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どうにかたどり着く

「コノ、オオキイ、キ、ガーーー」

「危ねえ!!」


背後からの殺気を感じて、咄嗟にミルちゃんを抱えて横っ飛びに飛んだ。

腰に下げていた剣が重くて思っていたよりも飛べなかったが、がきん!という音と共に太ももの辺りに衝撃が走ったのを感じてほっとした。


「大丈夫か、ミルちゃん?!」


木の陰に隠れながらミルちゃんに怪我が無いか確認する。


「ダイジョブ、デス……」


突然のことに動揺はしているようだが、ミルちゃんには怪我がないようで安心した。


「ク、クロノ、サン、ワ……?」

「どうにかね。運が良かった」


そう言うとミルちゃんはほっとした表情を浮かべた。


いや、でもマジで運がいいな。

武器くらいあった方がいいだろうと思って強奪した剣がまさか自分の身を護ってくれることになるなんて夢にも思わなかった。

ひょっとして、この豪運が俺のチートで、よっぽどのことが無ければ死なないんじゃないか?

って、そんなわけねーか。

それよりも今はミルちゃんを逃がしきることを考えなければ———。


「そういえばミルちゃん、おうちはもう近いのかい?」

「ハ、ハイ……アノ、オオキナキ……アソコデ、ジュモン、イウト、ケッカイ、ハイレマス」

「なるほどな」


ミルちゃんが示してくれた木までは、直線距離であと10数メートルといったところ。

このくらいの距離ならば下手な小細工などせず、ミルちゃんを抱えて走って行った方が速いし確実だろう。


「ミルちゃん、今から君を抱えて走るから、木の近くについたら呪文を唱えてくれるかい?」

「ワカリ、マシタ」


ただ、走る前に一矢報いてやろうと思い、鞘から剣を抜いてベルトを外した。

すると今まで黙って頭の上にしがみついていたポポが、余計なことをするなと言わんばかりに俺の頭激しくをつつき始めた。


「いででででで!! てめっ、この丸鳥! 唐揚げにすんぞこら!」


そう言って引きはがそうとしてもどうにも離れないので、頭頂部に走る痛みを無視して木の陰から敵がいるであろう方向へ目掛けてサイドスローで剣を投擲した。

剣が回転しながらまっすぐ飛んで行ったのを確認し、すかさずミルちゃんを抱きかかえると一目散に結界の張ってある木に向かって走り出した。


ちょっとした威嚇になれば良いと思って剣を投げたのだが、背後から男の叫び声が響いてきたので、奇跡的に当たったのかもしれない。

それで相手は怯んだのか、飛んでくると想定していた矢は一向に飛んでこなかった。


そうこうしている内にミルちゃんが指示していた木の前まで来た。


「ミルちゃん、呪文を頼む!」

「ハイ! ヒラケ、ゴマ!」


え、今なんだか割と身近に感じる呪文が聞こえてきたような……などと考えていると、いつの間にか俺とミルちゃんは直前までいた森の中ではなく、どこか開けた場所に出ていた。


「これは……いったい?」


「※※※※※※!!」

「※※※※?!」


自分に起きた出来事に戸惑っていると、前方からミルちゃんと同じような尖った耳を持ち、透き通るような白い肌の二人組の男が何かを叫んで走ってきた。


「※※!!」


それを見たミルちゃんは俺の腕の中からぴょんと飛び出すと、男たちの元へ駆け出して行った。

何を話しているかは分からないが、泣いて飛びついたところを見る限り、恐らくあの二人はミルちゃんの関係者なのだろう。


ふう、とりあえずこれでミルちゃんを無事に家まで帰すミッションは達成した。

あ、なんだかそう思った途端にどっと疲れが押し寄せてきた。


空から落ちてからかれこれ数時間動きっぱなしだったので当然か。

もしも迷惑でなければエルフさんたちの集落で休ませてもらえないかなあ?

辺りはすっかり暗くなってしまってるから亮たちを探すのも苦労するし、何より今戻るとミルちゃんを追ってきた連中と鉢合わせてしまうかもしれない。


そんな期待をしつつ、ミルちゃんが俺のことを紹介してくれるまでじっと待っていた。


するとそんな俺の視線を感じとったのか、一しきり泣いたミルちゃんが大人のエルフたちを連れて戻ってきた。

そして彼らは俺の前まで来ると、仰々しく片膝をついて非常に流暢な日本語で語りかけてきた。


「英雄殿、この度は私の娘ミルを助けていただき、感謝の念に堪えません」

「是非、我らの集落へお越しください、英雄殿」

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