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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
最終目標! 白いパンを焼く!
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やわっこい生地、整えるぜ!

 父ちゃんから紙を貰って柔らかパンのレシピを絵で表現してたら、あっという間に一次発酵の時間が過ぎた。よし! ここからは成形だ! 俺はミーチと一緒に丸い形にするぞ!


 ボウルに被せていた濡れ布巾を外し、生地が2倍以上に膨れているのを確認する。発酵具合を確かめるのはターチ。指に粉を纏わせて、丸く膨らんだ生地の中央に、ぷすっと。あ、端っこからちょっとガスがプクって出てきた。ふかふかそー。


「? なんで急に、指を……? 兄ちゃん、パン作りでそれ初めて見た」

「え? あ、あの、ふかふかそうだったからさ! ふ、ふたりもやるー?」

「俺! 叩きたい!」

「私もー!」

「じゃあ、粉振ってから軽く潰してー!」


 やっべーやっべー。ターチがうっかりフィンガーテストしちまって、兄ちゃんに首傾げられた。まぁ、仲間になった兄ちゃん相手なら、あんまり気にしなくてもいいんだろうけど。


 指を引き抜いて、穴が塞がらないのを確認したら、生地全体に薄く粉を振る。指の背で軽く叩いてガス抜きして、ボウルから生地を打ち粉した台に取り出した。すっごい柔らかかった! あ! 兄ちゃんの方もやりた、あ、もう済ませてる……。同時進行してたんだ……。


「ターチ、形はバゲット型と、丸型なんだよね?」

「そうだよー。だから、兄ちゃんと僕でバゲット、ティーチとミーチで丸いのを作ろー!」

「「まかせろー!」」

「ふふっ、期待してるよ」


 こないだのリーンな生地より気持ちふかふかな生地は、兄ちゃんが鉄製のヘラみたいなのでカットして、バゲットの方が6個、丸の方が12個に分割された。切ったら生地の中に溜まってたガスがぷくっと膨れて、ちゃんと発酵してるんだって見て分かって、気分が上がった。

 こないだやったばかりだから、表面を張るように丸める方法は覚えてるぞ。綺麗な面を広げて、切り口を中に閉じ込めて、猫の手にした手のひらの中で生地を台の上で転がして……。5歳児の小さな手だとちょっと大変だったけど、最後に下の面を摘んで、丸く作れた!


「かわいくねー?」

「ティーチいい感じだねー! 私のも見てー」

「わ、全然シワないじゃーん!」

「ふたりともー、そっちあと10個あるんだから、急いでよねー」

「「うっ、はーい」」


 小さくて扱いやすい代わりに、数が多いぜ。早くコツを掴んで、プロっぽくカッコつけたいもんだ。ちなみに兄ちゃんは、俺たちを見てたせいで1つ目の生地をブギュンッ!って潰してて、自分でびっくりしてた。相変わらずのパワー系チートだぜ。二次発酵前で良かったな。


 分割した生地を全部丸められたら、濡れ布巾を被せて、10分寝かし。俺らも休んで、パンマットに打ち粉を振って生地を取り出した。休ませる前より柔らかくなってる。これを一度潰して、丸め直して、半分はバンズみたいになるよう潰してっと。


「……すごいね、君たちのパンは」

「えっ!? なになにー!?」

「まだ生地の段階だけどー!?」

「褒めるには早いんじゃなーい!?」


 集中して生地を丸め直してたら、急に兄ちゃんに褒められた。嬉しかったから三つ子で連携して、セリフとは裏腹に『もっと褒めろ』と生意気スマイルで要求した。兄ちゃんは噛み殺しきれてない笑顔で堪えてから、「そんなことないよ」って言ってくれた!


「あまり触ってきてないけど、そんな兄ちゃんでも、いつものパンの生地と触り心地が違うのは分かるよ。ふんわりして、柔らかくて。そりゃ、卵や水甘、ボア脂が入ってるんだ。違うのは当然だろうね。……正直、他の材料がこんなに入って、まとまるのか、心配だったよ」


 あー、確かに。俺らはターチの言う通りにすれば美味いパンが食えるって確信してたけど、兄ちゃんは違うもんな。兄ちゃんが目をやった先を見たら、全粒粉の袋がこっそり置かれてた。生地が緩いままだったら、使ってたんだろうな。

 パンを整える手が自然と止まって、ターチが兄ちゃんを伺うように見上げた。


「心配だったのに、僕らのこと、信頼してくれたの?」

「当たり前じゃん! だってこの数ヶ月、君たちの発明のおかげで、どれだけ生活が華やかになったことか! だから家に帰るのも山に登るのも、すっごいやる気いっぱいになってるんだからね!」


 ターチの問いに笑顔で返す兄ちゃんの言葉や態度は、少し大げさだけど、嘘くささは無かった。なーんだ。俺らがおねだりしたとおり、褒めてくれただけじゃーん! 嬉しくなってはにかんでたら、ちょっとだけ神妙な顔になった兄ちゃんが、俺らを見渡して、口を開いた。


「ティーチ、ターチ、ミーチ。生まれてきてくれて、ありがとう。ちょっとだけ早いけど、お祝いの言葉を送らせて」

「「「!」」」


 あ、そっかぁ。俺らって、冬に生まれたんだっけ。年始に皆まとめて年取る制度の地域だけど、それとは別に、だよな。


「「「へへへっ! ありがと!」」」


 ぽっかぽかになった気持ちでお礼を言ったら、兄ちゃんもふんにゃり笑ってくれて、またパン生地潰してた。バギュンッ!!って。こっわ。俺らのこと撫でるとき、潰さないでくれよ? キュートアグレッションで死にたくない。


 生地の形を整えて、パンマットの上で二次発酵を取る。レシピの紙に不備がないか確認したり、石窯の火を起こしてたら、あっという間に一時間くらい経った。朝早くから動いてたから、まだ昼前だ。膨らんだパン生地は表面を押して、買ってくるけど指の跡が残るくらい。よし! 発酵良好だ! ってターチが言ってた!


「「「焼くぞー!」」」

「いよいよだねー!」


 ここまで来たら、あとは20分かからない! 余熱しといた鉄板にボア脂を溶かし塗って、火傷しないように生地を乗せて、母ちゃんに霧を出してもらって生地の表面を湿らせた。さぁ、総勢18個のパンたち! 奥で炭と薪が静かに燃えてる石窯の中に、いってらっしゃーい!


「「「みんな美味しく、焼けてきてねー!」」」


 三つ子揃って手を振って見送ったら、後ろで大人組が微笑ましそうに笑った。ふはははっ! 可愛いだろう! 5歳児の無邪気さ、堪らんだろう!


 作品投稿から、本日で2ヶ月経ちました! こちらでは対処しようのない奇妙な現象に襲われつつも、少しずつご評価をいただけて、本日までやってこれました。皆様、お読みいただいて、本当にありがとうございます!

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