第二幕.1話 いただきますと大掃除
第二幕開幕でございます!
例に漏れず修正しまくる可能性があります……
「ただいまー」
「アルくん遅い!」
俺がグラハムの店から帰るとリズに説教された
「一応18:00前には帰ってきたんだけど……」
「17時59分は18:00前とはいえないのー!」
「ご、ごめんて」
俺がボットの様にごめんを繰り返しているとセルクとマリスが玄関奥から出て来る
「どこまで行ってたんだよ」
「ほんと、無事に帰ってきたから良かったけど」
小言を言われていると二人が出てきた所からマルタさんが出てきた
「はいはい、あんたたち戻って手を動かしな。マリスとリズは食事準備だよ、セルク、あんたは薪割ってきな。……さて、」
指示を出し切ったマルタさんがこちらを見る
ガッチリと両肩に手をかけ、にこやかに笑う
「あ、あの」
「アルレルト、顔を知っていて話したことがあるとは言ってもねぇ? 初日から仕事をしないのはダメじゃないか。えぇ?」
「は、はい、その通りです」
怖い! マルタさん体でかいししっかりしてるから余計怖、って肩痛い痛い! 力加わりすぎ!
「まーいい、あんたには3号棟方面にある小屋を掃除してもらうよ」
「小屋? あ、あのぽつんと立ってる小屋ですか?」
「そうさ。あそこの掃除が終われば小屋を自由に使わせてやらんこともないよ?」
あの小屋の中一回見たんだが、正直に言ってめちゃくちゃ気になるものがいっぱいだった。何か見つけられていない掘り出し物があるかもしれないし何より……
魔法実験ができる場所があるとありがたい!
「わかりました、やります。」
「よしきた。んまでも今日は流石に時間が厳しいからね、セルクの手伝いをしてきな。」
外で薪を割るセルクに追加で薪を持っていく。
セルクはまだ薪があることに絶望していた。
「さて、」
夕食をみんなと共に食べた後、部屋に戻り残りの掃除に取り掛かる
今の所は壁や床の木材が一新できれば良いと思いつつ、窓を開け布団を外に出し叩く。時間は19:00ほどなため響くとうるさい。布団を部屋に戻し、マットレスを魔法で綺麗にして布団をかける。天井についた蜘蛛の巣や埃を払い、
「一旦これでいいかな」
全て魔法済ませれば良いことなのだが、布団はなんとなく自分の手でやりたかったのだ
一通り部屋の掃除を行いマシになったため少しの間自由時間である。
「久しぶりにやってみるか」
手のひらに魔力を集中させ、両掌の上に魔力球と呼ばれるものを作り維持し続けるトレーニングだ、ヴァルスに会う前はよくやっていた。ヴァルスとあってからはやろうとすると毎回「死ぬ気か!」と止められていた。なんでも体の中にある魔力線を一気に細くしてるらしく、一歩間違えると四肢が爆散して死ぬらしい。
これをやっていたからこそ魔力の操作が楽になっているのも事実なためやりたいのだが……と思っていたので久しぶりにやる。
ちょうどヴァルスは寝ているのでこっそりと準備する。坐禅を組んで魔力を手に集め始める、ゆっくりと魔力を練り、少しずつ体全体から放出する。青白い魔力が俺に纏わりつき、そして掌へ集まっていく。これを約10分ほど行う。
ちょうど5分ほど経ったその時扉の方に気配を感じ、振り向く
「あ、ごめんなさいアル、邪魔をしたかしら?」
扉の方を向くとマリスがいた
「いや、別に大丈夫だけど、何か用事?」
「いえ、模擬戦をつけてもらおうと思ったんだけれど……」
マリスは俺の姿勢的に精神統一でもしてるのだと思っているだろう、
「暇だったし、いいよ」
寮はマルタさんがいる1号棟その右後ろに2号棟またその右後ろに3号棟、1号棟左後ろに4号棟となっており、それぞれが渡り廊下でつながっている。
寮で囲われた真ん中には運動場があり自由に使うことを許可されている。
「この時間だと人もいないな」
「それはそうよ、何より寮に来る人が極端に少ないもの」
確かに、と思いつつ模擬刀を生成する
「模擬刀でやるの?」
「え、なんで?」
俺が模擬刀を構えようとすると、普段から使っている剣、《氷水剣 シャリオット》をマリスが構えた
