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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
最終目標! 白いパンを焼く!
37/70

硬い方のパン、焼けた!

 一時間後、水甘のレシピ解説イラストを大体終わらせた俺たちは台所に戻って、ボウルに入った生地の発酵具合を確認しに行った。おお、一次発酵前より大きく膨らんで、でも水分量が多かったのか、結構しっとり、ユルい感じの生地だ。薄い膜を張った気泡がちっちゃくあるな。


「いい感じね。ちゃんと発酵出来てるかの見極め方は、発酵前より一回り大きくなったかどうか、よ」

「「「へー!」」」

「それほど膨らんでないならまだ置いとかないとだし、生地の表面に気泡がたくさんあったりユルユルになってたら、発酵のさせすぎの合図。まぁ、後戻り出来ないからお母さんは焼いちゃうけどね」

「「「そーなんだー」」」


 捨てるのなんて以ての外だろうしな。そっか、ずっと置いといたらダメなのか。ひと晩置くタイプもやってるから大丈夫なもんだと思ってた。


 水分多めで緩い生地に粉をまぶしたら、ボウルから取り出しやすいように生地の端から下に向かって指を差し込んで、台の上にひっくり返した。形を程々に整えたら半分にカットして、打ち粉をしながら生地を丸く整えた。そしたら打ち粉をして、また濡れ布巾を被せた。


「生地は捏ねれば捏ねるほど緊張しちゃうから、ここで一旦休ませるのよ。生地が緩んできたら、バゲットの形にするわ。あ、そうだ。もうひとつの生地は3つに分けて、貴方たちにも整えさせましょうか!」

「「「やったー!」」」


 パン作りで一番楽しいトコじゃん! どんな形にしよーかなー!

 ウサギとか小麦とか藁ゴーレムちゃんとか、色々形を言い合ってたら休ませる時間は過ぎたらしい。まずは母ちゃんの手の動きをちゃんと見なきゃな!

 母ちゃんはデカい生地を一旦手のひらで軽く縦長に潰したら、細くなるように3つ折りにした。真ん中にを指で潰して折り目を作ったら、また縦に2つ折りにした。この時、表面が張るように意識してやってた。折ったら閉じ目を手の付け根でちゃんと潰して、閉じ目を下にした。自重で更に潰れてくれるんだろう。


「出来たら、パンマットで形を保たせて2回目の発酵させる。貴方たちのは、自由に形を変えるのよね? それともお母さんと同じ形にする?」

「僕はお母さんと同じー!」

「俺、斧の形ー!」

「私はお花ー!」

「ふふっ、頑張ってね」


 おいおいターチ。基本に忠実すぎるって。もっと遊べよなー!

 まるで粘土細工みたいにパン生地を弄りまくって、伸ばした先から生地が縮んだりして大変な思いをしつつ、なんとか形を作った。考えてたより生地の量が少なかったわ。ターチは上手くバゲットっぽく出来てたし、ミーチは平たい丸からナイフで切り込みを入れて整えてた。その発想があったか。クリームパンみたい。

 形が出来た生地をパンマットっていう、分厚い布に乗せたら、最終発酵だ。今度は半刻とちょっとだって。その間に、石窯に火入れしてこよーっと。余熱だ余熱。


 俺が石窯の火入れと調節、ターチとミーチが薪割りをする。あっという間に時間は過ぎて、ターチだけが母ちゃんに呼び出された。なんだろ。ミーチは斧を片付けに行っちゃった。ちょっと寂しい。ミーチぃ、戻ってきたら薪入れるのやってくれー。

 畑仕事から戻ってきた父ちゃんに言われて、鉄板を石窯の中であっためてたら、母ちゃんとターチが戻ってきた。まな板に敷いたパンマットには、俺らが成形したパンたちが、前より膨らんでた!


「すっげー!」

「ちゃんと斧とお花の形のままだー!」

「すごいよねー! あとはもう、これをさ、鉄板に乗っけて、焼くだけ!」

「「やったー!」」


 時間はかかったけど、複雑な工程は無くて、楽だったー!

 余熱した鉄板を取り出して、ボア脂を溶かしながら伸ばして、それからパン生地を乗せた。やけどに気をつけて、父ちゃん! 無事に乗せられたら、母ちゃんとターチのバゲットにナイフで三本、切り込みが入れられた。そして最後に母ちゃんが霧雨を手から降らせて、すぐさま石窯に鉄板を戻した。様子を見ながら、たまに向きを変えながら焼くんだって。てか、母ちゃんの魔法便利じゃね?


 焼き上がるまでにスープの味見をたくさん(!)手伝ったり、家の中のテーブルとカトラリーの準備をして、インクが付いた手を改めて洗ったりした。ゆっくり準備を進めてたら、石窯の方からパンの焼けるいい香りがしてきて、俺らの腹も鳴っちまった!


「「「楽しみだねー!」」」

「ふふっ、自分たちで型どったパンなら、固くても食べられるかしらね」

「「「あっ。……そうだった。硬いんだった」」」

「やっぱり忘れてたのねー」

「……スライスすることになるかもね」


 父ちゃん、かもねじゃなくて、絶対そうなるわ。んもー!


 半刻砂時計の中の砂が半分落ちたら、父ちゃんが棒を鉄板に引っ掛けて石窯から引っ張り出した。わぁ! 小麦のいい香り! おお! いい焼き色! やった! 形そのままだ!

 その前に火の後始末。もう今日は石窯使わないから、まだ燃えてる薪を火かき棒で掻き出して、水の煮沸消毒と箱風呂用の焚き火に使いまわそうと別の鉄板で持ってった。藁ゴーレムちゃん、火を見ててくれな!

 さぁ、パンが焼けた! 日も暮れてきた! 夕食の時間だ! お手々を合わせて!


「「「いただきまーす!」」」

「「いただきます」」


 ちゃんと挨拶したから、さっそくカゴからパンをゲットだ! 俺、斧の形ー!


「「「うわっ! かったい!」」」

「ふふふっ、さ、切るわよ」

「「「待って! まずはそのまま食べる! はむっ、うぎぎ~…………ぃいんっ!」」」

「……頭、吹っ飛んじゃうぞ」

「もう、無理しないの! スライスするから貸しなさい」

「はーい」

「「あー! せっかく斧(お花)にしたのにー!」」


 バゲットの形のターチはいいとして、俺とミーチはパンを奪われて悲鳴を上げちった。これはもう、俺ら自身が柔らかい白いパンを焼くしかない! 更にやる気に満ち溢れるぜ!


5/18 リーンなパン生地の発酵見極め方を訂正しました。

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