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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第四目標! 油脂を手に入れろ!
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思い出湧き出る、ハッシュドポテト!

 聞いちゃった、聞いちゃった。


 兄ちゃんが。とんでもない力持ちの、すごい腕力の、山の主の、兄ちゃんが。


 “武神様の加護を受けている”って、聞いちゃった。



 ……あぁ。だから、なんだってんだ。兄ちゃんは、兄ちゃんだ。それ以上でも、以下でもない。俺らにとって、大事な、大事な、兄ちゃんだ! 間違いない!

 ──だから、俺らの茶髪と違う、金髪なの?

 うるさい! それは母ちゃん側の血筋の特徴が出ただけだって話があったろ! あーもー気にすんな! 知らないふりして、コロッケ作りに行くぞ! ほら、ミーチも!


 右隣で顔を青くさせてるミーチを肘で小突いて、一度静かに後ろに下がる。それからジャリジャリと足音をわざと大きく鳴らして、家の中に突撃してやった!


「「母ちゃーん! ガジャ芋の脂焼き一緒に作ろー!」」

「あ、あら、ティーチ、ミーチ! えぇ、いいわよ。ガジャ芋はもう蒸してあるから、棒で潰してちょうだい?」

「「はーい! 父ちゃんも手伝ってー!」」

「勿論」


 気配を悟らせてあげたおかげか、父ちゃんも母ちゃんも大きく顔を引きつらせる事もなく、俺らを歓迎してくれた。今日はガジャ芋の脂焼き(野菜コロッケ)、ガジャ芋茹でパン(クネドリーキ)、ホワイトシチューの3品だ。ここに! ハッシュドポテトを! 追加するぜ!


 作業台と化したリビングのテーブルには、母ちゃんが茹でてくれた皮付きのガジャ芋がある。芽は取ってくれてるし、剥きやすいように横一周に切り込みが入ってる。鍋から取り出して少し置いておいたんだろう、湯気はほんのり上がってる程度だ。ザルに入ったそれを父ちゃんが剥いてくれて、俺はガジャ芋をある程度切る係に、ミーチがすり鉢で潰す係になった。クネドリーキの分は、しっかり練らないとなー。


タン、タン、タン。ねり、ねり、ねり。

タン、タン、タン。ねり、ねり、ねり。

タン、タン、タン……。ねり、ねり、ねり……。


「「つ、疲れた……」」


 心の底から、そう思う。途中からミーチと交換して俺がガジャ芋をすり潰してるけど、食べ盛りを入れた2品5人前の調理は腕がパンパンだぜ。

 一応、クネドリーキ分のガジャ芋は全部すり潰せたと思う。あと一人一つ分のコロッケかな。まだまだあるぞ、ガジャ芋。父ちゃんが皮を剥いてくれたものが。


「……頑張ってるよ、2人とも。父さんが代わろう」


 ガジャ芋の皮を外のコンポスターに入れてきて戻ってきた父ちゃんが、俺に向かって手を差し伸べた。ありがたいけど、ちょっとまってな、父ちゃん。


「もうさー、すり潰さなくても、いいんじゃなーい?」

「切ったほうが早くなーい?」

「……どういう、ことかな?」

「「あのねー?」」


 ミーチと息を合わせて、父ちゃんにハッシュドポテト及び、“粗みじんガジャ芋の脂焼き”を説明した。なめらかにする必要もない、厚くすることはしない。だから簡単だと。チャレンジ精神を推してくれる父ちゃん相手だから、すんなり「やってみなさい」って許してくれた! やっぱ持つべきは背中を押してくれる父ちゃんだな!


 ハッシュドポテトの作り方は簡単だ。材料は蒸したガジャ芋、でんぷん粉、塩の3つだ。

 用意したガジャ芋の半分をマッシュにして、半分を粗みじん切りにする。それを5%程のでんぷん粉と塩少々とを混ぜて、手のひらサイズの薄い楕円形にする。形が崩れないように気をつけながらボア脂で揚げ焼きにして……美味しそうになったら、完成!


 黄金色の! 香ばしいボア脂の匂いの! サクサクな! ハッシュドポテトが!


「「できたー! おいしそー!」」

「焼く時間も短かった……。最近は、冬だから、ボアも脂のりがいい。少し贅沢しても、いいかねも」

「そっか、贅沢かー」

「石鹸の分が少なくなるのはヤダー」

「おお、自分たちで作るようになったから、石鹸の心配をするようになったんだね」

「今日は朝から、脂身を炊いてたものね」

「「がんばったんだよー! ターチもね!」」


 まぁ、水の量が少なくて、石鹸には向かない美味しいラードになっちゃったけどな。でも只では起きなかったぞ!

 他の料理も母ちゃんが手早く作ってくれた! テーブルに並べたら、兄ちゃんとターチを呼んでこよう! ……その前に、一切れ、ミーチと半分こで味見しよう。へへっ!


「「はふはふっ……おいしー!」」


 表面はカリカリで、噛むとサクサクで! 芋はホクホクで、もっちりしてて! しょっぱくて、脂が甘くて! すっごくおいしー!

 あぁ、朝の味! ケチャップ付けたい! コーラ飲みたい! もっと、もっと食べたい! あーもう、勝手に食べんなクソ姉貴! 食べた分だけ課題手伝え! え? 店より旨い? へへっ、そうだろ!


「あー! ずるいー!」

「「やばっ!」」

「美味しそうすぎて、めまいがする……」


 呼んでくる前に、ターチと兄ちゃんに見つかっちまった! ごめんってー! 美味しいかどうか、味見は大事だろー? って、ん? めまいするって、兄ちゃん血糖値下がり過ぎてない? そういえば風呂に入る前には温泉まんじゅうが云々かんぬん。


 ……あっぶねー。なんか、今、意識がここに無かった気がする。

 暴走しなかった口に、手をやった。



 今日もボアを狩ってきた兄ちゃんを労う夕食は、いつも以上に芋ばっかりな気がする。でも美味しいから、いいよな! ガジャ芋脂焼き(コロッケ)なんて、母ちゃんが手を加えて、芋以外の野菜の方がたっぷり入ってたしな!


「「「わー! オオネの葉っぱいっぱい入ってるー! びっくりしたー!」」」

「美味しいでしょ! もう一方は芋だけなんだから、バランス大事なのよ!」

「ティーチ、ターチ、ミーチ! この薄いガジャ芋の脂焼き、だっけ? すっごい美味しいよ!!」

「「「でしょー!」」」


 食べ盛りで空腹の兄ちゃんに、どストライクだったな! 凄い勢いで褒めてくれるわ! やったぜ!


「兄ちゃん、ボア狩りもっと頑張るから、これからもたくさん作ってね!」

「「「うン……それ、いいの?」」」

「どうせ異常発生してるからね。畑を食い荒らされたくないし、これからは家に2匹持ってくるよ!」

「「「ほ、ほどほどにね~」」」

「……三つ子の方が、落ち着いてるなぁ」


 いや、父ちゃんも中々見ないでしょ、ここまで目をキラキラさせてる兄ちゃん。俺たちが再発明した料理で喜んでくれるのは嬉しいけど、山の生態系壊さないか心配だよ。


 ……魔王の影響、か……。


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