僕の名前。
白いなぁ
目覚めたところは何にもない部屋
僕はいつのまにかここにいたみたいで。
起きたらそこには僕がいた。
違うのは服くらいで。こっちは山登りするみたいな格好で、あっちは神様のような格好で。
神様の格好をした僕は言った。
「私はあなたの母よ」
え、と僕は思った。
僕には肉親が1人もいない。施設の出だ。しかもかなりの田舎。
親と呼ぶべき人は施設の人ぐらいしか思い付かない。
「こんな形になってしまったけど、今までのことは忘れて、そこにいなさい。そこにいたらきっと幸せだから。」
なんとなく、従うべきだと思った。本能ってやつなのか?
「けど、名前を忘れちゃったのか…またつけてあげるわ!そこでも生きれるように。
自分の子に名付けるのは二回目ね…今度こそいい名前にしなきゃ。」
逆におもった。前は悪い名前になってしまったのか?その名前も気になるが…
「よし!今日からあなたの名前は陽菜!周りを元気付けるような、雨すらも遠ざけてしまうような…
そこで頑張って過ごしてね。また会いましょうね」
僕の名前は陽菜、その名を覚えた瞬間に黄色い光に包み込まれ、僕はまた寝てしまった。
「…〜い、お〜い、また気絶してる」
「あのぉ、どいてくれません?もう起きてるんすけど…」
顔をぺちぺち叩かれているが、そんなに痛くない。
「いや、はっちゃんのくす…もがもが」
後ろにははっちゃんこと白覚さんが藍喜の口を抑えていた。
「体調はどうですか?何か思い出したりとか…」
「あっ、名前!名前をつけられました!たしか、陽菜って!」
「陽菜さんですか…一体誰に?」
「僕の母って言ってる人です。姿がまんま同じで…」
「…あなたは自分の母を見たことが?」
さっきは覚えていたことがぽっかり抜け出した。思い出せない。
「わかりません…?あれ、さっきは覚えていたのに…?」
「大丈夫です。無理に思い出さなくても。名前を知れたことだけでも幸運とおもいましょう。」
白覚さんに感謝をしつつ、ぼっーとする。
なんでなんだろう、それだけが頭によぎる。
ガラガラッ
「よーう!おはようさん!よく眠れたか?」
「はい!野宿に比べれば!ありがとうございます!」
「そうかそうか、ところでおまえさんは陽菜ゆうらしいな。陽菜ってよんでもええか?」
「大丈夫です。碧鬼さんとよんでもいいですか?」
「ええよ!そういえば用事があってきたんやったわ。陽菜、ここにいる気はないか?」
ここ、つまり妖怪がいるこの世界だ。でも、僕はもう決めてある。
「はい!よろしくお願いします。…でも、なぜ居させてくれるんですか?」
「まぁ、君のことが気になるのと、あの子、藍喜のことを頼みたいんよ。ここでは旅にだす時、同じぐらいの年齢の子と一緒にだす。あの子は他とかなり違うから、偶然来た君に頼みたい。君も自分のことを思い出すかも知れない。それで貸し借りはチャラってこと。わかってくれたか?」
旅に出るのか。僕も一緒に。
「わかりました。いつ、旅に?藍喜ちゃんに説明とかは…」
待ってましたと言わんばかりの笑顔だ。
「藍喜には話をつけてある。あっちも承諾した。時期は…陽菜次第や」
僕しだい?
なんでなんだろう。
「ここで生きてくにはそれなりの知識と経験が必須や。勉強も必要やし、カラダも鍛えなあかん。そんなこともしてない奴を出すのは、なんも知らんような赤子を外に出すのと同じ。そうしたら、藍喜にも影響を与えてしまうからな。まぁ、ちゃんとやったら一年かかるか、かからんかぐらいや。頑張り」
確かに今この世界で僕は無知の赤ちゃんだ。それなら、従うしかない。
「ありがとうございます。頑張ります。勉強とかはいつからですか?」
「明日や。できるだけ早い方がいい。陽菜がどんな能力を持ってるかも見たいしな。」
「…能力?」
「なんや、知らんのか。ここにきたっちゅーことはなんか持ってるはずやけど…ま、わかるのが遅いやつもあるし、大丈夫や。安心せい。」
この人は明るいけど明るいだけじゃない、包み込まれるような暖かさもあるなぁ。
「じゃ、またな。庭に藍喜がおるから、会ってきてもいいよ」
「は、はい!また、よろしくお願いします!」
手をひらひらっと振りながら碧鬼さんは出て行った。
藍喜ちゃんに会いに行こう。
まだ寝巻きから着替えていなかったので、着替えながら思った。