第一幕.12話 墓場
俺がそれに気づいたのはリッチとの戦いが終わった、すぐのことだった。
「みんな、早めに降りたほうがいいかもしれない。」
「どうかしたの?」
「何か聞こえたか?」
「一番下の階、何か……聞いたことない音してるんだよ」
「まーとりあえず降りちゃお!」
「それもそうだな」
第8層
ア「ここは、結構狭いな」
マ「敵も表れてないし、セーフティエリアかもしれないわね」
セ「おっ、目の前のあれ下の階への階段っぽいぞ」
ア「んじゃそんまま降りちゃうか。」
リ「ゴーゴー!」
第9層
唐突だが、今俺たちはモンスターに包囲されている
9層に降りてきて早々に襲われたのだが、そこまでは良かったのだが……
「敵、多くね?」
「それは思ったわ、いくらなんでも増えすぎね」
「それに、やけに硬いぜ」
「アンデットってもっと柔らかいと思ってたのにー! おててが痛い……」
そう、今俺たちを囲んでいるこいつらはやけに耐久力がある。そして何かに操られるかのような動きをしている。
「多分どっかに死霊術師がいるな」
「うえぇ、俺あいつら嫌いだ」
「あなたと同意見だなんて、」
「と、とりあえず下の階に向かわなきゃだよ? どーする?」
うーんどうにかしたいが俺じゃどうしようも……あっ
「みんな集合!」
「へ? わ、わかった!」
「バカセルク! もっとこっちに!」
「こっちってどっち! ってかナチュラルにバカ言うな!」
「あーもー馬鹿! こっちよ!」
マリスがリズとセルクを連れて俺の近くへ来たのと同時にモンスター達が更に集まり襲い掛かろうとしてきた。
このタイミングで!
「[移動]!」
俺達は"視界に映る"10層へ降りる階段前までテレポートした
「ちょ、このままじゃ結局同じことに……」
「まぁまぁ、」
俺は後ろに振り向き[空虚な魔法]、聖属性中級魔法[陽光の柱]を放つ
「どっちもダメージはないが時間稼ぎにはなる。このまま下に降りるぞ!」
俺たちは目の前の階段を駆け降りた
最下層《カルデランの墓地》
「ここが最下層……ひどい空気ね……」
「ほ、ほんとに墓地だねえ……ってひゃあ! 泥で服汚れる!」
最下層は名の通り墓地、地面は泥、墓があちこちに立っており墓の周りには剣やら斧などの武器が刺さっている。そして真ん中には一際大きな墓がある。天井に届きそうだ。
「はっ、何がいようと叩き斬ってやる!」
「セルク、声が震えてるぞ……」
「うっせ」
その時かなり大きな音が奥からした
「とりあえず音がする方へ向かおう、こっちだ!」
墓地の真ん中ではなく少し外れた道を走る。墓で見えないようになっているが、奥には巨大な火葬場がある。そこにダンジョンのボスはいる。
「あれか、でかいな」
「なんか、聞いてたボスと違くねぇか?」
「あれは、骸の死神よ!」
「先生からの話だと魔の骸骨だって」
骸の死神は黒いローブを着て、赤い大鎌をもつ黒い骸骨だ。
魔の骸骨と骸の死神じゃCから A級までの違いがある。いくら見た目が似てるとはいえ、あの姉さんがそんなミスをするはずがない、
目の前で4組ほどのパーティーがボスと戦っているが二人が頭から鎌を喰らった。
その時青い光のエフェクトが起こり死体が消える。
「一応みんな死んでも《生転》でダンジョン外には出てるみたいね」
《生転》セシリアさんのスキルだ。確か、死んでも設定した場所で生き返れる的なやつ
「《生転》がここまで頻繁に発動してると流石に援軍が来るはずだ。それまで待ってれば良くねぇか?」
セルクの意見もわかるがこのままだとボス部屋を出ていく可能性がある、ここで食い止めたい。
「あら、そんなに弱気なの?」
「なんだと?」
「これだからヴァージェステインのやつは」
「おうおうやってやろうじゃねぇか!」
よし、よし、よく焚き付けてくれた(?)マリス
セルクが少しでもやる気になってくれれば良い。
「リズ、スキルは使える?」
「もちのろん!」
俺たちが見ている中で次々と生徒たちがやられている。あと3人か
「よし、行こう。ボス戦だ」
「マリス、セルク二人は[疾走]でアレと距離を詰めてくれ」
「「了解!」」
指示を出すと我先に、と二人が駆け出し骸の死神へと斬りつけにいく。
「リズはいつでも《混合》を使えるようにして。それとあの4人を部屋の外まで連れてってくれ」
「おっけー!」
「よし、俺も前に出るか。」
自身に[身体強化]と[疾走]をかけ右手に剣を生成し、火葬場の石の床を蹴り飛ばした。
「す、すごい」
俺たちが深手をおって絶体絶命とも言えるところに、4人の生徒が乱入してきた。
俺たちが4つのチームで挑んで敵わなかったモンスターを、抑えるどころか攻撃さえしている。
「はいはーい、みなさん離れてー!」
一人の女の子が俺たちを戦闘範囲から出してくれている。
俺は自分の無力さと、そして同時に助かったという安堵が湧き上がっていた。
「あ、ありがとう! 助けてくれて! ありがとう!」
「「ありがとう!」」
俺たち3人は彼らへの例を叫び扉を出ていった。
リズはちゃんと彼らを逃がしてくれたようだ。
「よし、出番だぞ、ヴァルス」
「やっとわしの出番だ!」
兎状態のヴァルスをフードから出し、左手で死神の顔に向けて投げる。
「行ってこい! ヴァルス!」
ヴァルスには少し自由に動いてもらう
「くらえ我が力!」
と言いながらリーパーの顔面を蹴る。
「セルク! マリス! 全員逃した! 全力でやれ!」
「おうよ!」
「了解、」
死神は未だに鎌を振り回すだけの単純な攻撃しかしてこない。
ならいまのうちに仕留めきる!
