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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
最終目標! 白いパンを焼く!
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材料全部、集まったぞ!

 石鹸は時間をかけて乾燥させる段階に入り、影で進めてた水甘作りも煮詰め終わった。熱いうちに熱消毒を兼ねて壺に移して、冷めたら完成だ。


 白いパン作りに必要な材料は、

・小麦粉

・水

・塩

・イースト

・卵

・砂糖

・油脂

・牛乳


 そんで、今ある材料は、

・全粒粉

・水

・塩

・天然酵母

・卵

・モルトパウダー

・水飴

・ラード

・牛乳


 宣言してなかったけど、ラードも手に入って、代替品も充実の品ぞろえになった! これならもう、パンが焼けるぞ! 三つ子で話し合った結果、焼くのは兄ちゃんが次の山狩りから帰ってきた後にすることにした。その間に母ちゃんからパンの作り方を教わることにした。でも今回は白いパンの試作はしない。クネドリーキの時みたいに、兄ちゃんに泣かれちゃ堪らねぇからな。


「はぁ……。ボア脂の為とはいえ、またすぐに山に戻らないとなんて……」

「元気出してよ兄ちゃん! 帰ってきたら、一緒にパン作ろうぜー!」

「僕たちのために山に行ってくれて、ありがとう! ガジャ芋の脂焼きもたくさん作ろうねー!」

「怪我しないように気をつけてね! 私たちも、いい子で待ってるからー!」

「……うん。兄ちゃん、絶対にボアを2体、持ち帰ってくるからね」

「「「無理しないでねー!」」」


 辛そうな顔してるけど、結局自分の欲望の為に山篭りするからな。冒険者・商人ギルドからの依頼とか絶対ついでになってるでしょ。あれ? 兄ちゃんの食い意地が張ったのって、いつから? 記憶が戻る前の兄ちゃんは別に、食いしん坊だった印象は無いぞ。もしかして、俺らに影響されてたりする?



 兄ちゃんが味方になった日の、翌日。山に向かう兄ちゃんを見送ったら、父ちゃんから紙を2枚と細い木の棒3本、黒いインク壺を渡された。なんで? 俺ら、まだ文字の書き方は習ってないよ?


「「「なんでー?」」」

「……パンの作り方を習うんだろう? 絵で、書き記すのに使いなさい。忘れないように」

「「「いいのー? ありがとー!」」」


 こっちで紙とペンなんて、なにげに初めて使うかもしれない。渡されたのが父ちゃんが使ってた羽ペンじゃなくて鉛筆サイズの木の棒なのは、俺らが折らないようにって事かな。


「それから、時間があったら、水甘の作り方も書いておいたらいい」

「あ、そっか。春になったらお使いの人が来るんだよな!」

「紙に書いといたら、説明する手間がちょっと省けるよね!」

「それに、私たちもうっかり忘れない!」


 そういうことだから、手伝いを終わらせたら、レシピの書き起こしを頑張るぞ! ……紙が本番用の1枚ずつだけなのは、やっぱり貴重だからなんだろうな。繊維丸出しでガッタガタだし。入念に書く順番を決めないと。水飴の方は地面に順序を書き起こしてからだな。


 そんなこんなで、野菜の乾物の網敷きと、昼食を挟んで麦踏みを終わらせたら、パン作りのレクチャーが始まった!


「「「よろしくお願いします!」」」

「はい、よろしくね。今回の分量はいつもの半分だけど、あまり苦労しないと思うわ。小麦粉はこの木のお椀ですり切り1杯。水はこのカップ1杯。酵母はスプーン1杯分で、お塩は指三本で摘んでね」

「「「分かりやすーい!」」」


 材料が4つでシンプルなのもだけど、計り方までシンプルなんて。ここに最近加えだしたモルトパウダーこと麦芽粉末は、計るほどの量は入れないから言及がなかった。


「今回はあまり捏ねない方法で作っていくわよ。まずは小麦粉と人肌に温めておいた水をボウルで合わせて、混ぜていくわ」


 最初に全部の材料を混ぜておくんじゃないんだな。なんて考えてる間に母ちゃんはボウルに粉と水を合わせ、木ベラでさっくり混ぜた。粉が舞わないようにゆっくりと、だけど粉が水を吸うように大きく、しっかりと。すごい、もう生地が出来てる!


