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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第三目標! 甘いを作る!
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作りたいものは、いっぱいあるのに!

 家に帰ってきたら、父ちゃん母ちゃんにも新鮮な果物をお裾分けして、移動疲れを串刺しリンゴを焼きながら休んで癒した。曇ってきて寒くなってきた外。焚き火を囲んでも風上じゃ、あんまり温まらないや。

 さーて、魔王のこととか、聖女のこと、魔法適性検査のことかは、一旦忘れてっと。


「なぁ、水飴とモルトシロップ、どうすんだ? 作るのか?」

「私は作るわよ。甘いは美味しいの。美味しいは人を救うの」

「大麦なら目の前にたくさんあるもんね。偶然装って作れるんじゃないかなっては思う」

「……俺はちょっとだけ、不安だぜ」


 砂糖があんなに高いなんて思ってなかった。兄ちゃんに青い顔をさせるほど、なんて。そんで、水飴がまだ発明されてないとも思ってなかった。一休さんくらいの時代感じゃねぇの、この世界。もっと昔? そもそも水飴っていつ発明されたの? どこ発祥?


「個人の家でパンを焼くのもダメなのに、あんなに高い砂糖に近い甘味を作るなんて、領主どころか国が動くぞ。技術寄越せってな」

「水飴なんて、大麦を発芽させて粉にして、お粥に混ぜて保温して、絞った汁を煮詰めただけなのに……」

「すっげー詳しいな」

「大麦麦芽を乾燥させて粉にしたら、それはもうモルトパウダーなのに……」

「やっぱパウダーの方が簡単じゃねぇか」

「ロ、マ、ンー!」


 おっといけない。そうだ、ロマンは大事だよな。お粥にしたり煮詰めたりって火を使う作業をしなくていいっていう観点からなら、絶対にパウダーだし、多分ターチもそれは分かってる。でも、出来るのに手を出さないのは、納得いかないよな。

 ……いや、待て。


「でもよ、また父ちゃんに“どこでそれを知ったんだ”って詰められたら、なんて言い訳するんだよ。今日だって、砂糖の使い道聞かれて、俺とターチは困っちまったじゃんか」

「「うーん……」」

「……急がねぇで、大麦を観察しようぜ。ガジャ芋の次に興味を持ったって感じでさ」

「小麦じゃないんだ?」

「麦踏みやったのに」

「ガジャ芋だって小麦と関係ないタイミングだったろ? 別に気にしなくていいんじゃね?」


 ろ過器だって、唐突だったんだ。きっと父ちゃんも母ちゃんも兄ちゃんも、俺らのひらめきにはもう、慣れっこだろ。


「なぁなぁ、ミーチ。さっきお粥に入れるって言ってたけどよ、米なんて無いぞ」

「あ、あれ? ……い、いえ、大丈夫! 米に求めてるのはデンプン! つまり、片栗粉でも出来るハズよ!」

「ガジャ芋でんぷん粉、からかぁ。“なんで混ぜた?”、“どうして保温する?”ってなりそうだし、段階踏まなきゃだね」

「保温するのもどうやって? って感じだしな。あーあ、ヒント、そこらへんに転がってねーかなー」


 俺たちは別に天才キャラで売ってくつもりは毛頭ないし。よく忘れちまうけど、俺ら5歳児なんだよな。しかもまだ、勉強らしい勉強もしてない、幼いガキ3人。


「ま、気長にやってこうぜ」

「小麦粉でパンが出来るんだから、大麦粉でもパンが出来ないかって、実験を装って……! あるよね、すり鉢!」

「保温、保温……。8時間ずっと箱風呂を使うのは、燃料が……!」

「だめだこりゃ」


 のんびりするつもりのない我が弟妹に、ちょっと呆れてしまう。そして同時に、羨ましくもある。そんなに熱中出来るモノがあるって、いいよな。俺も、前世の記憶から引っ張らなくてもいいから、何か、熱中出来るものを……。あ、まずはボアの骨から出汁取るか。


 そんなことを考えてたら、焚き火に向かって差してたリンゴから、ジュワジュワと果汁が垂れてきた。そろそろ焼き上がりだ!

 遠赤外線でジュクジュクになった表面と、熱の通らなかった中のシャキシャキ感のバランスが、良かったのか、悪かったのか。まぁリンゴこと焼きプルアは美味しかった。


「そういえば、焼き芋ブームの中で壺焼き芋もあったよな。もしかして今の道具でもできるんじゃね」

「いいね! 焼くのは芋じゃなくてもいいし、暖房にもなるねー」

「保温機!!!」

「「あー、確かに?」」


 あれって多分、蓋するよな。上に乗っければ、あったかいかもしれない。でも、8時間も乗っけるかぁ? 売り物じゃねぇから、長時間使うわけじゃねぇし。……でも、まぁ、焼き壺は欲しいし、いっか。


「そうと決まれば、壺をねだるわよ!」

「僕、それよく分かんないんだけどさ。壺の中で火を焚くの? ドラム缶風呂みたいに外から加熱するの?」

「中からだぜ。下の側面に穴が空いた壺の中に七輪を置くんだ。別に炭でもいいぜ。んで、壺の淵に鉄線で作った筒的なやつでサツマイモを吊るして、蓋して1時間から2時間、じっくり火を通すんだ」

「よく知ってるね、ティーチ」

「なんか、こういうのは覚えてんだよな」


 んー、確か壺焼き芋って、江戸時代後期らへんで流行したって話だったから、壺屋に行けばもしかして、あるかもか? あーでも、水飴が無いのに、その発想あんのかなぁ。


「ティーチ! ターチ! ミーチ! プルア食べ終わったなら、ボアの骨を洗うの手伝ってー!」

「「「はーい!」」」


 母ちゃんに呼ばれたから、焚き火の火を消してから、井戸のそばにいる母ちゃんのとこに向かった。骨から出汁を取る文化はあって、良かったぜ。……ある、よな? 5歳児だし、知らんぷりしてても、いいよな? 知ったかぶりで笑って流してくれるよな? あー、こっわ。


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