いよいよ、白いパンを焼くぞ!
兄ちゃんがボア2体を持ち帰ってきた、翌日! 兄ちゃんも入れて俺らはいよいよ、白いパンを焼く! 焼くったら焼くんだ!
外で干し肉やジャーキー作りで忙しくしてる父ちゃん母ちゃんを横目に、兄ちゃんが倉庫の中で全粒粉を石臼で挽いてくれている。細かい目のザルが無いから日本で見るような真っ白い小麦粉にはならないけれど、2度目の製粉は口当たりをやさしくしてくれるだろう。んで、パワー自慢の兄ちゃんだろうと、これはゆっくりやらないといけないから時間がかかる。熱を持ったら風味が落ちるからだ。その間に、必要な材料をかき集めておくぜ!
「改めて確認するぞ。材料は、小麦粉・水・塩・酵母。卵に麦芽粉末、水甘とボア脂、だな。牛乳はいいの?」
「今日は牛乳は使わなくてもいいかな。生地が引き締まるみたいだけど、やっぱり水の方が思い入れが強いからさ!」
「なんたって、最初に手に入れた素材だものね!」
材料を確かめたら、手分けして台所に材料をかき集めた。粉がどのくらい少なくなるか分からないから、ターチの目分量で集めたけど、水飴とラード、結構な量使うんだな。種芋くらいのサイズ感だぞ。
「ねぇターチ。今回の白いパンで何を食べるんだっけ?」
「クネド……茹でパンの時と一緒で、ステーキだって母ちゃん言ってたよ」
「ステーキバーガー? 切り込みいっぱい入れてもらわねぇとな」
「バーガーとは言ってないよ……」
そっか、言ってねぇか。そもそもそこまで口おっきく開けらんねぇや。一人で納得してたら、ターチが手で形を作った。
「想定してる形はね、細長いのと、丸いのと、潰した丸。コッペパンと丸パンと、バンズだね」
「バゲットみたいにスライスして食べるのと、そのまま齧るのと、挟んで食べるって感じ?」
「それ、小麦の量足りんのか? バゲットの形は1つでいいとして、丸パンとバンズは6つずつだろ?」
「そもそも、そんなに食べられなさそうよね。まぁ、食べきれなかったら明日のクネドリーキにしちゃえばいいけれど」
「うーん、行き当たりばったりだね」
とにかく、やんなきゃ始まらない。兄ちゃんが挽いた小麦粉を、ちまちまふるいにかけてくぜ! うおおっ! 2度目の石臼挽きで、ちゃんと白くなってるー! 茶色の皮が混じって真っ白じゃないところは、ご愛嬌ってことで!
「う~、疲れる~」
「ちょっとティーチ! ザルが傾いて溢れてるー!」
「ターチも! 動いたから振るった粉がボウルから外れてるー!」
「皆、休み休みでいいからね。兄ちゃんもゆっくりやってるから」
「「「はーい」」」
自分の溜め息で粉が舞わないように、口を閉じて肩を下ろした。粉を乗せたザルの縁を叩く単調作業、別に苦じゃないけど、ずっと動かさないとだし重たくて疲れるわ、コレ。
苦労して手に入れた小麦粉の量は、木のお椀のすり切り2つ分。いつも母ちゃんがパンを作る分は取れた。つまり、普段より全粒粉を多めに分けてもらえてたみたい。ありがと母ちゃん。絶対美味しく焼くからな!
「「「よし! こねるぞー!」」」
「おー!」
・小麦粉 木のお椀すり切り2杯
・水 カップ2杯
・酵母 スプーン2杯
・塩 2つまみ
・麦芽粉末 少々
・卵 2個
・水甘 カップ半分
・ボア脂 カップ半分
粉が出来たから、さっそく生地を仕込んでくぞ! 水甘とボア脂の量が多くて、若干震えてるぜ!
兄ちゃんも半分捏ねてみたいって言ったから、俺らはこないだ母ちゃんと一緒に作った時と同じ量で生地を捏ねることになった。まずは小麦粉と人肌に温めた水だけをさっくり混ぜてっと。時間を置いたら、残りの材料を混ぜて、捏ねてってー。やり方が硬いパンを作った時と同じだから不安になったけど、相談の結果、次の機会に考えることにした。まずはやってみねぇとな!
「あ、兄ちゃん、ボア脂は今入れないでー」
「え? どうして?」
「捏ねにくくなったら嫌じゃん。他が混ざってから、後から捏ねてみよーよ」
「……ターチの言うとおりにしてみるよ」
へー、まとめて入れねぇんだ。でも兄ちゃんのパワーなら、滑りとか関係なく捏ねられそう。なんなら時間置かずに叩き捏ねするタイプの捏ね方でも、問題なく出来そう。微笑む兄ちゃんはターチの言われたとおりにするみたいだけど。
小麦粉と水で出来た生地に、塩・麦芽粉末・溶き卵・水甘を加えて軽く混ぜてから、打ち粉を振った台の上に出して、力を込めて伸ばし捏ねる。5歳児の全力と、パワー系チートの兄ちゃんでは、力の込め方が全く違ってて面白かったわ。なんで卵黄を掴むような優しい手つきで、生地をメッチャ伸ばせるんだよ。
ある程度捏ねた生地にボア脂も練りこみながら、三つ子で代わりばんこで捏ねて、一旦ネチネチになった生地をもう一度ムチムチに出来たら、綺麗に丸めた。表面がつるんとしてて、指で押しても押し返してくる弾力がある! 一部の生地をナイフで切ったら薄く広げて、グルテン膜チェック! うん! 生地越しに薄く指が透けて見える! 出来た!
「ここまで出来たら、丸め直してボウルに戻して、濡れ布巾を被せて暖かいところで2倍の大きさになるまで置いとく! 時間は一刻砂時計の砂が落ちきるまで!」
「「ながーい!」」
「……ふぅん?」
「ターチ! これもレシピ、紙に書いてこよーぜ!」
「書けるの材料と分量だけかもだけど!」
「そうだね! 父ちゃんに紙貰っていいか聞いてこよー!」
「あっ、転けて怪我しないようにねー!」
「「「だいじょうぶー! おわっ!」」」
外にいる父ちゃんのトコに行こうと走ったら、躓いてコケかけた。後ろで兄ちゃんが「だから言ったのに」って呆れた声で言った。
普段更新しても三桁pvなのに、一昨日の2/11だけ、18時と21時22時に異常に伸びて五桁突破したの、恐ろしすぎて震えました……。そのくせユニーク数はいつも通りなんですもん!意味分かりません!