第一幕.7話 姉
あの日から20日後ついに学園での試験の日がやってきた。
もちろんこれまで勉強を怠ったことはない。前世じゃありえなかったな。
俺の目の前にはとてつもなく大きな門。
流石に祠ほど大きいものではないがそれでも立派だ。
「さて、行きますか。」
目立つからと馬車での送り迎えはお断りした、そのためここまで徒歩である。
しかしちとミスった。
レオル領から王都までの距離はおよそ15kmほどで頑張らなくても体力があるなら歩いて行ける。
だが王都から学園までが長かった。歩いてみた感じ約50km(感覚50、本来5)はあるだろう。
流石に試験当日遅刻はまずいと身体強化の魔法をフルで使い1時間で到着した。
ちなみにヴァルスを抱えながらである。
学園内を歩いて回る時間が欲しかったがテスト後でも大丈夫だろう。
まっすぐ受付らしき場所に向かう。
「試験を受けに来ました。」
「はい、それでは受験票に番号と名前年齢をお書きください。」
家で使っている紙の質とは違う紙で少し驚愕したのは内緒。
そのまま自分の名前と番号を書いた紙を提出する。
「はい、それでは読み上げさせていただきますね。番号0929-37、氏名はアルレルト・グレア、でよろしいですね?」
「はい、大丈夫です。」
俺の名前を受付の人が呼んだ瞬間、後ろに並んでいる受験生たちがざわつく、何かあったのだろうか。
「使役しているモンスターがいるのですが」
「そのまま入っていただいて大丈夫ですよ。」
ヴァルスは相変わらずウサギの姿だ。(魔力効率が楽)って理由で気に入ったらしい。
先程のざわつきの理由が自分だとも知らず、そのまま学園内の中心部巨大な庭へと進む。
受験生は皆ここに集められているようだ。
知ってる顔がいるわけもないと目立たぬように後ろの方で立っていようと考えた時、
「あ! アルくん! 久しぶり!」
「……?」
声をかけられた
えっと誰だっけ、とは口が裂けても言えない。たしか……ほんとにわからん。
「あーわかってないなー? リズだよ! リズ・アーバンディ!」
「……リズ⁈」
リズ・アーバンディ
4年に一度開催される国の貴族が集められるパーティーの時に彼女と出会った。
天真爛漫、元気の塊のような彼女はあの時から眩しかったことを覚えている。
「リズもこの学校なのか。」
「うん! アルくんがここに進むって話も聞いてたし、それに騎士になるならここが一番早道だからね!」
「それをいうなら近道な」
「そう! それ!」
相変わらず元気いっぱいだこと、
「ところでアルくん。その子何?」
そうだった、
「こいつはヴァルス。使役したんだ。」
(おい、使役などされた覚えはないぞ)まあまあ、
「へー! 可愛い〜! ねえねえ、触っていい? 触らせて!」
いいか?(まー良いぞ。ただしあとで肉)はいはい
「はい、結構重いよ。」
「わ〜! やわらか〜もふもふ〜最高〜」
気持ちは大いにわかる。が、そろそろ人が集まってきているから話が聞こえるところまで移りたい。
「リズ、少し場所を移動しよう。ここだとあとから入ってくる人たちに巻き込まれちゃうから。」
「ん? うん! わかった!」
丁度ど真ん中まで移動した俺たち2人と1羽(羽で呼ぶな!)は移動したタイミングで災難に巻き込まれる。
「おい、俺はシュトゥルム卿の息子だぞ。道を開けろ!」
ガタイのいいやつが自分の前にいる受験生に声を荒げている。
この学校では受験をする際も貴族はその家紋をつけて出席しなければならない。
ちなみに王家は獅子うちの家系の家紋はグリフォン、リズの家紋はムササビである。
そしてシュトゥルム卿の家紋は蛇である。
奴がつけているブローチには確かに蛇が掘られている。
めんどくさいが周りに注意する気はなさそうだし……
「リズ少し外すね」
「え? アルくん?」
ヴァルス、こい(やるのか?)注意する程度だ。
俺は声を荒げるやつの目の前にさりげなく立つ。
「なんだお前、邪魔だぞどけ!」
俺は今日、つけている家紋のブローチが隠れるようにコートを着てきている。
目立ちたくないからもあるが一番は颯爽と現れる名家の子ってかっこいいと思ったからである。
「おい、聞いてんのか! 俺は10歳で魔法を使えたんだぞ。お前の顔に[火弾]を打ち込んでやろうか!」
俺はめんどくさそうにコートのポッケから手を出し、身体強化の魔法を構築する
「お前、誰に口聞いてるのかわかってるのか?」
こういうやつには少し強く行ったほうがいい……と思う、ので
よ〜く見えるようにグリフォンのブローチを付け直し魔法を展開する。
「そんなに喧嘩をしたいなら……買ってやらんこともないぞ?」
↑普段なら絶対言わないけど言ってみたいセリフ俺的No.1
「あれって、グレア家の家紋だよな。」
「じゃああの子が噂のグレアさんの子ってこと⁉︎」
よしよし、周りが噂してくれるから気づいていなくてもわかるだろ。
「な、お前があのアルレルト・グレア⁈」
「ああそうだ。なんだったか? 10歳で魔法を使えて貴族の子だから無礼はなんでも許されるんだったか?」(そこまでは言ってないぞ)
「なら、俺はお前をボコボコにしてもいいってことだよな、」
前世が庶民だったこともあってこの手のやつは嫌いなんでな、返事次第では……
「お、おぼえてやがれよ!」
……逃げちゃった
「アルくんすご〜い! 戦わなくても勝っちゃったね!」
良いことなのかどうか……
「皆元気そうだな。楽しそうなところ悪いが前に注目してくれるかい?」
一番最前列に設置された朝礼台と言えるのかわからん台の上に人影が現れる。
「私はこの学校の校長であり王国第三騎士団団長でもある。さあ、名前がわかるものは挙手!」
そこにいたのは俺からすればよーくみたことのある人だった。
「はいはい!」
元気に手をあげるのはリズである。
「っリズ! ちょっとま……」
「アルくんのお姉さんです!」
言うと思ったよ! この子は空気読めないから!
壇上の女性はニヤリと笑い"俺の"目の前まで降りてくる。
「皆彼女に拍手! そうその通り私の名は……」
この人こそ俺の姉でありグレア家の長女である……
「セレス・グレアだ!」
いよいよ学園です
どう考えても前置きが長い……
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