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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第二目標! ふわふわパンを作る!
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美味しい目標、立てたぜ!

 いや~、昼寝っていいね! 気持ちがいいし、頭は冴えるし、色々思い出すし!

 俺、ラクドラルドこと、ラックの朝メニューを再現するわ! 目標、20%再現度!


 ハッシュドポテトの他には、ソーセージエッグのグリドルとコーラがいいなぁ。あまじょっぱいの、俺は好きなんだよな。コーングリッツもあるから、イングリッシュマフィンでもいいかも。んっ? むしろ普通のバンズでも良くねぇか? だって今んとこ足りてねぇの、砂糖とバターだろ。おわー、その2つを大量にゲットすんのが大変だわー。

 パティは柔らかくした肉ならなんでもいいとして、問題はコーラだ。あー、どっかに炭酸泉湧いてねぇかなー。無糖炭酸水でもいいや。コーンがあるから、コーン茶も悪くない。


「「「ふわぁ~~~っ」」」


 三つ子揃って、ベッドの上で身体を起こして伸びをする。それから目配せあって、ふふんっと微笑みあった。ふーん? お前らも、なんか思いついたみたいだなぁ!


 お昼寝の後も、麦踏みの手伝いを買って出た。単純に、周りに俺らの会議を聞く耳が無いから。……父ちゃんに褒められて、嬉しかったのも、あるけど。

 小麦畑の畝に3列、左からターチ、俺、ミーチの順に横並びになって、サクサクむぎゅむぎゅ、小麦を踏んでいく。

 お昼まで芋掘りしてた父ちゃんは、今度は自分の藁ゴーレムと一緒にガジャ芋を洗ってる。見渡しても見えない母ちゃんは、家の中を掃除してるんだろう。2人の目が俺らから外れたのを確認して、ターチ、ミーチと顔を見合わせた。


「俺さ、目標できた。ラックの朝メニューの再現する!」

「「おお! いいね!」」

「ひとまずハッシュドポテトをメインにするけどよ、いつかグリドル系とジュースを作るって決めた! ターチとミーチは?」

「私は水飴を見つけるわ!」

「「水飴?」」


 ハツラツとして目標に“水飴”を挙げたのは、ミーチだった。俺から見て右隣の長女は、ムフーッと自慢げに笑っている。


「大麦で思い出したの! 水飴って、大麦麦芽から作られてるんでしょう? 正直言ってそれしか知らないけど、村ではもうウイスキーが作られてるわ。いえ、実際には見たこと無いけれど、中央広場に酒屋があるんだから、間違いない! なら、既に誰かが見つけててもおかしくないってことよ!」

「水飴かぁ。砂糖が塩と比べてもメチャクチャ高いのを考えると、良い目標だな」

「水飴って砂糖のショ糖とは違うから、焼き目が付きづらくて、より白っぽいパンになるしね! うん、とっても良い! 思いついてくれてありがとう、ミーチ!」

「ふっふーん!」


 焼き目付きづらいんだ。でも確かに、水飴でブリュレとか聞いたこと無いもんな。あるかもだけど、あんな水分たっぷりなものが焦げる……?

 甘いものが欲しいだけなら、正直ニンジンでもカボチャでも構わないけれど、色が白くならないからな。黄色くなっちまう。んっ? いやでも、美味そうだな。粉のカサ増しにもなるくね? あーでも、ペーストにするんならジャム替わりでもいいのかー。自然の甘味ジャム。


「誰かがもう見つけてて、市場に出てるんだとしたら、今ウチが買えてないのは単純に高価だからでしょうね。それでもいいの。存在するって事実が大事だから!」

「そうだな。あるんなら、俺らにも再現できるハズだもんな。んで、ターチはどうだ?」

「僕はね、“モルトシロップ”を作ろうと思ってる!」

「「もるとしろっぷ?」」


 なんだそれ、聞いたことねぇや。ミーチと揃って首を捻ったら、ターチは解説してくれた。記憶頼りだから、間違ってるかも知れないと前置きをして。


 モルトシロップとは、砂糖や油脂を使用しないバゲットなどに、

①発酵を助ける為に

②生地の伸張性を増す為に

③色艶を良くし、風味を出す為に 追加されるもの。


 大麦麦芽から出来てるモルトシロップには、“アミラーゼっていうデンプン分解酵素”と、“プロテアーゼっていうタンパク質分解酵素”、そして麦芽糖が入ってるんだって。


 今俺たちが食べてる茶色いパンは、材料が強力粉・水・酵母・塩だけな生地。これじゃ酵母イーストのご飯になる糖分が不足して、発酵が十分に出来ない。一応、小麦粉を製粉した際に損傷したデンプンが、これまた小麦の中のアミラーゼ酵素で分解、糖化(ブドウ糖になること)して、イーストの餌になって、少しは発酵するんだそうだ。でも、損傷デンプンは全体の4%で、圧倒的に少ない。(この世界での製粉技術でも4%なのかは知らん)


 この、アミラーゼでデンプンを分解した時に生地の中に現れるのが、“麦芽糖”。イーストのマルターゼって酵素でブドウ糖になる前のこれを、外部から足しちまおうって話らしい。

 ちなみに、ブドウ糖はイーストのチマーゼって酵素でまた分解されて、アルコールと炭酸ガスが発生して、膨らむんだと。


「ここまでの説明、分かった?」

「「なんとなくー」」

「んー、まとめると、今のパン生地にモルトシロップを入れたら、焼き目がついて、風味が良くなって、ふっくらして美味しくなる!」

「「なるほどー!」」

「これから目標にしてるベーグルも、茹でる時にお湯に混ぜると色艶が良くなるんだ!」

「「めっちゃ大事じゃーん!」」


 その後も、小麦の麦踏みをしながら、そのモルトシロップの作り方をラジオ感覚で聞いてた。説明しながら思い出したらしい、モルトパウダーのことも聞いた。扱いやすさだったり保管のしやすさで言ったらパウダーの方っぽいが……。


「「ロマンって大事だよな!」」

「男の子ねぇ」


 ってことで、シロップの方を目指すぜ! えっと? 大麦を水に浸けて発芽させて、お粥にして、煮詰めるんだっけ?


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