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2-2話 懐かしい友との再会

「ご注文はお決まりですか?」

「えーと、俺はジャイアントボアの炒め物に野菜スープとパンで。お前らはどうする?」


 サイモンの宿屋にある食堂で昼食を注文する。値段は一般的な昼食にしては高めだが、業務提携の割引で、そこまで気にする値段ではない。


 自宅で作ったものをアイテムボックスに入れておけば良いのでは?という話もあったが、それに気が付いたのは何回か食堂を利用してからだったのでそのまま食堂で食べることになっている。


 いきなりやめては、昼食要らないのか?って思われるし、アイテムボックスは出来るだけ秘密にしておくべきだ。


 それに、宿泊客から有益な情報が得られることもあるので、昼は交流と情報収集の為に食堂で食べるということにもそれなりの意味がある。


「では私に同じものに量を少なめで」


「私も同じので」


「ボアの炒め物、スープ、パンを3つですね」


 カルラとアンは、いつも俺に右習えだ。


 金は俺が出しているということもあり、自分の希望を通すというのが精神的に難しいらしい。


 そして何故か俺より量を少なくしたがる。それ運んでくる方が迷惑だからな?

 逆に俺が気を使うのだが、同じものを食べることに不満を感じていないようなので日常的な風景となりつつある。


「私のものは少なめでいいので」


 アンは店員に念を押して、少なめであることを強調する。


「分かってます、いつもと同じ奴隷セットですよね」

「はい、よろしくお願いします」


 店員はペコリと頭を下げて厨房にオーダーを伝えに行く。


「おい奴隷セットってなんだよ……」


「私は奴隷の身であるので主人と同じ席に座り、同じ食事を食べていては示しがつかないでしょう?自宅では問題なくとも、外ではしっかり境界を引いておかなくてはなりませんよ」


「だから、先生とお昼一緒に食べない日は私たちは通称奴隷セットを注文しています」


「響きが悪過ぎるだろ、誰がそんな呼び方考えたんだ」


「私です。ケニイ様と同じものでそれよりも量を少なく、もしくはケニイ様が先に食べられた場合はその残飯を頂く。と毎回言っていると店員に面倒がられたので、奴隷セットという便利な言葉を生み出しました」


