第二幕.6話 冒険者ギルド
遅くなりました! 長くなりました! 許してください!
「帰り際に冒険者資格をとっていけ、そしたら錬金術を教えてやろう。」
とグラハムさんに言われたのでセシリア先生と 冒険者組合へ向かう。
「思っていたより綺麗ですね。」
俺が知ってるギルドってもうちょっと野蛮というか趣があるというか、
「当たり前でしょ、国が最初に助けを求める場所だもの、そこがボロい屋敷のようでは、示しがつかないでしょう。」
ここはどちらかというと施設、といった感じで、真っ白の外壁に大きな窓がついてる、扉も両開きの大きな扉だ。
「失礼します。」
扉を開けて中に入る、中が広いため声は聞こえてなさそうだが扉が開いたことで奥のカウンターに並ぶ受付嬢が何人かこちらを向く。
「どうしたの、行くわよ。」
先へと進む先生の後ろをアヒルの子のようについていく。
「こんにちは、ご用件はなんでしょう。」
俺は前に出て用件を述べる
「冒険者資格の発行をお願いしたいんですけど。」
「承知いたしました。少々お時間をいただくことになりますが、よろしいでしょうか。」
そういえば先生、まだお昼食べてないっていってたな、俺も食べてないし。
横からセシリア先生が受付嬢へ声をかける
「冒険者資格はどれくらいで発行できるのかしら?」
「30分ほどでカードが完成し、それからランク分けのテスト等を行いますので、今から40分ほどでお戻りいただければ。」
時間は十分にありそう
「でしたら先生、一度食事をとりませんか」
セシリア先生は少し考え、口を開く
「そうね、近くにいい店知ってるし、食べてからまた来ましょうか。」
「わかりました。すいません、40分後にまた戻ります。」
「了解しました。戻られましたら三番カウンターにおります、ルインにお声がけください。」
話を済ませ、セシリア先生と共に外に出る。
「少し歩いても大丈夫かしら?」
「はい、大丈夫です。」
ギルド前の大通りを抜け向かいの路地に入り、右左と進み、5分ほど歩いて到着したのは《 青芒華》という店。
「ここは、」
「私がよく 師と来ていたところよ、とりあえず入りましょ」
扉を開けると、中は小さなバーのようになっていて、1人お爺さんがカウンターの向こうに立っている
「マスター、お久しぶり」
「あぁ、セシリア様でしたか。どうぞこちらの席へ。……そちらの方は?」
「私の生徒よ、」
「貴方が教師ですか、やはり師弟とは似るものなのでしょうかね」
「やめてちょうだい、 師は関係ないわ。」
セシリア先生と俺の前へ水と氷が入ったグラスが出される。
「 師ですか、どちらかというと家族のようでしたけれど。さ、こちらメニューでございます。」
「ありがとうございます」
俺の前へとメニューを差し出すとマスターは後ろを向き、新しくグラスを取り出す。
「セシリア先生、何かオススメはありますか?」
紫の瞳がこちらへと向く
「そうね、ツォリマのアヒージョとか、後はリルのパイかしら」
ツォリマ、リル、どっちも今が旬の食材だ。家でもよく出てたなー、想像するだけで美味しそう。
「じゃあツォリマのアヒージョとバゲットを一つ」
「かしこまりました。」
注文を取られていないのに、セシリア先生は何も言わずに水を飲む。
10分ほどすると、料理が出てきた。
「お待たせしました。こちらツォリマのアヒージョとバゲット、ラビルとチリの甘辛ソースでございます。どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。」
アヒージョ、魚の周りにはマッシュルームとミニトマトのような野菜、上にはハーブを添えられ、良い香りが先ほどからただよっている。
アヒージョはかなり時間がかかるものだと思ってたんだが、魔法があるから料理の時間も短縮されてるのかな。
先生にはいつも頼んでいたのであろうラビルとチリの甘辛ソースが出てきた。ウサギ型の魔物、ラビルを焼いた上に特製のチリソースをかけたもの、ソースが光を反射し、とても美味しそうだ。
「それじゃ、いただきます。」
