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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第二目標! ふわふわパンを作る!
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そわそわ、期待と不安でちょっと震える!

 忘れちゃいけない目標。それは、『クガニ兄ちゃんにクネドリーキをご馳走すること』! その前に乗り越えなきゃいけない事が多くてつい忘れちゃうけど、俺らはそれに向かって頑張ってるんだ。山に狩りに行く前に、「三つ子の初めてつくる手料理が食べられない」って泣いてた、愛しい兄ちゃんの為に!


 “温野菜のガジャ芋包み焼き”を開発した、翌日。よく晴れた日の昼前。山から、どーんっ、どーんっ、どーんっ。3回、太鼓の音がした! 兄ちゃんが帰ってくる! 太鼓の鳴らすタイミング、いつもより早いな!


「「「ガジャ芋茹でパン! 父ちゃん母ちゃん作らせて!」」」


 は、初めて作るぜ、ガジャ芋茹でパン! 初めて作るパン、食べてもらえるって思って、気合い入れ直すぜ! オーーーーッ!


 しっかりいい子ちゃんにして実績を積んだおかげで、全粒粉の小麦粉を分けてもらえた! 代わりに今回は母ちゃん特製のバゲットは焼かないから、余計失敗出来ないぜ! なんてソワソワしてたら、母ちゃんから「落ち着きなさい」って窘められた。


「逸る気持ちも分かるけれど、作るのはお兄ちゃんが帰ってきてからにしたら? あの子、あなたたちが頑張ってるところを見たいはずよ」

「「「それ、いいねー!」」」


 うんうん。天然酵母を入れるわけじゃないから、発酵時間は取らなくていい。茹でたり混ぜたりで2時間くらいかかるかも知れないけど、そこはまぁ、ご愛嬌。兄ちゃんが帰ってきたら、一緒に蒸したガジャ芋を練ろう! それまで、段取りを決めとかなきゃな!



 山から太鼓が鳴らされてから、大体5時間が経った。夕方にはまだ早い時間帯に、長い長い畑道の奥に、人影が見えた。あの金髪は、兄ちゃんだ! 兄ちゃんが帰ってきた!


「「「兄ちゃん! おかえりー!!」」」


 畑道を走ってお出迎えしたら、荷車を牽いてる兄ちゃんも手を振って、「ただいまー!」って大声で返事までしてくれた。いつもよりずっと長く山に言ってたのに、いつもより元気なご帰還だ!


「「「兄ちゃん! 魔獣狩りと素材採取、おつかれさまー!」」」

「うん、頑張ってきたよ! 荷車に乗ってるのはオスのボア。依頼とは別にもう一頭狩れたから、今日はステーキにしようね!」

「「「やったー!」」」


 期待してたよりもずっとデッカイ得物だった! 豚骨スープ作れるくね!? てかこの実りの季節に狩れたボアとか、実りをいっぱい食べて太ってるだろ! きっと脂が甘いぞ~! やべっ、ヨダレが……!


「てかさ、今日兄ちゃん早く帰ってきたな!」

「いつもより山篭りが長かったからー?」

「でも絶対、村の女の子たちに捕まって遅くなると思ってたー!」


 なんかおませさんなコト言ったミーチに、兄ちゃんが「つ、捕まるってミーチ……」って狼狽えて、苦笑してた。それから、今日の天気に負けないくらいの、晴れやかな笑顔になった。


「うん、早く3人の作ったパンが食べたくてさ。ギルドでのやり取りも最小限にしてもらったんだ!」


 おいおい兄ちゃん! そんなに俺らの茹でパンが食べたかったのかよ! う、腕がなるぜぇ!

 期待値の高さにちょっとだけ震えてたら、「あっそうだそうだ!」って兄ちゃんが目を見開いて明るい声で言った。


「ろ過器ありがとうね、ティーチ、ターチ、ミーチ! おかげで沈むのを待つしかなかった泥水が、あっという間に綺麗になって、時間の短縮になったよ! だから今日の早いうちに帰って来れたしね!」

「「「どういたしましてー!」」」


 うへへへっ! 俺たちが頑張って作ったろ過器が、しっかりと兄ちゃんの役に立った! こんなん、嬉しいしかない!



 想定より早めに帰ってきた兄ちゃんを専用箱風呂に送ったら、蒸気の為の火を貰って台所の竈を点火する。さっさと湯沸しとこう! そんで昨日より細かめに切ったガジャ芋を茹でて~!


「今回の茹でパンは、中身入れるんだっけ、入れないんだっけ」

「まずはオーソドックスに中身なしで。……ステーキに合わせるんだったら、母ちゃんのパンの方がいいかなぁ」

「そんなの今更よ! ……ステーキの付け合わせってウチ、蒸したガジャ芋と表面焼いたジンニンよね」

「「「……今である必要、ある?」」」


 ……ふ、不安になっちまったけど、気にしなくていいよ、な? そ、そうだよな! それはそれ、これはこれだ!

 不安な気持ちを追い払うように、適当な大きさに切ったジンニンもガジャ芋と一緒にお湯の中に突っ込んだ。中まで柔らかくした後で、ステーキ焼いた時に出てくるボアの脂で美味しく焼くつもりだ。わーい! 鉄板焼きだぁ!

 ちなみに父ちゃんと母ちゃんは、外でボアの吊るしを捌いてる。兄ちゃんが解体しようとしてたけど、3日頑張ってきたからって父ちゃんが「それくらい、やらせなさい」ってさ。思春期な兄ちゃんは迷ってたけど、俺らが風呂に後押しして無理やり任させた。


 さぁ、二つの根菜が煮えるまで、大人が誰も居ないからお喋りしとこ。でんぷん粉も塩も全粒粉も大体計り終えて、道具も準備出来てるからさ。


「豚肉、てか猪肉か。ってさぁ、熟成して美味しくなるかな。牛肉みたいに。鶏肉も熟成する?」

「猪なら、もしかしたらかもね。熟成肉の特集番組をうっすら覚えてるんだけど、検証したら鶏肉は腐ってたよ」

「足が早いわよね。そうそう、昔聞きかじった話だけど、牛肉も豚肉も、スーパーに並んでる時点で多少熟成してるみたいよ。輸入ポークなんかはチルドで真空パックで熟成させるから、アミノ酸が増えて肉質も柔らかくなるんですって」

「「へー!」」


 詳しいな、ミーチ。日本で生きてた頃は食品系の勉強してたのかな。俺は俺自身のことも分かってないけど。キャンプは好きだぜ。火起こしは得意だ。


「でも、今この家で真空パックなんて作れないんですけど……」

「チルドも、地下の冷暗所に置くしか無いよね。あんな大きな得物、一回じゃ食べきれないから、ほとんどが干し肉になるんだろうね」

「ジャーキーかぁ。兄ちゃんが携帯食で食べるにはいいかもけど、私は顎破壊されるからお出汁にしかなんないわ……」

「出汁、か」


 燻製したら、柔らかいまま保存が効くようになるとか、ねぇかな。塩はあるから塩漬けして……。あ、そろそろガジャ芋煮えてるんじゃね?


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