第一幕.13話 罰則
「しっかし派手だなー」
「悪かったわね、出力調節が下手で」
「とりあえず凍ってるけどさ……これどうすんの?」
「ちゃんと考えてるさ」
とりあえず《赤炎の血鎌》は回収したい。
「リズ、ちゃんと鞄持ってるよね?」
「うん! 魔法鞄持ってきてて良かったよ〜」
魔法鞄、販売が許可されている魔道具の一種で、中に[領域]と言う魔法を編み込んだものだ。[領域]の習得はかなり難しいらしく一般的に魔法鞄を買うことが推奨されているらしい。
俺も買おっかな。
「とりあえず鎌も回収するから入れてもらえる?」
「おっけー!」
リズが背中に背負っているカバンを下ろして口を開ける
「うい!」
「よし、マリス少しずつ解除してくれ」
「ほんと、気をつけてよね」
徐々に氷が剥がれていく。死神の肩が見えたところで俺が模倣した鎌で切りつける。
「えーっと、何だっけ、"奪"だっけ?」
死神から魔力が消え、代わりに俺たちに魔力が戻る。
「よし、」
「ねぇ、ほんとに全部解除していいの?」
「あぁ、策はあるしな」
「戦うなら俺も参加させろ!」
「セルクは休んでろ」
そして遂に死神の氷が全て剥がれ落ちた。
「さて、みんなは後ろで待機しててくれ。」
3人を下がらせ、[生成]を発動、反りがある片刄の剣"刀"、それを一振り地面に突き刺した状態で生成する。
「死神野郎、行くぜ」
死神が鎌をこちらに向ける。俺は刀を地面から引き抜き中心で構える。
「関係ない話だけど、俺の実家は道場だったんだ。そん時じいちゃんから色々教わったんだよ。これもその一つだ」
中心で構えた刀を僅かに右に傾ける。
死神がこちらに全速力で向かい鎌を振り上げ、下ろした。
だが、俺には届かない
「天崎流 対刀術 一式:春雨」
たった一閃、されどその一閃は死神の核である魔石とその首を斬るのには充分であった。
「おい、アル! なんだよ今の! 教えろ!」
1呼吸置いた俺にセルクが興奮気味に聞く
「やだよ、てかセルクじゃ使えないよ。」
この技は俺の家系で代々続いてきた流派の技だ、それにセルクみたいに気が散りやすいやつじゃ無理だな。
「とても綺麗な技ね、あとそれ、初めて見る形の剣だわ」
「なんかーすごいー、柔らかーい感じ? で綺麗だった!」
「俺の家に伝わる……ってそうだった別にグレアの家に伝わってる訳では無い……」
「「「?」」」
「ま、まあとりあえず。ボス討伐! 成功!」
「やったー!」
「よっしゃー!」
「ふ、これくらい楽勝よ」
「目的の杖!」
「はいにゃ!」
「地図埋め!」
「完了。」
「そして思いがけぬ収穫《赤炎の血鎌》!」
「うおー!」
「よーし! 帰るぞー!」
「「おー!」」
1人返事がなかったな
「あ! セレスさーん!」
「おー! リズー!」
8階に上がるとセレス姉と試験の時以来なジオさんがいた
「アル、怪我はないか? 特に何もないか? なさそうだなよかった!」
当たり前とでも言うようにハグをしてくる
「姉さん近い、力強い、っ痛い痛い!」
「あー坊主。試験以来だな」
「は、はい。お久しぶりですジオさん。」
「てか、なんで校長とジオ先生がいんだ?」
セレス姉さんが俺に構っている間にセルクが口を開く
「珍しくまともなことを言うわね」
「なんだよその言い方」
ジオさんが口を開く
「なに、理由は簡単だ。君らがダンジョン内にて骸の死神と戦っていると3人組から聞いてな。」
あの3人か
「あの子達無事だったのー? よかったー!」
「……それで、どんな"処罰"ですか、姉さん」
俺が処罰という言葉を出すとセルクとリズが驚いたような顔をする。あの様子だとマリスは知ってたか。
「やっぱ分かってたか坊主。王国憲法第34条 "冒険者ライセンスを持たないものはB級以上の魔物との戦闘を禁ずる"……授業での例外だったし、こちら側も対処できていなかった、とはいえ違反は違反だ罰則がつく。もちろんお前らが助けた4組のパーティーメンバーも処罰対象だ。」
分かっていたことだがいざ言われると苦しいな
「彼らを助けるためには仕方のないことでしたから」
俺がそう言うと姉さんが口を開く
「では、ここに罰則を与える。アルレルト・グレア、リズ・アーバンディ、セルク・ヴァージェステイン、マリス・アルファリオ、計4名に学園寮〈小鳥の家〉にて1ヶ月の停学処分及び清掃を命じる! その間の外出はこちらに許可を取ること。以上!」
……ん?
