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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第三目標! 甘いを作る!
20/70

魔王と聖女って、なーに?

明けましておめでとうございます!

完結まで走りきります!

 村の中央から帰る道すがら、俺らが乗る荷車を牽く兄ちゃんから、魔王についての情報を聞き出した。


・知性がありつつ、脳筋な魔物達の目指す最強の座。

・君臨してる魔王を力でねじ伏せたら、新しい魔王になれる。

・魔王は魔素が無限に吹き出す島を根城にしている。島っていうか、大陸っていうか。

・王と付くが、君臨する魔王によって外交対応が異なる。周辺国と友好関係を結ぶ時期と、略奪し敵対する時期がある。

・以前の魔王は友好的で、魔石と服飾品などの取引もよくやってたらしい。

・今の魔王も略奪系では無いにしろ、『人間側で強い者と戦わせろ』と無理難題を要請したり、部下と腕試しをして大怪我を負わせたりと、迷惑系。

・実は、今の魔王は、元武神。他の神様に喧嘩を売りすぎて、堕天させられた。って話が、聖女様経由で主神様からお告げが教会に来たらしい。


 今の魔王の情報も入れると、こんなんだって。神様が魔王になるんだ。概念だと思ってたのが実体を持つんだ。そんな相手に、人間ごときが勝てるわけなくない? そんでもって喧嘩好きなんて、手に負えないだろ。さっすがファンタジー。


「強い人間と戦いたいって、兄ちゃんいつか魔王から呼ばれちゃいそうだな」

「そうなったらヤダー」

「行かないでー」

「行かないって。王都には俺よりも強い人なんてたくさんいるだろうしね」

「「「でも兄ちゃん、大きな木引っこ抜けるじゃーん」」」

「抜いてない、抜いてない。丸太にした後で切り株を掘り起こしただけだって」


 あれ? そうだっけ? 引っこ抜いたエピソードが印象的すぎて、勝手に記憶が改ざんされてたかな。また植林したいから、前の根っこは大体引っこ抜くんだって。そうじゃないと腐った根っこ部分が空洞になって、その部分の土が柔らかくなって崩れちゃうんだって。災害抑止は大事。


「あとさー、兄ちゃん。セイジョ様って、だれー?」

「たしかにー。だれー?」

「偉いひとー?」

「偉いっちゃ、偉いかな。いろんなタイプの聖女様が居て……あ、聖女様っていうのは役職名みたいな、称号みたいなものでね」


 追加で、聖女様についても兄ちゃんに話してもらった。


・聖女様っていうのは、修道院で修行をする修道女の中でも、高い能力を持つ女性の事。

・災害なんかの有事の際には現場に派遣される、癒しや修復に長けた魔道士のような人。

・魔術士が周辺の魔素と自分の中の魔力を結びつけて術を展開するなら、聖女は信仰心と自分の中の魔力、そして周囲の精霊の力を借りて術を展開する。(と、言われている)

・癒し、修復と言っても解釈は広くて、傷を治すことも、偏った気候を一時的にどうにかすることも、これらに含まれる。

・聖女の中には主神様(豊穣の神)に気に入られて、声を聞く事が出来る人もいる。今回魔王のことが知れ渡ったのもコレ。


「ちなみに、母さんも元は聖女様だったんだよ」

「「「そうなのー!?」」」

「うん。ほら、ちょっと前まではたまに畑に雨を降らせてたりしてたでしょ? 雨乞いの聖女様だったんだよ」

「「「そうなんだー!」」」


 た、確かに。記憶戻ってからは見てないけど、夏頃、母さんが何度か雨を降らせてた。父ちゃんが土魔法で藁ゴーレムを作ってるみたいに、単純に水魔法でやってるんだと思ってた。ただの魔法じゃなかったんだなー。……父ちゃんだって絶対、精霊さんの力借りてるけど。命宿す系の魔法だもん。色々流派あるんだろうなぁ。

 あ、そっか。だから名前の雰囲気が一人だけ違ってたのか。父ちゃんがヒティで兄ちゃんがクガニ、俺らがティーチ・ターチ・ミーチなのに、母ちゃんだけマリアって、なんか、ね?


「母さんはその昔、日照りに悩まされてたこの領地に派遣された聖女様だった。色んな村で雨乞いをして、精霊の悩みを解消して、日照りから村を救ったんだ」

「「「母ちゃんすごーい!」」」

「で、最後に訪れたこの村で、若かった父さんに出会って、父さんの顔に一目惚れして、聖女を辞めて押しかけ女房になったんだってさ」

「「「母ちゃん……」」」


 押しかけ女房の話は聞いたことあったけど、本当に一目惚れってだけだったんだ……。なんか、ただの農家の父ちゃんが英雄の母ちゃんを助けたとか、なんかドラマがあるのかと思ってたのに……。てか父ちゃんと顔がそっくりな兄ちゃんもその内、押しかけ女房が現れるってこと? ヤダー。


 肉食系聖女だった母ちゃんと兄ちゃんの予測出来る未来に絶句してたら、荷車を休まず押してる兄ちゃんが「そういえば」ってまた話題を切り出した。


「春になったら、三人の魔法適性検査だね」

「「「まほうてきせいけんさー?」」」

「うん。教会の神父さんに魔力腺開通をしてもらって、何の属性の魔法が扱いやすいか、調べてもらうんだ。基本は親の適性を受け継ぐから、土属性か、水属性かもね」

「「「お~!」」」

「まぁでも、たまに全然違ってたり、……無かったりするから、気にしなくてもいいけど、ね」

「俺、火属性がいー!」

「僕は土属性!」

「私は水属性ー!」

「ふふっ、そこは三人ともバラバラなんだねぇ」

「「「兄ちゃんみたいに力持ちな魔法も、かっこいいなー!」」」

「はははっ! もう、嬉しいこと言ってくれるなぁ!」


 ……実際には、力持ちになる魔法、とかじゃないらしいけど。だから当時、また父ちゃんが兄ちゃんに複雑な思いを抱えることになったらしいけど。でも、教会が判別できないだけで、ちゃんと種類があるのかもしれないし。


 家に帰ってきたけれど、移動以外の疲れも、なんだかドッと押し寄せてきた。色々説明を受けて、勉強したからかな。魔王も聖女様も居る世界なんだな。

 だけど、疲れたからといって、眠気があるかと言われたら、そうでもない。妙にドキドキして、嫌な緊張感が全身を強ばらせている。


 神様。どうして、兄ちゃんに普通に、魔法の適性を与えてくれなかったのですか。流れを汲んだ色味にしてくれなかったのですか。


 もしかして、本当に、兄ちゃんは、特別なんですか?


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