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我が家の食卓革命~転生三つ子が白いパンを焼くまで~  作者: 石磨 輝
第二目標! ふわふわパンを作る!
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白いパンからちょっと寄り道!

 青空高くに薄く雲が広がる、秋晴れの日。つばの広い麦わら帽子を被った俺たち三つ子は、まだ若い小麦の茎をサクサク、ムギュムギュ、踏んでいる。3人横並びになってな。


 イタズラじゃないぜ。父ちゃんに言われて踏んでんだ。これやると、分けつってヤツが増えて、小麦が頑丈になって、収穫量が増えるんだってさ。つまり俺らに回ってくる小麦が増えるってことだ!

 頑張りどころだが、うちの小麦畑はとっても広い。この村全体で収穫出来る小麦の半分が、うちの畑産だから。だから急いだところで果てしない。焦らず、急がず、けれど真面目に踏んでりゃいいさ。

 「村の人にも手伝いをお願いしたら?」って訊いたことあるけど、父ちゃんが滅茶苦茶嫌がるんだよなぁ。だから藁ゴーレムを作れる魔法を学んだんだって。母ちゃんの事が好きすぎて、ほかの男に見せたくないから、だって。軟禁だー。普通に母ちゃん、村の中央に買い物に行くけど。多分、父ちゃんは他人に家へ来て欲しくないんだと思う。



 さて、最初にしては好感触だった、クネドリーキ。それをお披露目したい相手、兄ちゃんが帰ってくるまでにはまだ、時間がある。でも多分もう小麦粉は分けてくれないから、本番までにアイディアを出し合って煮詰めていかないと。あの茹でパン、肉以外で何を中に詰めたら、混ぜ込んだら美味しいかな。そういや、ターチがじゃがいもを練りこむって言ってたな。……。


「ハッシュドポテト、食べてぇなぁ……」

「「おおっ」」

「んっ?」


 クネドリーキを食べた翌日。サクサクと小麦畑で麦踏みをひたすらやりながら、昨日の会議の続きをしてた。そこで出てきた“じゃがいも”に思考が引っ張られて、前世の記憶まで引っ張り出された。んで呟いたら、なんか感心した感じでターチとミーチに驚かれた。どうした?


「いやさ、白いパンも、浄水ろ過器も、クネドリーキも、僕とミーチのわがままじゃん?」

「ターチも何か、わがまま言わないかなーって、思ってたとこなの」

「わがままって……」


 言いだしたのはターチだけど、『白いパンを目標に頑張る』って決めたのは、3人だ。ろ過器もクネドリーキも、その道のりに必要だったから作ったワケで。


「ハッシュドポテトは別に、白いパン作りに関係ないぜ?」

「いいじゃん、寄り道したって!」

「美味しいものはいくら増えたっていいわ!」

「……まぁ、確かに」


 じゃあ、2人に、甘えようかな。


「どうせ、クネドリーキにじゃがいもを入れるのは決まってるし、ついでに茹でて焼いちゃお」

「ティーチ、作り方知ってるの?」

「あぁ、好きで手作りしたこともあるから……。じゃがいも・片栗粉・塩・顆粒コンソメと、揚げ油。揚げ焼き出来れば御の字だなぁ」

「油も貴重品だもんね。いももちみたいに焼く? あ、材料が似たようなものだから、ニョッキも作れそうだね」

「片栗粉ってじゃがいもから作られてるから、頑張れば手に入れられるわよね。……そういえばでんぷんって、アミラーゼって酵素で分解して甘くなるんだったわよね。よく噛んだお米が甘くなるみたいに」

「「お米たべたーい」」


 パンも麺も好きだけど、米もやっぱり好きなんだよなぁ。あぁ、味噌汁も飲みたい。海苔で白米包みたい。玉子焼きも……あ、作れるな。出汁巻きも、オムレツも作れる。鶏を飼っててくれてありがとう、父ちゃん母ちゃん。


「……あんまり高望みしてると、また父ちゃんに詰められるから、なんとか自然な流れで閃いたことにしないと」

「能ある鷹は爪を隠す……ってね!」

「それ使い方合ってる?」


 確か、優れてても能力をひけらかさないって意味だったような。前世の記憶を持ってることが優れてるとは言えねぇし、ひけらかさないんじゃなくって隠してるんだから、ちょっとだけ違ぇかも。

 会議に花を咲かせすぎて、父ちゃんに怒られないうちに、麦踏みに気合を入れ直した。藁ゴーレムちゃんたちが仲間を踏むのを嫌がって出来ない代わりに、俺らが頑張らねぇとな!


 朝から昼までサクサクむぎゅむぎゅ。若い小麦を踏みまくって、母ちゃんに呼ばれて家に帰った。あー、喉渇いた。喋りながらだったから、革袋の水筒、すっかり空っぽになってるんだよね。


 うちでは小麦の他にも、大麦も育ててる。うちの鶏やよその牛、豚に出す飼料として育ててて、別の家では酒造り、ウイスキーの為に作ってるらしい。なんでこんな話をしてんのかっていうと、今俺らが飲んでるのが、麦茶だから。

 出来があんまり良くない大麦を洗って干して、炒って煮出して冷ます。これで麦茶の出来上がり。俺、年がら年中麦茶飲んでるタイプの日本人だったから、安心しちゃう。熱中症予防になるらしいし、煮出すときに水を沸かすから、生水の消毒にもなる。一石二鳥ってわけだ。


「「「ふぅ~」」」

「ふふっ。お手伝いをよく頑張りました。お昼ご飯出来てるわよ」

「「「はーい!」」」


 今日のお昼ご飯は、いつもの蒸しガジャ芋と、ホレウ草入りのチャガボのポタージュ。皮ごと茹でたガジャ芋は、薄い皮が破けて見える黄色みの強い中身が食欲を唆る。オレンジ色のチャガボと炒め玉ギネのポタージュに、濃い緑色のホレウ草が映えている。ホクホクして、とろとろして、あったかくて、美味しい!


 う~ん。動いて、食べて、水浴びしてサッパリしたら、瞼が重たくなってきちゃった。こっくりこっくり船を漕いでたら、父ちゃんに頭撫でられた。


「お昼寝、してきなさい」

「「「うん」」」

「あぁ、それと……麦踏み、ありがとう。助かったよ」

「「どういたしましてー」」」


 へへっ、父ちゃんにお礼行ってもらったから、清々しい気分でベッドに入れたぜ!

 世界よ、また1時間後に~!




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