第二幕.4話 再会
珍しき休日投稿です
「!」
息を呑む、まだ生きている。だが、それを否定するかのように身体はその痛みを訴えている。
ここはどこだ。何もわからない中、自分が寝ていたであろうベッドに座り込む。外は月が一つ、空を照らしている。
そのまま窓の外を眺めていると誰かが部屋にやってくる。
「あら、お目覚め?」
「……セシリア先生、」
後ろを振り向くと、そこには小柄な魔法使いが、少し冷えたティーカップを持って立っていた。
「それじゃ何が起きたか、説明してもらえるかしら?」
セシリア先生曰く、俺に初めて出会った際能力を付与してくれていたらしい。なんでも、校長の指示らしいが。
「私の能力の発動条件は知っているでしょう? 一応このことは校長に伝えなきゃいけないから、覚えてることだけでいいから教えてちょうだい。」
俺は事の顛末を話した。3人がいなかった事、3号棟の障壁に穴があったこと、そこに入ったこと、そして、"魔族"と出会い殺された事。
「そう、なるほどね。魔族は魔法が効かない、貴方にとっては最悪の敵ね。一応体の隅々、見て治したから大丈夫だと思うけど、不調があったら言って、隣の部屋にいるから。」
彼女が扉のない入り口から出ていくのを見てここがセシリア先生の部屋の一室、書斎だと気づき、やっと安心感を感じた。
俺は疲労の限界の身体を休ませることにした。
「アル、アル!」
マリス、
「アルくん! 助けて、アルくん!」
リズ、? 何を言って、
「アル! 頼む! アル!」
セルク、なんで、どうしてみんな
「アル! お願い、私たちを……」
「「「……殺して!!」」」
おれをそんな目で見るの?
「……」
あぁ、最悪な目覚めだ。
「おはよう。ずいぶんうなされていたわね。」
セシリア先生が朝食を持って入ってくる。俺は体を起こしながら頭の中から先ほどの夢を振り払う。
「少し……、いえ、やっぱりなんでもないです。そういえば、マルタさんには、」
「ちゃんと伝えておいたわ、全部ね。「わかった」って言ってたわ。あとあの3人、あの日は中庭に居たみたいよ? あの後シア・ルウェンティが情報提供してくれたわ。」
何事もなかったのならよかった。シアさんにも礼を言わなきゃな。
「あ、それと。3号棟で遭遇したって魔族、たしかノーティス、だったかしら。それらしき魔力は感知できたけれど、綺麗に逃げられたわ。障壁の穴はあいつの仕業っぽいから安心してちょうだい。」
「……いろいろとありがとうございます。セシリア先生」
「ええ、感謝しなさい。それじゃ、私は仕事あるから出るけど。部屋にある書物なら好きに読んでいいわ。あと、一番奥の部屋には入らないこと、寝室だから。」
セシリア先生が書斎をでて、外の扉が閉まる音を聞く。
お世辞にも美味しいとは言い難い彼女の朝食に感謝しながら平らげ、窓の外を見る。
あの時、俺は何もできなかった。
迫り来る死をただ受け入れることしかできなかった。
……それでいいのか、俺は何のために、
俺はふと思い立って書斎にある本を眺める。
かなりの量の本が積まれているるが、どれも綺麗な状態を保っている。
本棚に収まっている一冊を抜き取る。
「魔法力学第三時書〜時の魔術編〜、これってもう絶版になった魔法書じゃ! どこの図書館にもないレア物、流石セシリア先生。」
テンションが上がる。
開いて中を見るが、学園の一年生が到底理解できる内容ではない、だが俺には【鑑定】がある。
「魔法陣自体を鑑定すれば、仕組みぐらいは理解でき……」
俺が鑑定を発動した瞬間、魔法書が光り、閃光が俺の手に走る。
「いっった!! 防御魔法⁈ いや、感覚的には[反発]か、痛ぇ。」
重要資料ぐらいにしかかかってないと思ってたから、油断したな。
「一旦しまうか、他の本〜」
俺が再び本棚に手を伸ばすと一冊の本が落ちてくる。そのまま俺の後頭部に角が当たる。
「いっっー! ほぼ何もしてないのに何でこんなボロボロになってんだ俺は!」
理不尽な痛みにキレながら落ちてきた本を開く。
「基礎魔法教科書、家にもあったからほぼほぼ使えるんだけど、」
初級編からもう一回見てみるか。
改めて読むと魔法全てに似たような魔法陣があることに気づいた。この魔法陣が最も複雑な構成で作られている。
