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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第三目標! 甘いを作る!
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砂糖の使い道、考えてなかった…!

「お、クガニいらっしゃい」

「弟たちを見てもらってありがとうございました」

「お客の相手は苦じゃないよ」


 スパイス屋さんに水飴も、モルトシロップも無いっぽいってのを確認した頃、ギルドにお金を下ろしに行ってた兄ちゃんが戻ってきた。大金を持ってるからだろう、いつもとは違って猫背になって、斜めがけバッグを抑えてる。狙ってくれって言ってるようなもんだけど、腕力チート級な兄ちゃんに挑む命知らずは、この村にはいない。


「「「兄ちゃん、砂糖やっぱいいやー」」」

「えっ! えっ、なんで? 頑張れば買えるよ?」

「「「頑張らなくていいよー」」」


 思ったけど、砂糖の甘味を知らない今の舌に覚えさせちゃったら、俺らの人生が狂う気がする。脳にガツンッて来て、忘れられなくて、みたいな。こっわ、麻薬じゃん。


「こんなに高いもんだとは思わなかったー」

「ハチミツも高かったー」

「果物たくさんでいいよー」

「そ、そっか……。そっか」


 兄ちゃんの「果物でもいいか」って提案を採用したら、あからさまにホッとした顔になった。心なしか顔色も戻ってきたような。あっぶねぇ、兄ちゃんの稼いだ金を、俺らが荒らすところだった。


「冷やかしなら帰りなー」

「「「ごめんなさーい」」」

「あぁ、塩を追加で買いたいです。あと、ウサギ肉に合うハーブも」

「そう? じゃあセパリとレロル、あとジャンジかしら。と、塩ね」

「ありがとうございます」


 俺らが冷やかしたから? ごめんな、兄ちゃん。ハーブなんて、山によく入る兄ちゃんなら自分で採ってこれるのに。……いや? 乾燥させたり枝を取り除いたりって、結構大変だろうしな。その点、スパイスもハーブも栽培してるもんな、カジャ姉ちゃん。


「ハーブもスパイスも結構な量買ってくわねぇ。はい、お代は銀貨四枚丁度ね!」

「ん? ハーブが三つ、大銅貨7枚づつだから、あと大銅貨1枚足りてないんじゃ」

「あーそのくらい構わないわよ、こんだけ買ってくれてるんだもん。あ、じゃあ、これ聞いてもいいかしら」

「なんでしょう」

「クガニにじゃなくて、そこの三つ子になんだけど」


 え? 俺たち? 聞かれるとしたら、砂糖のことだよな? ……あ゛。


「ねーティーチ、ターチ、ミーチ。どうして砂糖が欲しかったの?」

「確かに。どうして?」

「「えっとぉ……」」


 やべぇ、やっべぇって。今のところ使い道、パン生地に加えてふわふわにしようってのしか無いぞ。そして、村でパンって言ったら、確か、焼くのは教会しか認められてなかったハズ。なんでかは知らねぇけど、そういう決まりだったハズ。こないだ父ちゃんに言われて知ったけど、家でパンを焼いてる俺らは、村の決まりに違反してんの。罰金が発生しても、文句言えねぇの。


 なのになんで俺らは食べてるのかって言えば、美味しいからなんだよ。村の中央から滅茶苦茶離れてるから。バレなきゃ犯罪じゃねぇから。あんなに硬いけど、蒸した芋を毎日食べるのよりは、ずっとマシなんだよな。

 パンのことしか考えてなかった俺とターチをよそに、砂糖の言いだしっぺに一番近いミーチが胸を張った。


「そんなの、甘いは美味しいからよ!」

「んん? そうね、甘いものは、美味しいわね」

「うん! だから、甘いしかない砂糖も、美味しいハズよね!」

「あらぁ……」


 ミーチ、お前……。嘘とか誤魔化しとか、全く考えてなさそうだな……。5歳児らしい欲望丸出しの答えに、スパイス屋のカジャ姉ちゃんだけじゃなく、俺らも兄ちゃんも目を丸くした。なんか言葉おかしいし。甘さとか言えよ。


「なんなら、砂糖がこの世で一番美味しいまであるはず! だって甘いんだもの! だからこんなに、金貨一枚するくらい高いのよ!」

「あ、あのね、ミーチちゃん。砂糖だけじゃ味気ないわよ」

「そーなのー?」

「そうなの。例えば料理に使ったり、酸っぱめのプルアとかロトスリーベとかにかけたりして、初めて美味しいのよ。だって、砂糖は調味料だから」

「そうなんだー。じゃあ、いいや」


 カジャ姉ちゃんに説得されたミーチは、興味を失ってつまらなそうにした。兄ちゃんの服の裾を引っ張って、「果物屋さんに行こー」って言ってるし。


 はぁ、今日のミーチが、ちょっとポンコツで助かった。パンのこと言い出さなくって、助かった。兄ちゃんにおねだりする前にパンのことを思い出せなかった、三つ子全員がポンコツなんだけどよ。


 買った塩とハーブたちを荷車に積んだら、俺らはミーチのおねだりした通り、果物屋に向かった。リンゴだとかオレンジだとか、キウイとか。季節の果物とドライフルーツが並んでる。ミーチが生の果物を、ターチがドライフルーツを銀貨一枚分買って貰ってた。ちょっと羨ましい。必要だけどよ、寸胴鍋。


 三つ子で貸出用の籠に果物たちをパズル感覚で見栄えよく積んでたら、兄ちゃんが果物屋のおじちゃんに「そういえば、聞いたか?」って話しかけられてた。


「代替わりした魔王、結構な暴君らしいぞぉ」

「らしいですね。ギルドで耳にしました」

「「「ま、まおう?」」」


 魔王がいるのか!? た、確かに、魔法のある世界だし、兄ちゃんがパワー系チートだから、神様の加護的なものもあるのかも知れないって薄々感づいてたけど! まさか魔王までいるなんて!


「うん。知性ある魔物の王様って感じでね。基本的には一番強い魔物が他を従わせてる、ていう、感じかな」

「なんで王様になりたいんだー?」

「知性のあるなしってどう分けてるのー?」

「代替わりって、どうやったらするのー?」

「うーん、質問いっぱい! あと兄ちゃんも知りたいことばっかり!」

「「「兄ちゃんも知らないかー」」」


 まぁ、勇者と魔王みたいな対立構図があったとして、こんな農耕ばかりの田舎に、詳しい情報なんて入ってくるわけねぇか。


 ……魔王って、封印からの復活とか、誕生とかじゃなくて、代替わりするんだ。なんか、変なの。


よいお年を~!

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