「あ、あのさ」
「なんだ? アル」
「……軽くない?」
そう、軽いのだ。かなり軽い。本来ライセンスを持っていないものがA級と戦えば5ヶ月の謹慎処分ぐらいあってもいいはずなんだが、
「坊主、これでも交渉した結果だ。俺たち教員とお国さんははもっと厳しくするつもりだったがよ、残った奴らがパーティー全員連れて16人が俺らに頭下げて言ったんだぜ? 「彼らのおかげで助かりました。自分たちはどれだけ重い罰則でも良いので彼らの罰は軽くしてください」ってな? そこまで生徒たちに言われて心動かねぇ先生はこの学校にはいねぇよ」
あいつら……
「感謝しなきゃな。」
「よし、では話はここまで。ダンジョンの床が1箇所壊れていたのもきっと君らのせいではないだろうからな! 上に戻ろうか。みんな待っている。」
俺たちの初めての校外学習はこれで終わった。
俺たちは今、寮に向かって歩いている
「鎌、結局もらっちゃったねー」
「使える人が使った方が良いもの。」
「しっかし寮なんて初めて行くなー」
「セルク、あんた行ったことないの?」
「家から来ればいいし、見なくてもいいと思ってたんだよ。」
「まーでも私も行きたくはないねー」
「それは私も」
「あそこ見るからにボロって感じだしなー」
「アルくんは?」
「……」
「おーいアルくーん? きいてるー?」
「あ、なに?」
まずい考え事をしていて話を聞いていなかった。
「話聞いてなさいよ」
「寮に行くけどアルくんはあそこどんなイメージ?」
「えーっと、寮母のおばさんがめちゃくちゃ怖そうだったぐらい?」
あれ?
「寮母さん見たことないかも……」
「私もないわ」
「え、知らない? 寮母のマルタさん」
「「知らない」」
えぇ……
王国内 ???
一人の男が洋酒の乗った机を叩く、
「くそ、あのモンスターがやられるなんて……いやしかしまだ"手"はある……」
男は焼けたブローチを握りしめる。
一人呟く男の前に影が現れる
「やあ、進捗はどうだい?」
角と羽を生やした"ソレ"はいつの間にやら現れ、洋酒を注いでいた
「あ、な、何故あなた様がここに」
現れた"ソレ"はニヤリと笑い、注いだグラスを片手に、逆の手元を見つめる
「んー? いやね、面白そうなモノを見つけたからさ」
その手に握る水晶には上から見た学園が写っている。
「あの学園は君に任せてるんだから、ちゃんとやってよ?」
「は、はい! もちろんですとも……あの教師ども、特にあの校長、女のくせに生意気なあの校長! あいつだけは……私の手で……ヒッ、ヒヒッ」
「……その調子で頼むよ、私も少しずつ準備を進めなければな。」
ソレは机の上に小瓶を置いて消えた。
手に握る水晶には黒髪の少年が写っていた。
面白い!
続きが気になる!
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