「貴方、東洋の文化で食前の感謝をするのね。」
「……やっぱりやめた方がいいですかね、」
「別にいいと思うわよ、私も使おうかしら。いただきます」
俺は料理に向き、ツォリマと呼ばれた魚にフォークを刺し、ナイフを通す。ツォリマは鯛のような魚だが、鯛よりもちもちとした食感があり、身は肉のようなピンク色のものが多い。多いというのは食べるもので色が変わるからなのだが、
「あー、んむ」
マッシュルームとオリーブの香りがツォリマに染み込み、口の中で広がる。
「〜〜ん! 美味い! とっても美味しいです! ツォリマに染みたオリーブとマッシュルームの香り、付け合わせの野菜は程よく酸味があってスルスルと食べれて。」
「お褒めに預かり光栄でございます。そちらの野菜はメトンと呼ばれております。大きいものは甘みが強い品種で春が旬、小さいものは酸味があり夏が旬となっております。ちょうど今ごろ、どちらのメトンも良いものが市場に出回るころです。」
隣のセシリア先生に目をやる。一心に肉を切り、口に運ぶ。彼女のその動きだけでどれだけ料理が美味しいのか伝わってくる。
残りをバゲットに乗せたり、つけたりし、完食する頃には20分ほど経っていた。
「セシリア先生、そろそろ戻らないと」
「あら、そうね、ありがとうマスターご馳走様。お会計は、」
「今回はよろしいです。その代わり、また食事をとりにきて、話を聞かせてください。その時は代金は頂きますがね。」
「……そう、ありがとう。また来るわ。」
マスターへ頭を下げ店を出る。
「さっきと同じ道だと大通りに出てしまうから、時間を取られる可能性があるわね、」
セシリア先生が杖を 召喚すると俺と先生の周りに紫の結晶が浮遊する。
「掴まって、」
セシリア先生が差し出した手を取ると周りの結晶が俺たちを中心にして回り始める。
「〔 指示[ 座標転移]〕〔 実行〕」
瞬きをすると、ギルドの前にいた。
「今のって、転移魔法ですか!」
俺も使えるが、ここまで細かく座標を指定して跳ぶなんてできない。
「ええそうよ、教えてほしい?」
「そりゃそうですよ!」
「まだ学園生に戻ってないから、駄目よ。」
そういいながらギルドに入ると奥から何やら騒ぎ声が聞こえる。
「なんでしょうかね、」
「何かあったみたいね。」
「トラブルですかね?」
「さあ?」
「テメェ、いい加減にしろよ! いくらダンジョン内でなら生き返れるといってもなぁ、死ぬ時は痛えし苦しいんだよ!」
獣の皮を身に纏った男が、そばにいた眼鏡をかけた男に怒鳴りつける。眼鏡男の周りには2人、黒い服を着た男達。
「申し訳ない、といっているでしょう。わたしはただあなた方がちゃんと適した仕事をできているか確認するために、」
「試験のためにBランクのミノタウロスを八層から三層まで連れてきたってか! このギルドにいる奴らのギルドランクは平均してもDかCだ! あんなのが上層階にいたら、どうなるかわかるだろ! 何人新人が巻き込まれたと思ってやがる! 駆け出しの時期がどれだけ大切か、わかってんのか!」
昇格試験でも行なっていたのだろう。ダンジョン内で行なって、試験官が適正以上のモンスターを初心者が入れるエリアに連れてきた、ってとこだな。
「うるさいですねぇ、」
「なんだとお前!」
眼鏡をかけた男がくいと眼鏡をあげるのと同時に、目の前にいた男が吹き飛ばされ、テーブルがあるフロア、待合場へ吹き飛ばされる。メガネ男の横についていた黒服が、男を殴り飛ばしたのだ。
眼鏡は歩いて男の前まで行くと、顔を踏みつけ言う
「いいですか? 私が試験官である以上、私が絶対です。文句を言うのでしたら、貴方のランクは下げさせていただきますよ。」
ただ殴るだけじゃあそこまでは吹っ飛ばないだろう、魔力が動く感じは無かったし、おそらく"気"ってやつだな。魔力とは違う"気力"ってのを使うやつだったはず。
(ああいうのも使えたら楽しいだろうなぁ)と思いながらもこの惨状には流石に顔を顰める
ふと横を見ると、セシリア先生がちょうど杖を召喚したところだった
「どうしたんですか?」
