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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第四目標! 油脂を手に入れろ!
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最後の材料は、油だ!

 俺らが再発明した水飴こと、水甘の販売やレシピ保管のことは、父ちゃんに管理を任せた。父ちゃんが領主様と従兄弟だって話は本当みたいで、手紙を出して2週間後に、領主様からお返事が来た。要約すると、


『信じられないから、実物送って。レシピはどこかで漏れると堪ったもんじゃないから、書かなくていい。使えると思ったら春頃、使者を遣わしてレシピを教わりに来るからね』


 とのこと。「もっと盛り上がれー!」って三つ子で叫んじゃったよな。だって、知りたいじゃん。本当にヤベー発見かどうかさ。もっと盛り上がれよなー!

 それから、小麦畑を増やして収穫量を上げた報酬として、畑面積の0.1割分は小麦を自由に使っていいことになってるらしい。お貴族様の親戚っていうので、忖度はたらいてるって。

 なんだよそれ! 俺たちがパン焼いて食べても、罰せられないってことじゃん!


「「「父ちゃん! ちゃんと言ってよ!」」」

「……ごめんね」

「お父さんも言葉が足りなかったけど、お父さんは貴方たちが外でパンのことを自慢しないようにって思って言ったのよ。喧嘩にならないように、これからも言わないでね?」

「「「はーい」」」


 その後も話をよく聞いてみれば、修道院でパンを焼いた後なら、その残り火でパンを焼いても大丈夫だったりとか、高いけど平民でも小麦粉(全粒粉)は買えるし使っていいんだって。春の花祭りや秋の豊穣祭の頃には、納められたものの使わなかった古い小麦が解放されるんだって。丁度俺らが記憶を取り戻す前の時期だな。


「そろそろ新年でしょう? 年明けや祭りでのお祝いには、パンを焼いて楽しむものなのよ。だから私たち以外の村人たちも、パンの美味しさを知ってるわ。頻度が違うだけでね」

「「「そーなんだー」」」

「ええ。だから、嘘を吐いたり隠したりはしなくていいのだけれど、自慢するようなことはしないでね」

「「「はーい」」」


 顰蹙、買っちまうからな。よく今まで悪気無くでも言わなかったな。



 といった話をした日の昼。二度目の大麦麦芽の様子を見た俺らは、麦踏みをしつつ、次の目標を立てる会議をしてた。まずは現状確認からだな!


「白いパンに必要なのは、小麦粉・イースト・塩・水、あと卵と砂糖とバター、だよな」

「そうだよ。そして今集められるのは、全粒粉・天然酵母・塩・水・卵・水飴。足りてないのはバターだね」

「かなり集まってきたわね! 水飴はそろそろ第二弾が作れる頃だし、バターなら、瓶に牛乳を入れて振れば出来るわよね」

「おっ! 確かにそうじゃん! ん? でも、最近見かけてないような……」

「それもそう、なんだけどさ」

「「どしたの、ターチ」」


 残りの材料であるバターについて会話を広げようとしたら、ターチが気になる言い方をした。どうしたん? 何か不満あんのか? 不安あんの? 軽く深呼吸したターチが顔を上げる。


「まず、バターのことなんだけどさ。あれって“よく冷やした”、“生クリーム”か“無調整牛乳”をよく振って作るんだよ」

「「そーなんだー」」

「そう。で、ウチは暖かい地域で、雪なんて1ヶ月も降らないし降っても積もらない。だから氷も無いでしょ?」

「風は吹くから寒いけど、凍死するかって言われたら、違うかもな」

「日本で当てはめると、近いのは九州かもね。……私、向こうに居た時は、ちゃんと雪見てたような気はするんだけど……」

「俺も」

「僕も。まぁ、そういうことだから、バターを作るならまだ寒さが足りない。雪が降る頃にまた、その話を進めよう」

「「りょーかい」」


 冷たくないといけないのかー。生クリームは搾りたての牛乳を温めて放置してれば、オイルドレッシングみたいに分離するらしいから、多分簡単だ。はぁ、俺らの中で誰かが魔法適性が氷とかなら、いろんなことが楽になるだろうなぁ。春が待ち遠しいぜ!

 「次に」と、ターチが話を続けた。


「バターがダメなら、別の油脂が必要だよね。それをさ、ラードにしてみないかって提案なんだよね」

「ラード? 豚の脂かぁ」

「いいじゃない! 中華まんだったっけ、あーゆータイプはバターじゃなくてラードを使ってるって聞いたことあるわ!」


 へー! バターじゃなくてもパンって作れんのか。でもそっか、そもそも油脂が無くてもパンが作れてんだから、そっか。

 活用法を大声で言ったミーチだったが、直ぐに「うーん」と首を傾げてしまった。


「でも、ラードって、どう作ってるの? 白くて無味無臭なイメージはあるけど、ボア脂は普通に獣というか、焼肉臭いわよ?」

「うーん、僕も記憶にあるのは純製ラードで、精製法はよく分からないや」

「……あっ、俺作ったことあったわ! 匂いはどうにもならなかったけど!」

「「匂うんかい」」


 うっせ。作り方知ってる俺に従えお前ら! あれはな、刻んで、10%の水と一緒に煮て、アクを掬いつつ背脂が肉かすになるまで煮詰めるんだよ。肉かすはうどんに乗っけたりして食べるのが美味いぜ。本家はホルモンの肉かすみたいだけど。あ、あと2回濾す。


「あ、でね、せっかくラードを作るなら、色々作りたいんだ。石鹸とか」

「急な石鹸」

「今でも作ってるのに?」


 絶対揚げ物って言うと思ったのに。なんだその展開は。ミーチの言うとおり、最近は溶かしたボア脂と灰と水を混ぜた石鹸を作って、固めたものを今乾燥させてる。前世の記憶が戻る前の俺たちも使ってたのに、切らしてたせいですっかり忘れてたんだよな。まぁ、まだ使えないから、暫く灰の水で手を洗うことになりそうだけど。冬こそ石鹸要るだろ。

 そんな、既に発明されている石鹸だけど……。まぁ、自分たちだけで作りたいって言えば、今の父ちゃん達になら要望通るだろ!


「ブラッシュアップは大事だし、そろそろ父ちゃんたちも俺たちに作らせてみようって話になると思うんだよね。水甘作ったくらいだしさ。あ、勿論、ティーチのハッシュドポテトも忘れてないからね!」

「そうよ、そっちが先よ! 揚げ油がラードなんて、すっごい贅沢で美味しいわ!」

「ははっ、そうだな! 楽しみだなー!」


 早く、ハッシュドポテト食べてぇや!


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