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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第三目標! 甘いを作る!
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砂糖って、こんなに高いの!

 兄ちゃんが帰ってきて、茹でパンを食べてもらった、次の日! 俺らは村の中央にやって来た! 兄ちゃんに好きなもの買ってもらう為に!


 俺は骨から出汁を取る為のでっかい鍋。

 ターチはモルトシロップ。

 ミーチは水飴。


 ミーチは『お砂糖みたいに甘いもの!』って目をキラキラさせて、ターチは『いつものパンに入れても甘くならないくらいの甘いやつ……』って不安そうにおねだりしてた。兄ちゃんはそんな二人に「甘いのが好きだねぇ」ってニコニコして言いつつ、財布の中身を気にしてた。やっぱ高いんだな甘味って。「山の果物じゃ、だめ?」とか代替案を出してくるくらいには。ごめんな、兄ちゃん。精製されたものが欲しいわ。


 俺のおねだり品は雑貨道具屋で直ぐに見つかって、買ってもらえた。まぁ俺専用じゃなくって、家族共用になるからな。寸胴鍋みたいなの、高かったけど。

 次に向かうは調味料屋さん。スパイス屋さんって言った方がカッコいいか? そこまで荷車で送ってくれた兄ちゃんは俺らを下ろすと、「ギルドからお金下ろしてくるね」って言って、一人で走って行ってしまった。……よっぽど、高いのか。


「先に中に入って、値段確認しようぜ」

「「そうだねー」」


 ここで確認だが、この国の貨幣は7種類だ。日本貨幣での感覚も添えると、こんな感じ。

・鉄貨  1円相当

・銅貨  10円

・大銅貨 100円

・銀貨  1、000円

・大銀貨 10、000円

・金貨  100、000円

・大金貨 1、000、000円

・白金貨 10、000、000円


 白金貨なんて、王様レベルしか持ってないし使わないでしょ。一千万円の価値のある貨幣とか、使いづらくてありゃしない。俺らがこれから貰えるだろう小遣いだって、穴の空いた鉄貨とか銅貨までだろうし。ちなみに大金貨と白金貨には穴が空いてない。紐に通して持ち運ぶ、なんてことをしないから、らしいよ。

 この村で俺らが使ったのことあるの、せいぜい銀貨までなんだけど。こないだランタンオイル15瓶分買った時に使ったな。小さいガラス瓶1つ辺り、約67円。本当は1瓶銅貨7枚の70円相当が、まとめ買いで銅貨5枚分50円相当が値引きされてる。お得だぜ!


 小さな瓶1つで一家の灯りが7日間保つランタンオイル(早朝と夜しか使わないから)。村生産で一日銅貨一枚なランタンオイルに比べて、国内3つ隣村からの塩は1袋1kgくらいで銀貨二枚2000円。完全に輸入品の砂糖に至っては──


「「「ひ、一瓶、金貨1枚!?」」」

「良い反応いただきました~♡」


 50gも入って無いかもしれない、赤いリボンで可愛いラッピングされた小さな瓶。ほんのり茶色いが白と言っていい砂糖が、これだけで、10万円!? どこの富豪が買うんだよ! この村には居ねぇぞ!? なんで仕入れた!?

 子供の手が届かない位置に置かれたそれを見上げる俺らを、スパイス屋のお姉さん、カジャがカウンターから楽しそうに見ている。ちょっと意地悪じゃな~い? フンッ!


「お砂糖って、こんなに高いんだなー」

「どうしてー? 遠くから運んでるからー?」

「お砂糖の材料も高いのー?」

「そうねぇ。材料というより、潰したり煮詰めたりって作業が大変みたいよ。しかも、かなり遠い国から、山を越えてやってくるし。盗賊や魔物・魔獣たちの脅威を乗り越えてくるから、高いのよ。……中抜きもされてるだろうしね」


 最後にボソッと呟かれたのは、聞かなかったことにしよう。聞かせたくなさそうだし。

 そっか、製造コストも輸送コストもバカみたいに高いのか。でも、砂糖しかねぇのか?


「それに、砂糖って薬みたいなところあるからね。気分がいいから私は飾るように砂糖を置いてるけど」

「「「そーなんだー」」」


 そういや聞いたことあんな。江戸時代あたりまで、砂糖って医薬品だったんだっけ。だから水飴が身近で、みたいな。で、江戸時代に砂糖を混ぜた、飴細工が流行った云々かんぬん。


「なぁなぁカジャ姉ちゃん。もっと安い甘いやつってないの?」

「砂糖みたいに白くなくていいんだけど……」

「サラサラじゃなくてもいいよー!」

「砂糖じゃなくてもいいなら……」


 俺らのリクエストに応じて、カジャ姉さんはカウンターから出てきて棚を探してくれた。俺ら五歳児じゃ、棚に手が届かねぇからな。まだ器用じゃない手で触って壊したら大変だし。ていうか、天井からハーブ吊るしすぎだろ。お姉さん、こっち来る時に頭にわさわさ当たってたぞ。


「やっぱりお小遣いじゃ買えないけど、こっちはどう?」

「「「これって、ハチミツ?」」」

「そうよ」


 棚を物色してたカジャ姉さんが俺らに見せてくれたのは、琥珀色の艶やかな蜜。ハチミツだ。取り出したところの値札を見たら、ランタンオイル並の小さい瓶でも大銀貨5枚。5万円だ。砂糖よりはずっと量もあるし、良心的だ。でも高い。


「季節物だし、養蜂は大変だからね。でも隣村で輸送は楽だから、この値段で済んでるわ」

「そうだよなー」

「……でも、高いねー」

「兄ちゃんにおねだりするには、高すぎるー」

「そう思うんなら、大人しく果物で我慢しなー。今ならオレンジとかリンゴとか並んでるんじゃない?」


 兄ちゃんのお財布事情を慮るなら、その通りなんだよ。でも、もうちょい粘りたい。水飴、ねぇのかな。モルトシロップとか、偶発的に見つかってねぇのかな。


「果物から砂糖って作れないのー?」

「そもそも砂糖って何から出来てるのー?」

「なんだっけ、樹液からだっけー?」

「んー、サトウオオネとか、サトウノキとからしいけど……」


 砂糖大根とサトウカエデらしきもの、からか。サトウキビとかはまだ無いのか?


「「「ここで取れるものからじゃムリなのー?」」」

「この村で甘いものが生産できるなら、私はもっともっと裕福になってるわねー」

「「「そっかー」」」


 十分すぎるくらい充足してると思うんだけどなぁ。ここを噂の王都にでもしたいのか、カジャ姉さん。

 でも、そっか。水飴も、モルトシロップも、今のところ無いのか。少なくとも、この村には。


 フハハハー! 無いなら、作ればいいのさ!





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