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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第四目標! 油脂を手に入れろ!
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石鹸のためのラード作り、開始!

 バターの代わりに。そして、ハッシュドポテトと石鹸の為に“ラード”をお手軽精製することになった俺たち。とりあえず、今の石鹸がどんな風に作られてるかを確認しようと、夕飯の用意をしてる母ちゃんに聞きに行った。


「「「母ちゃん! 石鹸ってどうやって作ってるのー?」」」

「ふふふっ、貴方たちってば、本当に興味がコロコロ移るんだから」

「「「いいじゃん別にー」」」


 ちゃんと井戸水のろ過や煮沸消毒も毎日欠かしてないし、作ってって言われたときはガジャ芋茹でパンだって作ってるぞー。明日には第二弾の水飴作りに取り掛かれそうだしー。次から次に手を出してるのは自覚してるけど、その後も続けてるんだから、いいじゃん。

 湯気が立ち始めた牛乳の鍋を火から下ろして、ヘラでかき混ぜて少し冷ましたらお酢を注いだ。母ちゃん、カッテージチーズ作ってんな。やったー!


「石鹸はね、お肉を焼いた時に出る溶けた脂と、灰と水を混ぜて、固めたものよ。脂と灰水は別々に人肌ほどに湯煎して、かき混ぜた脂の方に少しずつ灰水を注いでいくの。ゆっくりかき混ぜて、とろとろになったら木箱に流し入れて、1日かけて固めるの。その後、型から外して、2週間から4週間、空気に触れさせて乾燥させるのよ」


 ふむふむ。アウトドアで一回俺が作ったのと、あまり変わらない製法だな。質問して、更に引き出すかー。


「脂と混ぜて、ベタベタにならねぇのー?」

「それがね、ならないのよ。びっくりよね」

「乾かさなきゃダメなのー?」

「そうよ。空気に触れさせて初めて石鹸になるんですって。固まる前の石鹸は灰水と変わらなくて、手荒れしちゃうわよ」

「お花の香りとか、付けられないのー?」

「香り? まぁ、その発想は無かったわ! ミーチ、二人と一緒に作ってみせてよ!」


 おおっ! 石鹸作りイベント! いきなり発生したぞ! ナイスだミーチ!

 三つ子で顔を見合わせて、大きく頷きあった。それから天井に向かって、勢いよく拳を突き上げる!


「「「お花の香りの石鹸! つくるー!」」」


 というわけで、まずはラード作りだ! 花の香りがかき消されないくらい、綺麗なラードを作んないとな!

 夕飯は“ガジャ芋と牛乳の石窯焼き”っていう、ホワイトソースを使わないポテトグラタンみたいなやつだった。ガジャ芋のデンプンと作りたてチーズでとろっとしてて、ちょっと入ったジャーキーがスパイシーで、美味しかった!



 翌日。石鹸作りを認めてくれた母ちゃんが、まだ肉から切り出しただけのボア脂を分けてくれた。ついでに言ってくれた母ちゃんの方法では、脂身を刻んで、鍋で炒めて抽出するんだって。だから香ばしいのね。でも、俺らは後で花の香りを付けるから、余計な風味を付けたくない。だからここは、俺が知ってる方法で抽出させてもらおう。


 脂身からラードを抽出する手順はこう!

①可能な限り、脂身を刻む。

②脂身の10%の量の水と一緒に鍋に入れ、中火で煮込む。

③アクが出てきたら丁寧に取り除きつつ、10分煮込む。

④十分分離したと判断したら、熱さに注意しながら網目の細かいザルで濾す。

⑤濾した液を布巾を使って、もう一度濾す。

⑥清潔な壺に注いで、冷めるのを待つ。


 冷めれば、白く固まったラードが完成する。脱臭の方法とか知らないから結局焼肉臭いだろうけど、それをかき消すレベルの花の香りを付ければいいさ。さぁ、役割分担だ!


「俺は火起こしと火の加減の調整。ターチは脂身をひたすら細かく刻んで、ミーチは花摘みを頼んだ!」

「了解!」

「壺の煮沸消毒もティーチ、お願いね!」

「あ、そうだな。やっとくわ!」


 ラード作りが終わったら、すぐさま石鹸作りだ。石鹸に必要なのは灰汁と油脂と水。その中の水を花の香りを移したものにするから、ラード作りと並行して花を煮ることにした。アルコールも高度な蒸留技術もここには無いから、水でちゃんと香るかどうか、不安だけどよ。「バラ風呂とかあるから大丈夫でしょ!」とは、ミーチ談。


 花の水を作るなら、焚き火は外が良い。いつも俺らがろ過した(ろ過器は兄ちゃんのとは別で作った)井戸水を煮沸消毒してる竈で、火打石と打ち金を藁と枝に向かってカンカンカンッ。打ち金から飛んだ火花が藁に飛んだら火吹き棒で息を吹きかけて、火の赤ちゃんを育てていく。じわじわ火が移っていった藁がボッと燃え上がったら、枝で竈の奥に火を押しやって、薪に火が移るように仕向けた。ふう、これで一安心。


 竈の隣で、運んできたテーブルの上で脂身をひたすら刻んでるターチが、包丁を置いて大きく息をついた。


「ティーチってさ、本当に火起こしが得意だよねー。僕そんなに早くできないよ」

「そーだなー。前世ではキャンプしてたのかもな。あんまり思い出せねぇけど」

「キャンプかー。好きなキャンプ飯とかあった?」

「飯……カップラーメンとか?」

「メッチャ文明の利器じゃん。利器? まぁ、楽しそうだけどね」

「星を見上げながら、寒い中で食べてた気がする」

「いいシチュエーションだなぁ。でも、ラード作ったことあるっていうくらいだしさ、こう、ダッチオーブンとかでパン焼いたり、シチューみたいなの作ったりしてなかったの?」

「ダッチオーブンかぁ、野菜とソーセージ適当に入れて、コンソメキューブぶち込んで、ポトフ作ってたな」

「持ってたの? 充実してんねー」

「凝り性だったのかもな。あー、あと中華鍋でチャーハン作って、そうだ、その時にラード作ったんだ」

「チャーハン! あぁ、インディカ米でもいいから、お米も無いかなー!」

「なー」


 九州でも沖縄でも米は作ってたはずだし、イネ科で大麦小麦が育ってる今の環境でも多分、米は育つハズだよな。……先人は、どうやって米を見つけたんだろ。沼にでも生えてた?


「ふぅ……。そろそろ、水沸かすかー」

「そうだね、一人で頑張ってるミーチに『サボるな』って怒られちゃうや」


 一息ついた俺らは、また動き出す。俺はあらかじめ水を入れておいた鍋を竈の上に置いて、ターチは脂身を刻む作業を再開させた。えーっと、俺はこのあと、壺を高温殺菌するんだったな。やけどに気を付けねぇとな。


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