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1-1話 異世界でマッサージ屋やってます

ストックが大体10万文字くらいあるので1ヶ月くらいは毎日投稿します。

「君のテクニックはなんと素晴らしい……こんな技術が本当にあるとは……君の手は魔法の手だ!」


「恐縮です。殿下」


「もっとだ、もっと大きく、そして硬くしてくれ……君のその奇跡の手の力はそんなものではないはずだ」


「御意……」


 ここは温泉の湧くダンジョンがあることで有名な街、イルラキア。

 その中で一番人気のある高級宿屋の一室。


 そこにいるのは男二人。


 俺は茶髪の美しい顔をした隣国の王子である殿下の股間にソッと触れ…………。




 股間をゆっくり、そして確実に揉み込む。



「おおおおあああああっ!あっ!そこは……!?はあああんっ!」


「で、殿下、お声が少々大きゅうございます。周囲に聞こえてしまいます!」


 大きな声を出す殿下を諌めながらマッサージを続ける。

 すると、みるみるうちに殿下のイチモツは立派なサツマイモほどに肥大していった。


 そしてすぐに手を離す。


「も、もう終わりなのか?」


「はい。完了です」


 殿下は物足りなさそうに俺に質問する。


「おお……見事だ。これなら私は国王になれるのは間違いない。よくやったぞ!『マッサージ屋!』


 男根主義。


 男性器の大きさはつまり、人間が簡単に死ぬ世界において子孫を増やすということは、俺が思っているより重要なことだ。


 ましてや、それが王族となると更に重要度が増す。


 この王子のいる国では大きさが大事らしく、歴代の王様は巨根らしい。

 だが、この王子は短小までいかないにしても、やや小ぶり。

 それでは王位継承に問題があるらしく、真剣になんとかしなくてはならないようで各地で薬やトレーニングなどあらゆる方法を試した末、俺にたどり着いたとのこと。


 まあ、殆どがインチキ薬学、医学だろうからな。現代の日本の技術でもそこまで効果あるものは外科手術くらいしかないって話だし。


「はっ、殿下のお力になれたこと、光栄にございます」


「褒美はたっぷり用意してあるが、私が王になった暁には上乗せさせてもらおう、期待しておけ」


「ありがたき幸せ。では、殿下におかれましては引き続きイルラキアの街をお楽しみください。私はこれにて失礼します」


「うむ、これであれば温泉とやらで注目を集めること間違いないであろう。大義であった」


「はっ」




 俺は部屋を出るなり、早足で宿屋の裏手にある事務所に戻る。ソファにドカッと座り込み放心状態になった。


「マジで今まで一番キツい仕事だったなこりゃ……」



 俺はケニイ。この街で『マッサージ屋』を営む男だ。


 まず、何をしていたのか説明……いや、釈明をさせて欲しい。

 先に言っておくが、俺は断じて変態ではない。


 俺の持つ、治癒スキルと肉体改変という固有スキルを使い、人々の身体の問題を解決するのが仕事だ。


 治癒スキルはその名の通り、怪我や問題のある部分を回復させる能力。

 肉体改変スキルは魔力を使って欠損した身体の部位を創造したり、逆に不要な部分を痛みなしで消すことが出来る。


 それを利用して整形手術のようなこともやっている。


 じゃあ何故医者じゃないのか?


 それは政治的な利権問題だ。治癒魔法を使い人々を癒すのは教会のビジネスの一つ。彼らの飯のタネでもある。


 ただ、治癒魔法を使えるのは教会の人間だけではない。


 冒険者の中にも数少ないが治癒魔法が使えるものもいる。仲間うちに使う分にはいいが、治癒魔法自体をビジネスにするのはタブーとされている。


 つまり、治癒魔法が使えるからと言って大手を振って病院をやるわけにはいかない。それに肉体改変という固有スキルの説明も出来ない。


 だからマッサージ屋を名乗り、不思議なマッサージと薬の効果で怪我や病気を治し、髪の毛がフサフサになったり、男性器が大きくなったり、目元のシワが消えたりする。


 というわけで、顧客もその状況を理解しているので、秘密を守り、口裏を合わせ「良いマッサージ屋がいるんだ」ということで、飽くまでマッサージを受けたということになっている。