「「「おー!」」」

「ある程度まとまったら、生地が乾燥しないように濡れ布巾で蓋をして、半刻砂時計1回分以上、生地を休ませておきます! これで自然に生地がしなやかになるのよ」

「「「じゃー今はー?」」」

「触ってごらんなさい。あ、指に粉を付けてね。あと、今の状態だと、伸びないからね」


 許可を貰ったから、三つ子で試しに生地を摘んで伸ばしてみた。伸びなかった。摘んだところから生地がブチブチちぎれちゃった。なるほど、これはまだグルテンって奴が繋がってないんだ。


「「「ねーコレ大丈夫ー?」」」

「大丈夫、時間を信じなさい! さ、この間にお母さんは夕食の準備をするわよ。今日はチャガボのスープと今作ってるパンだからね」

「「「少なくなーい?」」」

「……最近、贅沢しすぎなのよ、私たち」


 あー、肥満は大敵だよな。一瞬で悟った良い子な俺たちは、それ以上詰めずに納得してみせた。しょうがないね。

 さて、母ちゃんがチャガボの皮と戦う横で、俺らは外で細めの薪で地面に今の工程を絵で書いた。忘れないうちに、紙に書き起こすやつの下書きだ。ついでに、水甘の作り方の下書きもしてたら、あっという間に砂時計の砂が落ちきった。しっかり手を洗ってから生地を伸ばすと、さっきとは打って変わって、みょいーんと伸びた!


「「「すごーい!」」」

「でしょう? さぁ、ここに少しの水に溶かした酵母と、塩、麦芽粉末を入れて、少し混ぜたら台の上に生地を出す。そして軽く捏ねて今入れた材料を馴染ませていくわよ。ここで重要なのは、あまり捏ね過ぎないこと。軽く捏ねた生地なら食感が軽くて表面が硬くバリバリに、美味しいパンになるわ!」

「俺らがやる時はもっと捏ねるかー」

「表面固くなくていいやー」

「ふんわりもちもちがいいもんねー」

「……正反対な好みねぇ」


 遠い目をしてる母ちゃんは、台の上に出した生地をグイーッと右手で潰しながら伸ばしては一纏めにし、向きを直角変えてまたグイーッと伸ばしてった。捏ね方しっかり見とかないとな。

 体感1~2分捏ねたら、塩と酵母とモルトパウダーが均一に混ざったらしい。木ヘラを器用に使って丸めた生地は、表面が滑らかで弾力があった。ぽよぽよしてて、可愛いな。そしたら母ちゃん、おもむろにナイフで一部を切り取ると、ちっちゃい生地を両手で広げて見せた。


「「「わー、うっすーい!」」」

「これが、捏ね上がりのサイン。ブチブチ切れるようならまだ捏ねなきゃだから、覚えておいてね」

「「「はーい!」」」


 膜のチェックか。捏ね過ぎは焼き上がりがきっと固くなるだろうから、いつまで捏ねるのかが分かるのは助かる。

 母ちゃんは生地をまた丸め直してボウルに戻したら、また濡れ布巾を被せた。


「生地が2倍の大きさになるまで、暖かいところに置いて発酵させるのよ。今日はスープを炊いてるこの台所でね。そうね……大体一刻くらいかしら」

「「「ながーい」」」

「そういうものなのよ。発酵はもう一回あるしね」

「「「すごくながーい」」」


 三つ子らしく声を揃えて文句垂れてたら、母ちゃんは「しょうがないでしょー」と言いながら微笑んだ。じゃ、待つしかないから水甘のレシピでも、本番の紙に書き起こしてくか。緊張するから、3人で回しながらってのは決めていた。うっかり日本語を書かないように、互いに見張りながら、な。


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