「リズ!」
「おっけー! 《幻獣混合猫》! とっておきいくよー!」
「いくぜ! 能力解放!」
「これで! 《氷気解放》!」
「我が声に答えよ! 《天威》!」
「魔力最大! [混合詠唱聖天魔光]!」
リーパーに向け全員が己の最大火力で攻撃しようとした。その時であった。
『《"奪"》」
そう……リーパーがつぶやいた。
酷い脱力感が俺たちを襲った
「なっ」
「うそ……」
「ま、魔力が」
「消えた……?」
全員が構えていた魔法やスキル、それらは発動されず代わりに、俺たちから魔力が消えた。
「なっ、なんだこれは……力が、」
ヴァルスですら知らないとなると、このリーパーの仕業ではないのか? そんな疑問が頭をよぎった時、
「アル!」
「どうしたマリス!」
「あれは、あの鎌は《赤炎の血鎌》! 切りつけた対象から命以外の一つを奪えるのよ!」
《赤炎の血鎌》! 呪いの装備として知られているものだ。使用者の血を吸う代わりにとてつもない力を得ると聞いていたが……まさか本物を見れるとは。
だがちょっとまて、なぜそんなものがここにある。なぜ奴が持っている。
「何か人の手が関わってそうだな……まぁ、一旦はこいつを倒すこと優先か……セルク! リズ! 立てるな!」
「おう、少し回復した!」
「私も、いけるわ、」
「よし、マリス! 《氷気解放》はまた使えるか!」
「動きを止める程度ならね!」
「十分だ。よし! もういっちょ行こう!」
「おらぁぁああ!」
「うりゃああ!」
セルクの切り上げを交わしつつリズの叩きつけを鎌でいなすリーパー
やつは先ほど俺たちの魔力を奪ったらしい。未だに体に魔力が完全に戻っていないところを考えると、奴は俺たち全員の最大威力は耐えられないから、と危険視してるのだろう。
「よし、マリス。合図で発動頼む。」
「分かったわ。」
ヴァルスは魔力で体が魔力でできてるのもあってダウン状態だが、
「借りるぞヴァルス。」
《模倣》でヴァルスの魔力を借り、同時に《赤炎の血鎌》をコピー!
「鎌なんて使ったことねぇから使えるかな。」
《模倣》して生成した《赤炎の血鎌》を軽く振り回してみる。一応槍をやったことあるけど似たようなモンだろ。
「んじゃ、いざ尋常に……勝負!」
俺は両手で構えつつ自信に[疾走]と[身体強化]そして[魔力反射]をつけリーパーに突っ込む、
左上から袈裟斬りにするように鎌を振り下ろす俺に対して、リーパーは右下から切り上げる形で振るい、お互いの鎌がぶつかる。そのまま俺の方が弾かれた。
「身体強化かけてるのに筋力で負けてるのかよ!」
この骸骨つえぇ! 確か死霊って死ぬ前の最も強い時期に近い体で生まれるんだっけ。この骸骨の元の人はさぞ名の通った戦士だったのだろう。
俺の鎌を弾いた瞬間やつに別の動きがあった。
「おまっ、待t……」
言い切る前に俺はリーパーに蹴られ、墓地まで飛ばされ真ん中の墓に叩きつけられる。
「いって」
どうにか墓から抜け出そうともがいた時、リーパーが目の前に現れ、
『"我墓ヲ守リシモノ、我主二使エシモノ、我生者ヲ憎ムモノ"[骸の怨恨]」
そう言うと奴は片手で魔法陣を展開し俺に向けて魔法を放ってきた。
俺が《詠唱破棄》を使った時と同じレベルの早さで魔法を展開し、放つリーパー。俺はただ前に《障壁》を張ることで精一杯であった。
だがまだだ、まだこの状況を打破する方法はある!
俺は上に向けて《火》を放つ。リーパーに一瞬の隙が現れ動きが止まる。
「今だ! マリス!」
「《氷気解放 秘技零氷華・天離凍結》!」
次の瞬間リーパーを巨大な氷が包んだ
面白い!
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