「私は全力でやるわよ」
彼女が魔力を纏うと、周囲の空気が冷え、息が白くなる
「"稽古"とかじゃなくて本当に"模擬戦"がご所望なようで」
俺は生成した剣を少しずつ刀の形へ変える
「打ち込んでこい、5分間の内に一本取れればそっちの勝ちだ。最初から《氷気解放》を使っていいぞ」
俺はうっすらと魔力を纏い、[身体強化]をかける
「いくわよっ!」
最初から《氷気解放》を使い斬撃一つ一つに氷の魔力を纏わせてくる。剣筋はとても綺麗で見惚れてしまう。
振りかぶり、切り上げ、横薙ぎ、そして突き、一つ一つが洗練され、隙がない、
2分ほど打ち込みを受けているが、剣術に関しては俺では到底及ばないものがあった。
だが……
「せっかくの氷気がただ流してるだけになってるぞ、」
俺は左手に魔力を込め魔力球を作ると、マリスが纏う氷気の僅かな揺らぎにぶつける
「なっ」
纏った魔力が剥がれ、意識が戦闘から薄れた瞬間足を払い、尻餅をついた彼女の首へ向け突きを放つ
「チェック」
寸止めした刀を崩しながらマリスへ手を差し伸べる
「打ち込んでこいって言ったじゃない……」
「こっちからも仕掛けないと、ただの稽古になっちゃうだろ?」
「正しいけど……そうゆうとこ、直した方がいいわよ、絶対。」
彼女は清々しい顔をして手を掴んだ
「そういや、なんで部屋の前まで来て声かけなかったんだ?」
マリスが部屋の前に来て俺に声をかけるまで体感だが一分ほどあった
「それは、アルがしてた魔力操作に見惚れてたのよ。あそこまで綺麗に魔力をコントロールできる人は少ないもの。」
「まーなんだ、 ありがとう」
少し照れくさい
「……あなたなら」
「ん? なんか言った?」
「いえ、何も」
そして、同時に彼女が零した言葉に気づかなかった
「起きてー!」
翌朝、リズの声によって起こされる
「あぁ、おはよう、リズ……」
「はいはい、さっさとお顔洗ってくる! ご飯の準備もー出来てるよ!」
何故朝からあれほどエネルギーがあるのだろう、もはや七不思議だ
「くわぁぁ」
「お、おはようヴァルス」
「うむ、」
一応毛布はかけたが机の上で寝させてしまった、ベッドぐらいは用意してやんなきゃな
服を着替える、いつもの制服ではなく私服に身を包む、渡り廊下を抜け1号棟1階へ向かう。
「おはようございますマルタさん。」
「おはようさん」
「お、アル! おは!」
ここにもエネルギーの塊がいた……
「お前もリズも、朝からよくそんな元気あるよな」
「底なしの元気だけが俺らの取り柄だからな!」
ドヤ顔で言うなバカ
「おはよう。マルタさん、おはようございます」
マリスも降りてきて4人揃うと、それぞれが朝食を持ち、席につく
マルタさんも共に席につき
「それじゃみんな、手を合わせて。神のご加護があらんことを」
「「「神のご加護があらんことを」」」
「いただきます」
「アル、いただきますってなんだ?」
あ、しくった、18年の癖が
「東洋の国で食事の際に感謝を表す言葉よ。教会で食事前に祈りを捧げるでしょ? あれと同じよ。」
よかった……救われた
「マリスちゃん流石! 知識力はアルくんにも勝るもんね!」
「なんでリズが自慢してるんだよ……」
食事を済ますと運動場へ出る。転生する前はろくに運動などしなかったが、今は逆に運動するか、魔法を研究するか、ぐらいしか楽しみがない。ありがたいんだけどね。
食後に軽めのランニング、素振り、部屋に戻って魔力制御、これが毎朝のルーティンになっている。
「さてと、始めますか」
一通りこなした後マルタさんに呼ばれていたため1号棟1階へ向かう。
「お待たせしましたマルタさん」
「お、やっときたね。そんじゃ早速案内しようか」
「案内?」
「言っただろ? "小屋"を任せるって」
寮生活初の仕事が始まった
面白い!
続きが気になる!
と少しでも、本当に少しでも思われましたら
ポイント評価欄をMAXに!
【★★★★★】
ブックマーク登録、いいねもよければ
よろしくお願いします!