表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第三目標! 甘いを作る!
25/70

甘いが出来るまで、あと一晩!

 石臼で粉砕した大麦麦芽を持って、家の台所の中に入る。お湯を沸かす為に火を使っててあったかいそこでは、茹で上がった大麦がザルの上で冷まされていた。


「「おわったよー」」

「ありがとー。こっちも柔らかく炊けたよー!」

「ホントだ、いい感じー」

「これと、粉にした麦芽を一緒にして、お粥にするんだよね」

「そうだよー!」


 作業が上手いこと進んでるおかげで、ミーチの機嫌がすこぶる良い。このまま順調なら、明日には水飴出来てるもんな。俺らもそのおこぼれに預かれるんだから、歓迎しない手はないんだけどな!


 母ちゃんも見守る中、俺らでも抱えられるサイズの壺を沸騰してるお湯の中に入れて煮沸消毒した。少ししたら取り出して、柔らかめに炊かれた大麦と粉砕麦芽を壺に入れ、さっきとは別でそこそこの温度のお湯を壺に注いだ。それをヘラでかき混ぜてっと……。


「ミーチ、このあとどうすんだっけー」

「暖かくしたままにするー。蓋した壺を布でぐるぐる巻きにして、あったかいココに置いとくの!」

「流石に、蒸し風呂をずっと動かすわけにはいかないからね」

「丁度兄ちゃん、帰ってくるのにー?」

「えっ!? 兄ちゃん帰ってくるの!?」


 知らなかったんだけど!? 太鼓、鳴ってたの!? ターチ、教えろよ! あ、あんなに大きい音を、聞き逃した俺も、俺が、悪いんだけどさぁ……。

 驚いてたら、母ちゃんとミーチも「知らなかったの?」って首を傾げた。うっ……。


「母ちゃん、ミーチ! ティーチったら凄いんだよ! 石臼回すのに集中しちゃって、僕の声とか太鼓の音とか、全然聞いてなかったんだよー! だから、麦芽すり潰したの、全部ティーチが頑張ったんだよー!」

「い、言うなってターチ!」

「疲れなかったのー? すごいねー!」

「あらあら。ティーチったら、そういうところあるわよね」


 ターチの暴露内容に、ミーチは感心した感じで目を見開いて、母ちゃんは頬に手を当てて、面白そうに微笑んだ。その後、話を聞けるくらいには周りを見ないとダメだって注意された。困るのは俺だからってさ。反省しマース……。

 気まずくなって、外に目を逸らした。空に雲はそこそこあるけど晴れてるから、まだまだ明るかった。お昼前だから、今から壺を保温しとくと、明日の朝にはすっかりデンプンが分解されきってそうだな。


「んっ? 兄ちゃんが帰ってくるってことは、今日、パン焼くの?」

「そうね、焼くわよ。今からだけどね」

「ふーん……。じゃあさ、ザルに残っちゃったこの大麦、もったいないから混ぜない?」

「え?」

「「ティーチ?」」


 閃いた! モルトシロップが出来る前に、パウダーの方を先に試してみようぜ!

 少しでもカサを増す為に、ウチの小麦粉は全粒粉も全粒粉。粉砕大麦よりは細かいかなーくらいの粗さだ。ターチが前に「よくあの粉で生地がまとまるよなぁ」って感心してたくらい。だから、母ちゃんのその腕があれば、もうちょい不純物が混じったって大丈夫だろ!


「いいけれど……。麦芽、残ってる?」

「布にちょっと張り付いてんじゃん、ほら。せっかく石臼で挽いたからさ、使ってほしいなー!」

「「使ってほしいなー!」」

「ふふふっ。いいわよ、そのくらい。……何を企んでるのか、知らないけど!」

「ぅえっ?」


 か、母ちゃん!? 何言ってんの?! 動揺しすぎて、変な声出ちまったじゃんか!

 そのあとは、ふっつーにパン生地を仕込んで、何事も無かった。ずっと心臓はバクバクしてたけど。元聖女だから、勘も鋭いのかな。


 とうもろこしこと、ロコモシを粉にしたものを出汁でふやかして、マッシュポテトみたいな感じになったものを主食に温野菜を食べた、昼。母ちゃんが一次発酵中のパン生地を覗きに行って、「あら?」って声を上げた。


「「「どうしたのー?」」」

「いえ……。なんだか、いつもより膨らんでるような気が、……しただけね! うん!」


 自己完結した母ちゃんは、生地の入ったボウルにまた濡れ布巾を被せた。それから駆けつけた俺らの頭もポンポンポンッと撫でて、「麦踏み、頑張ってらっしゃい」って送り出してくれた。しゃあねぇ、行ってきます!


 少し遠くの畑まで小麦の麦踏みをしに行って、始めた途端。俺らはニンマリしちまった!


「なぁなぁ! 母ちゃんのあの感じ、絶対そうだよな!」

「うん! いつもと発酵の具合が違ってたんだ! いつもより膨らんでたんだ!」

「モルトパウダー、しっかり出来てたのよ!」


 精製されてるワケじゃないから、俺たちもそこまで期待してなかった。天然酵母はあるからいつも膨らんでたし。でも、ちゃんと効果あったっぽい!


「見た目で分かるくらい、もうしっかりデンプンを分解してんだな!」

「あの粗さでパンも膨らんでるって、ことはだよ……?」

「水飴も、間違いなく完璧に出来るわ!」

「「「17日も頑張った甲斐があるってもんだ!」」」


 まぁ実際は、待ってただけだけど。今日の夜のパンが、スッゲー楽しみだぜ! 材料がほぼ変わってないから、小麦の風味とか味わいとかは変わってないハズ。でも。


「ふっくらってことはだぜ?」

「いつもよりは気泡を含んで……!」

「柔らかいってことよね!」


 兄ちゃん! 早く帰ってきてな!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