表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第三目標! 甘いを作る!
23/70

麦汁から甘いが出来なかったのって、もしかして!

「なんか、おかしくね?」

「僕もそう思う」

「麦汁の存在があるのに、水飴を作らない意味が分からないわよね」

「「ほんっとそれ」」


 いももちの材料に茹で大麦を混ぜて、薄くしてボア脂で焼いた焼きいももちをお昼ご飯に食べた午後。広大な小麦畑の麦踏みをやりながら、俺たち三つ子は水飴について話し合っていた。


「……パンだって、父ちゃんが言ってたことが本当なら、基本は教会しか作っちゃダメだろ? エジプトの壁画にも描いてあるんだっけか、そのパンからビールが出来たって話は有名だし、人間の歴史は酒と共にあるって格言もあるくらいだ。この世界でもビールはあるはずだよな」

「大航海時代は水よりも長期保存できるからって、ビールやワインが重宝されてたらしいじゃない? ワインなんて保存の為に蒸留したアルコールを添加した、酒精強化ワインもあって……。というか、ほっといていい醸造と、器具が必要な蒸留なら、蒸留の方が技術がないといけないんだから、ずっと歴史は浅いはずよ」

「それはそうとして、パンの原料は納税対象の小麦で、ビールやウイスキーの原料は飼料にも使われる大麦麦芽。教会以外でもお酒は作られていて、麦汁が甘いことを知っていて尚、水飴を作らなかったなんて……」


「「「どんだけ、酒が好きなんだ……」」」


 水飴が誕生しなかった理由なんて、それしか俺らは思いつかないぞ。


「酒に溺れた人間……愚かね」

「カッコつけてるところ悪いけどな、ミーチ。多分水の方が高かったんだぜ」

「さっき自分で言ってたけど、保存が効かない水よりも、お酒の方が腹を壊さない飲み物として優秀だったろうからね」

「そうよね……。だから私、ろ過器が欲しかったんだし……」


 こうして分析してみると、意外と納得できるようになってきたな。この土地で水飴がまだ出来てないのは、酒が好きってのは勿論あったろうけど、『甘味よりも水の方が必要だったから』、なんだろうな。……んっ? 兄ちゃんがお酒飲みじゃないのって、実はメッチャ変なことなんじゃ……?


 水飴が無かった理由を分析したところで、日が暮れてきて、夕飯の時間になった。ボア骨の出汁! メッチャ楽しみにしてたそれは、オーソドックスに野菜スープと、お昼前にミーチが言ってた大麦リゾットになってた。リゾットは兄ちゃんが作ったんだって! どっちも液体系? んなのいいんだよ! ミーチのアイディアが早速実現したのが嬉しいんだから!


「「言ったの、まんまだー!」」

「すごいッ、すごい! クガニ兄ちゃん、ありがとう!!」

「こちらこそ! ミーチの想像が具体的だったから作れたんだよ」


 ボア骨出汁が入っても尚、牛乳の白さは際立っている。見た目的に入ってるのは、刻んだホレウ草とオオネの上の葉、赤いジンニンと、燻製したばかりの干してないボア肉だ。上に乗せられたジンニンの小さい葉っぱがオシャレ! はぁ、あったかい、ハーブも香る、美味しい匂い!


「大麦のミルク煮、召し上がれ」

「「「いっただっきまーす!」」」


 三つ子揃ってお手々を盛大に打ち鳴らした。にしても、すげぇよ兄ちゃん! ミーチの一言だけで、こんなにクオリティの高いリゾット、大麦のミルク煮を作るだなんて! やっぱ兄ちゃんも、食いしん坊だな!


 大変満足した夕食後、箱風呂に入りながら、水飴について母ちゃんに聞いた。大麦麦芽から作るウイスキーで、なる前の麦汁が甘いらしいっていう話から繋げて。


「兄ちゃんから聞いたけど、母ちゃん元聖女様なんだろー?」

「教会って、修道院って、パンとかお酒とか作ってるんだよねー?」

「もしかして、隠れて甘いもの、作ってたんじゃないのー?」

「「ないのー?」」

「ホント、貴方たちは探究心が強いわね~」


 感心したって感じの物言いながら、少し困った様子の母ちゃん。んー、あんまり言いたくなさそうだな。ふっふっふ。つまり、何か知ってるってことだろ?


「やっぱ、隠れて自分たちだけで食べてたのー?」

「そんなことは、多分ないわよ。少なくともお母さんは食べたこと無いしね」

「教会ってホントにお酒作ってるのー?」

「作ってるわよ。発泡酒のビールと、蒸留酒のウイスキーね。お父さんが良質な大麦を育ててるから、この村でも良いウイスキーが出来てるのよ。きっと麦汁から美味しいわね」

「麦汁は飲んだことあるのー?」

「いいえ? ビールやウイスキーが作れるのは成人の修道士・修道女だけ。お母さんは早くから聖女になれちゃったから、パン作りしか実はやってないのよね」

「「「そうなんだー」」」


 早くから聖女だったって、成人前から強かったってこと? 母ちゃんエリートだったんじゃん。よく聖女辞められたな。……あれか? 処女じゃないと力が強くないとか。グロ。まぁ、今はその話じゃないから、いいや。


「じゃあ、母ちゃんが知らないだけで、甘いのはあったかもってことだよな」

「でも、お砂糖も高くて、ハチミツも高いのに、どうしてそれは作って売らなかったんだろうね」

「お布施、儲かったろうにね」

「こら、ミーチ。お布施は儲けるものじゃないの。施していただくの。困った時に力になる為にね」

「はーい、ごめんなさーい」


 余計な一言を言っちゃったミーチが母ちゃんに注意を受けたところで、話は自然と切り上げて、蒸し風呂をリラックスして堪能した。今日もいっぱい考えた。いっぱい小麦を踏み踏みした。なんだか、今日はもう、疲れたわ。


「ターチ、ミーチ。作ってみようぜ、大麦から甘いの。明日からー」

「そうだね、大麦を水に漬けよっか。明日からー」

「甘い作り、頑張るぞー。明日からー」

「……大麦を漬けるのは、今日からでもいいんじゃない?」

「「「そうだねー」」」


 寝る前に、父ちゃんから大麦の粒を一人一掬いずつ貰って、水を張った桶に沈めた。よし! おやすみ! 明日の朝、水を入れ替えるからなー!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