作ろう! 温野菜のガジャ芋包み焼き!
片栗粉というか、ガジャ芋でんぷん粉を抽出した次の日。俺たちは母ちゃんとの約束通り、お昼ご飯を一緒に作ることになった。
作るのは、いももちとおやきの融合体、“温野菜のガジャ芋包み焼き”。ガジャ芋のクネドリーキの前座として試作するんだ。母ちゃんが大麦入りの野菜スープを作ってる横でな!
まずは広めの鍋で沸かしたお湯で、大雑把に切っといたガジャ芋を入れて茹でる! そして鍋の上に父ちゃん特製の蒸し器をセットした。2段用意した蒸し器の中には、いももちの中身になる野菜を敷き詰めてある。今回は干し野菜からチャガボとホレウ草。お湯で戻した方が早いんだろうけど、砕けたら嫌だし、蒸気が勿体無いからついでにな。
めんどくさいからって大きめに切ったガジャ芋は15分程度で火が通って、お湯から上げてボウルに移した。結局蒸せきれなかったチャガボとホレウ草の乾物を鍋のお湯の中にぶっ込んだら、ホクホクに仕上がってるガジャ芋を麺棒で潰していく。
「ぐっ、ぐぅ……!」
「大きく、切りすぎちゃったね……!」
「わたし、でんぷん粉混ぜたあとで混ぜるー」
「「ずるいー!」」
一抜けしたミーチが、手をひらひらさせながら鍋でふやかしてる乾物の様子を見に行ったから、仕方なく俺とターチで潰しまくった。
しっかり塊を潰したら、あらかじめ計っておいた、塩・牛乳、そして昨日手作りした自慢のでんぷん粉を少しずつ加えて混ぜていく。もちろん、混ぜるのはミーチ1人でだ。
「うー! 腕疲れるー!」
「「ガンバレー」」
心にも無い応援をしたところで、でんぷん粉たちを投入し終えた。ねるねるガンバレー。おー、もちもちしてきたー! 時間が足りなくてまだ乾燥しきってなかったから不安だったけど、大丈夫っぽいわー。
ガジャ芋生地がいい感じにまとまったら10等分にして、丸めて潰して、5つずつになるように、軽く塩で味付けした潰したチャガボと刻んだホレウ草を包んでいった。あちゃちゃっ! 5歳児の柔らかお手手には、アツアツだぜ。
野菜を包んだ生地をおやきみたいな形に整えたら、中身が分かるように表面にも野菜を貼り付けた。そして、軽く油をひいたフライパンに並べて、かまどの火にくべた。火力がすごいから、直ぐに『ジュ~ッ』って音がしだして、ガジャ芋の芋らしい匂いがしてきた! フライパンが熱くて危ないからって、ひっくり返すのは母ちゃんがやってくれた。ひっくり返したいももちは、しっかりキツネ色に焼き目がついてた!
「「「いいかんじ~!」」」
「本当にね! ティーチ、お父さん呼んできて! 直ぐにお昼ご飯にしちゃいましょう!」
「わかった! 焼きたて食べたいもんな!」
母ちゃんに指示された俺は直ぐに家から飛び出して、家の前で種芋の選別をしてた父ちゃんを呼んできた。そろそろ植える時期かー! いっぱい欲しー!
てきぱきと用意してくれたターチとミーチのおかげで、ダイニングテーブルにはもう皿が並んでた。テーブルの真ん中にはジンニンと大麦のスープの鍋と、平皿に盛られたいももち、“温野菜のガジャ芋包み焼き”が並んでた。
自分の皿2つにスープと包み焼きを味違い1つずつ取って、お手手を合わせて!
「「「いただきまーす!」」」
あー、作るのも食べるのも、楽しかった!
ちなみに味は、素材の味が全開って感じ。ほんのり塩味のガジャ芋生地はもっちもちで、それでいて歯切れがいい。中身のチャガボは甘くて、ホレウ草は草って感じ。俺の中で期待値高くなりすぎてたかな。さてさて、父ちゃんと母ちゃんの反応は~?
「美味しいじゃないか。味がしっかり付いてるし、もっちりしていて。形も大きさも、休憩でつまむにも丁度良さそうだね」
「そうね! 冷めても美味しいならおやつにしてもいいし、まとめて作っておいて、食べる時に焼けば手間が減るわ! ティーチ、ターチ、ミーチ! 新しいレシピの発明、ありがとうね!」
「「「へっへーん!」」」
味の評判も手軽さも、父ちゃん母ちゃんから太鼓判だぜ! 作るときは俺らを呼んでな、母ちゃん! これよりもっと美味しく作るぜ!
お昼ご飯を済ませた後、俺らは皿洗いをしてから麦踏みをやっていた。朝は灰を溶かして濾した水(石鹸替わりでアルカリ性)に浸けた服を踏み踏みしてたから、最近ずっと踏むことばっかしてんね。
「でんぷん粉、上手くいったな! 乾いてなかったけど、問題なく使えたな!」
「だね! いももちの為にでんぷん粉は作りづつけていいし、この実績でクネドリーキやハッシュドポテトにも着手出来るよ!」
「今こうして小麦の手伝いしてるんだもの、小麦粉も分けてくれるに違いないわ!」
反省会というか、希望的観測をし合う会をしてるというか。楽しくって仕方ねぇな!
大雑把な予定では、兄ちゃんは明日か明後日には買ってくる。だから、
①信頼を勝ち取った俺らは明日、父ちゃんから小麦粉を分けてもらうことに成功する。
②兄ちゃんが帰ってくる前にガジャ芋のクネドリーキを試作する。
③反省会して、兄ちゃんが帰ってきたら完璧なクネドリーキを作る!
こんな感じだな!
「なぁなぁターチ! ガジャ芋クネドリーキはどんな料理に合うんだ?」
「小麦粉使えるけど、いももちみたいにもちもちしてんのー?」
「多分、もちもちしてるねー。料理は、お肉のシチュー系が合うんじゃないかなー」
「きっと兄ちゃん、また二角ウサギ持って帰ってきてくれるだろうから、母ちゃんに作ってもらおうぜ!」
「ねぇ! 脱線するんだけど、ウサギの骨からもお出汁って取れるかしら! 取れるなら肉由来のお出汁のスープが飲めるわよね!」
「脱線続きで、そろそろ干し肉作りの時期だよね! もしかしたら兄ちゃん、ウサギよりもおっきい魔獣持ってきたりするかな!」
「「たのしみー!」」
楽しみすぎて、どんどん話がクネドリーキから逸れてくな! 見通す先があるのは、悪くないんじゃねぇの?