 まあ、そう言った緊急でない施術には比較的高額な報酬を頂き、治療してもらわないと困る金のない客の為に安価で治療をする。


 教会のないこの街で唯一怪我の手当をしてもらえるこの場所を問題にする人はおらず、今では街の者なら誰でも知っている公然の秘密となっている。


 当然、その営業実態が教会などに知られるとまずいので誰もそれを口外することはなく、余所者には絶対に教えないのだ。



「ちわっす〜」


「邪魔するよ」


「おい、嘘だろ今は勘弁してくれよ。疲れてんだよ」


 事務所に入ってきたのは、ガリガリのオタクっぽいひょうきんなドワーフのヘンリーと、童顔の84歳の背の低いエルフ、レーギスだ。


「そうだろうな、通りまで聞こえてたぜ魔法の手の絶技に酔いしれる男の声がな!伝家の宝刀で殿下の宝刀にしたんだからな!」


「ぶふっ……!ヘンリーそこまでにしておけ、ケニイをからかうと、魔法の手で何されるか分からんぞ……」


「「ぶははははははっ!」」


 ヘンリーとレーギスは二人で俺をイジって大笑いをする。


「何しにきたんだよ!?」


「今日は週末だぞ?何しに来たかは分かってるだろ?」


「さっさと『ニポン』の飯を出して宴会しようぜっ!」


「はあ……このスカベンジャーどもめ」


 俺のもう一つの固有スキルは現代世界のものを召喚することが出来る。

 そう、俺は異世界に召喚され、異世界で生きることを選択した日本人だ。


「ほらよ、取り敢えずこれでいいか?」


「待ってました!」


「これがないと週末の夜は始まらないな!」


 俺がアイテムボックスから取り出した、惣菜パンの袋を空けて、更にいくつか乗せて渡す。


「んはぁ……最・高♡」


 ヘンリーは目を閉じてカレーパンを頬張る。


「この肉、一体何で出来ているんだ!?エルフ族の口にこれを突っ込めば肉を食うのを禁じる掟など、カッコつけていただけだと分かるだろう!」


 レーギスはカツサンドを食べて同族のエルフを罵倒する。


「しっかり味わってくれ、『魔法の手』で触ったソーセージ風味だ」


「ぶっほおあああ!」


「おえええええええっ!?」


 2人は口に入っていた、パンを吐き出しかける。


 ふん、俺を馬鹿にした仕返しだ、ざまあ見ろ。


「どこがソーセージ風味なのだ?全くソーセージの味はしないが?」


「うおっ!?シェリー、だからドアから入って来いって言ってるだろ。仕事は終わったのか?」


 俺の背後におっさんのような喋り方をする黒髪の美少女シェリーが転移してきて、パンを食べていた。


「もちろんだ、サイモンのやつめ日に日に我輩の扱いが雑になっているのが気のせいというには、些か無理があるほど、こき使われたわ」


「シェリーがソーセージの味を知っているということは……」


「ケニイ、君まさか……」


「アホな事言ってねえで大人しく食べてろ」


「……?我輩、ソーセージくらい食べたことはあるが?」


「「ぶふっ……!」」


「はあ……騒がしいな休ませてくれよ」


 日本人の俺がこんな生活をしているのには様々な経緯や事情がある。


 俺が思い描いていたような異世界ライフとはまるで違うのだ。


 そんな生活になるキッカケは今から一年ほど前のことだ。

続きが気になる!面白い!と思ったら画面下にある☆☆☆☆☆を押してブクマして頂けると嬉しいです。

ポイント、コメント非常に励みになりますのでよろしくお願い致します!

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