食べきっちまった。だってスゲーんだぜ。レシピもなく、初めて作ったのに、中もふんわり、外もさっくりしてる! 完璧すぎる焼き上がりなんだぜ! ビギナーズラック嬉しい!!


「良かったね、ティーチ、ターチ、ミーチ」

「「「うん! 兄ちゃん、一緒に作ってくれて、ありがとね!」

「ふふっ、どういたしまして」


 俺らの心の底からの感謝の言葉に、兄ちゃんも慈愛に満ちた笑顔で返してくれた。えへへっ! あったけえおかげで、兄ちゃんが盛ってくれた焼き野菜もメッチャ美味しく食べられそう! 頑張ろ!


「ちょっとー、お母さんだって最初にパンの作り方を教えたり、お父さんも怪我が無いようにしっかり見守っててくれたのに、お礼は無いのー?」

「「「母ちゃんも、父ちゃんも、いつもありがとねー!」」」

「はーい、どういたしまして!」

「……うん」

「「「ねーねー! みんなも、早く食べてみてー!」」」


 お礼の催促を受けたから言ったけど、それよりも、早く俺らの傑作を食べて欲しい! ほらほら、席に座ってよ! 食べてみてよ! 俺らは反応をしっかり見させてもらうぞ!


「わぁ……、表面もこんがり焼けてるのに、皮が薄くて柔らかいわね。ナイフいらずだわ」

「……甘い。水甘を入れたんだったね。しっかり感じるよ」

「うはぁ……! こんなふかふかな食べ物、空気みたいに食べられちゃうって! 美味しい!」

「「「へへへ~!」」」


 褒め言葉はいくら浴びても、嬉しいもんだぜ! 俺らもコロコロカットされたステーキ挟んでたーべよ!

 もう一つの丸いパンをバンズみたいに裂いて、ステーキと焼き玉ギネを挟んでパクリッ! うーん! 焼いて甘くなった玉ギネの旨みとしっかり塩味の利いたボア肉の食べごたえが増して、これはこれで最高に美味しい!

 満足感に満たされてたら、俺の正面に座る兄ちゃんが長細いパンを手にして、切ない笑顔を浮かべて眺めだした。心なしか、そのパンが他のよりちょっとだけ小さい気がする。


「兄ちゃんが潰しちゃった生地も、ちゃんと膨らんでくれてて良かったよ……」

「「「ぶっ」」」

「あっ、ごめん」


 不意打ちで笑わせるの、止めてくれよ兄ちゃん! そのせいでせっかくのパンを吹き出すとこだった! あと、ホントに膨らんでて良かったな! ブギュンッとかバギュンッとか、聞いたこと無い音してたのにな!


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