「私の大事な休み時間が無駄になる前に帰ろうと思って。貴方はちゃんと冒険者資格、貰ってくるのよ。」
先生はまたもや結晶を操り[ 座標転移]を使って消えた。
……めんどくさくて逃げたな、あれが落ち着かなきゃ受け取れないってのに。
「……仕方ないか、」
俺は眼鏡男と毛皮男の間に立ち塞がる
「もとより貴方には期待など……、なんですか貴方、邪魔ですよ」
「坊主、引っ込んでろ、これは俺が片付けなきゃいけねぇ……」
毛皮男が体を起こそうとするのを左手で静止しながら[回復]をかけ、眼鏡男に向き合う。
「途中からしか聞いてなかったけど、あなた、恥ずかしくないんですか? 一方的に権力を振り翳して、脅して、自分が絶対だとか……子供じゃないんですから。」
眼鏡男は俺の言葉にイラッとしたのか、しかしニヤリと笑うと
「貴方、私が誰かわかっているのですか? 私の言葉一つで貴方の冒険者としての資格を剥奪することも……」
態度にイラっときた俺は、空いた右手で[身体強化]をかけ、そのままグーを作って眼鏡男の顔を殴り飛ばす。
黒服2人を巻き込んで反対の壁まで飛んだ眼鏡を見て、
「残念だけど、あなたのことは知りませんし、まだ冒険者でもないのでそのおどしは聞きません。冒険者じゃないってのがどういうことを指してるかは、わかりますよね。」
俺は眼鏡男に向けて[火炎]の魔法陣を展開する。
「今すぐ出ていってください、貴方が誰であろうと、今この場の空気を悪くしているのが貴方なのは確かです。」
「ひっ……い、い行くぞ、、。」
眼鏡男は黒服の男2人に肩を預けて出ていった。
「坊主、助かった感謝する。俺はラブロ、B級冒険者だ。面倒ごとに突っ込ませて、悪かったな。」
毛皮男、ラブロさんがこちらへ手を差し出す。
「アルレルトです。こちらこそ出しゃばってしまって、ごめんなさい。」
俺は握手に応じそのまま謝罪する。
眼鏡がギルドを出てから、周りで見ていた冒険者の方々が声をかけてくださり、なんか、すごい褒められた。
「なに、謝罪はいらねぇぜ。あいつが全部悪いんだからな。」
「さっきの眼鏡はなんなんですか?」
「あれは組合本部から来た審査官だ。この学園都市のギルドは本部から嫌われててな。ってそんなことどうでもいい、お前さん強いな! まだ学生だろ。」
「はい。でもまだまだですよ、経験も浅いですし。あ、冒険者資格だけ受け取らせてください。」
俺は人をかき分け、三番カウンター、ルインと呼ばれていた人の前に立つ。
「アルレルトさんですね。こちらの件に巻き込んでしまい申し訳ありません。お約束の冒険者資格になります。先ほどの件はギルド長にお伝えさせていただいても?」
「あ、はい、大丈夫ですよ。」
めっちゃ可愛い人、俺と同じくらいの年齢だろうけど、なんか機械的だな。と思いながら冒険者資格を受け取りポケットに仕舞い込む。とりあえず言われたことは達成したから帰って基礎魔法構築の研究を……
「あっ、」
「どうなさりました?」
「あの、このまま試験受けなきゃなんですよね、試験前に依頼を受けることってできますか?」
「可能です。アルレルトさんはまだ試験をされていませんが、先ほどの券がございますので、試験が免除される可能性もあるかと、そうでなくとも級がなくてもできる依頼はございますので。」
それでも基礎からコツコツやっていかなきゃだよな。
「じゃあ試験の前にできそうな依頼を……」
「ちょっと待ってくれる?」
ふとカウンターの中から声が聞こえ、ルインさんが振り返る。
「ギルド長、」
「キミがアルレルトだね、ようこそ冒険者ギルドへ、そして同時に、先ほどの件に感謝を。」
奥から出てきたのはいかついおっさんではなく、ヨボヨボのおじいちゃんおばあちゃんでもなく。
「私は冒険者ギルドフラグレオ地区の長をしている。フェンディオと言う、よろしく頼む。」
白銀の耳と尾を持つ男性であった。
……しっぽ、触っちゃダメかな。
面白い!
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