「お前かよ!でもカルラも頼んでるんだよな?俺の奴隷じゃないだろ、誤解されるぞ?」


「いえ、私も先生の所有物だと思ってもらって構いません」


 構うわ!君は従業員であって、俺の所有物じゃないから!ディーンが聞いたら泣くぞ。


「そういえばパパに、昼飯はどうしてるんだって聞かれましたね」


「なんて言ったんだ?」


「先生の食べたものを食べてますって言いました」


「おい、それ俺の残り物食わしてるってニュアンスになってないか!?大丈夫かな……」


「大丈夫ですよ、ケニイ様は奴隷の私を一般的な奴隷として扱っていないのは周りの人も分かっているので、愛人くらいに思っています。

 でも愛人セットは流石にまずいので奴隷セットにしているんです。ま、愛人にしてもらっても構わないんですが」


「それに私がサンターノ村のディーンの娘で、先生の手伝いしてるだけなんてのはこの街じゃ誰もが知ってるので気にしませんよ」


 そんなことを冷静に言われても困るって。小さな街だから顔見知りばっかりだけども、奴隷セットは落ち着かねえよ。


「よし、分かった。従業員セットに名前を変えてくれ」


「かしこまりました『奴隷』の私にそこまで関心を向けて頂きありがとうございます『ご主人様』」


「俺で遊ぶのはやめてくれ」


 ペコペコされるのは慣れない性分なんだよ、不安になるから普通に接して欲しい。



 食事を終え、食後のお茶を飲みながらゆっくりして、午後からの診察に向けて英気を養っていた。


 するとバーカウンターの方からワンワンと泣く男の声が聞こえ、宿屋の従業員が少し困った顔で俺の方に来た。


「どうしました?こんな昼から酔っ払い?」


 冒険者の集まる酒場でもないのに珍しいなと思っていると従業員は説明を始める。


「あの〜、先生って病気治せますけど酒乱は治療出来ないですよね?」


「性格によるものだから治せないですね」


 そんなことが出来たら俺は冒険者に片っ端から解毒かけてるよ。すぐ酔っ払って喧嘩始めるからな。酔い覚ましは出来るけど、酒を飲めば元通りだ。


「やはり、そうですか……」


「まあ酔い覚ましは出来ますけど、酒を飲み、泣くのに何か原因があるのでは?」


 それを解消しないとループに陥るだろう。経験済みだ。


「いや、それが要領を得なくて……酔い潰れた連れを部屋に寝かせてからバーカウンターで酒をあおって泣き出したらしいんですが。

 謎に腕っぷしが強くて飲むのを止められないんで酔い覚ましだけでもお願い出来ませんかね」


「ちょっと様子を見てきます。2人は戻って午後の準備を頼む」


 やれやれ、マッサージ屋が酔っ払いの世話か。前に暴れた酔っ払いをぶっ飛ばして対処したのが原因でちょいちょい頼まれるようになってしまった。


 腕力には自信があるから多少強い冒険者程度なら組み伏せられるが……。


 バーカウンターに向かうと、そこには泣き叫ぶフードを被った小柄な男が座っている。近くにいる従業員も何も出来ず、遠巻きにその男を監視していることしか出来ていない。


「おい、その辺にしておけよ」


 フードの男の肩を叩く。


「触るんじゃねぇ!ぶった斬るぞクソガキがぁっ!」


 男は肩に乗った俺の手を振り払おうと、腰に下げた剣に手をかける。この気配、冒険者だろうな。それにかなり強い。


 そして、俺の顔を確認した男が怒りの形相で俺を睨みつける。


「はあ?お前の方がガキじゃん」


 その男は小柄なだけかと思ったが、顔は若い。どうみてもあっちの方が歳下だ。


「なんだと?生意気な口を聞くなガキ!僕はこれでも84歳なんだよ!」


 男は被っていたフードを脱ぐと、尖った長い耳が現れる。


 エルフか、それなら子供に見えても仕方ない……いや、84歳なら長命のエルフでも人間の大人くらいは成長するはずだが。


「ん……?あれ、お前レーギスじゃないか?久しぶりだなあっ!」


「は……?お前、僕と知り合いだったか?顔に覚えがないが?」


 その男はレーギス。勇者の時に旅の道中で一度会ったことのある、背の低い、童顔の子供みたいな見た目のエルフだ。相棒のヒョリガリドワーフのヘンリーといつも一緒にいたはずだ。


 あっ、俺の顔が変わってるから別人だと思われてるんだな。


「覚えてないのも仕方ないな……それより相棒のヘンリーはどうした、いつも一緒だろ?」


「……ウワァーーンッアンアンッ!」


「なんだよ急に」


 ヘンリーの名を聞くとレーギスは激しく泣き出す。


「ヘンリーはもう死ぬ!僕を置いて童貞のまま死ぬんだ可哀想にぃウォアアアアアアンアンアンッ!」


「童貞のまま死ぬのは可哀想だけどよ……なんで死ぬんだよ?病気か?」


「ダンジョンの調査をしていたら毒の空気にやられたんだ、どのポーションを使っても効果がないし、エルフとドワーフが教会に行ったところで治療してもらえるわけがない、もう無理だぁあああああっ!」


 毒の空気……狭い場所で火を焚いて一酸化炭素中毒とか、他の有毒なガスが発生している場所に入ってしまったか?


「落ち着け、俺が治してやるから。案内しろ」


「何っ!?君は治癒術師なのか!?」


「ああ、そうだからヘンリーの場所に連れて行け。そして酔いを覚ませ」


 レーギスの胸に手を当て解毒を使いアルコールを分解する。


「なんだ?酔いが覚めて……だが、治癒術師の知り合いは別に居なかったはずだ……」


「それは後で話してやるから、今はヘンリーが先だろ」


「そうだった!ヘンリー待ってろ!君を童貞のまま死なせないぞ!」


 宿屋中にヘンリーが童貞だと大声でバラすくらいならいっそ死なせてやった方が良いんじゃないか……?


 いやいや、冗談言ってないで早く助けてやらないと。あいつには恩もあるしな。



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