「これ、この陣なくても使えるんじゃ、」
「えぇ、何ならない方が早いし強いわ」
後ろから急に声をかけられびっくりして振り返る。
「せ、セシリア先生、何で」
「何でも何も、お昼だもの。貴方、放置してたら本の虫になりそうだし、少しぐらい体を動かしましょ。」
気づけばもうお昼だったらしい、どれだけ本読んでたんだ俺は。
半ば強制的に外へと連れ出されるが、行き先は不明だ。
「あの、先生、どこに向かってるんですか?」
「リーグレット・グラハム、貴方も知ってるわね?」
「はい、一回だけ会ったこともあります。」
「そう、なら話は早いわ、あれの店には行ったことあるでしょう? いくら馬鹿なあれでも、物作りと錬金術の腕だけはいつまで経っても衰えない。ま、仕事の話をしにいくのよ。」
「それ、俺いく必要あります?」
「当たり前じゃない、貴方にも関係あるもの。」
彼女が杖を振ると紫の結晶欠片が浮かび、円を作り出す。
「これは、[門]ですか?」
「ええ、魔力同士を繋げることで道を作っているのよ。さ、行きましょ」
「おう、来たな」
「グラハムさん、お久しぶりです。」
「そんな経ってねぇけどな」
「リーグレット、例の物、」
「はいはい、相変わらずフラウェイさんは気が速えな、話す時間ぐらいくれてもいいだろってな、」
グラハムさんが奥に入って物とやらを持ってくる。
「これって、柄?」
「こいつは流れ物だ、"漂流物"とかっても呼ぶな。」
「この世界では、見たこともないものが流れ着くことがあるのよ、それを"漂流物"と呼ぶの。錬金術によって復元、又は再現されているんだけれど、」
「こいつは訳ありでな、触るだけで魔力を吸われちまう。一端の鍛治氏じゃまず扱えねぇものだ。王国の大魔導師とやらが見つけたんだがたった1分持っただけでぶっ倒れちまったって話もある」
「それが俺と何の関係が」
「貴方にこれを渡すわ、」
「え、無理ですよ! 俺は錬金術とか使えませんし、それにそんな魔力があるとも、」
「安心しろ、修復自体は終わってる。こいつはこれが"今の状態"の正しい姿なんだ。」
今の状態、
「それに、貴方の魔力は私から見ても異常なのよ。」
「異常?」
「えぇ、ざっと私の10いや、20倍はあると思うわ」
「……まあまずは持ってみろ、本題はその後にある」
俺は意を決して柄を握る、自分の中から莫大な魔力が減ると同時に鍔から刀身が生成され始める。
「これって、」
「うん、いいじゃない」
「やっぱ成功したな。坊主、その漂流物を俺とフラウェイはこう名付けた、《アスカロン》ってな」
「アスカロン……」
それは、刀ではなく大剣に近い、腹が広く、柄を包むような形で刀身が生成されている。
「……ちょいと吸われすぎだな、そいつは術式が施された魔力剣ってやつでな、そいつの術式は刀身を出すために魔力を吸う、代わりに使用者に一定時間の体力、魔力補正をつけるって代物だ。あと、こっちでちょっといじって刃の長さを自由に変えれるようにしてある。ま、その分魔力も吸われるがな。」
「リーグレット、裏貸しなさい」
「おうよ。坊主、試し切りするだろ?」
二人についていき小さな庭へと出る。
「路地の中にあるのに庭があるんですね」
「ここはリーグレットが作った境界内よ。手頃な練習場を作る魔法を魔道具に組み込んだ、的なやつだったはず。」
そんな曖昧な、
「坊主、とりあえずは模擬専用の藁からだ、」
「この子、模擬刀でそれが切れるから。あんたが前作ってたやつにしなさい。」
「え〜あれ高いんだけどなぁ、仕方ない。坊主、……全力でやれよ。」
「え、」
グラハムさんがポケットから鍵を取り出す。そしてそれを地面に刺し、回した。
「さ、アルレルト君。王国が誇る最高の錬金術師、リーグレット・グラハムが作りし最高傑作だ、とくと味わってくれたまえ」
地面に魔法陣が現れると光を放ちながら一つの扉を生成する。扉が開くと中から3mほどの機械が現れる。
「これは、機械人形ってやつですか?」
「いいえ、あれは魔法制御型自立思考素体、通称ゴーレムよ。」
アスカロン、イメージはゼ◯ブレのモナド
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