今回の死因は
水晶に映し出されているのは、木の陰に隠れている俺とミルちゃんの二人だ。
因みに俺の左足には、を避けきれなかった矢が1本脹脛に刺さっている。
あれ、無茶苦茶痛かったけど、ミルちゃんの手前何とか声を出さずに踏ん張ってたんだよなあ。
水晶の中の俺は気に寄りかかって呼吸を整えながら打つ手を考えており、すぐ傍のミルちゃんは恐怖で顔が引きつっている。可哀そうに…。
すると俺は刺さった矢を抜き、着ていたシャツの袖をちぎって止血をした。
一先ず血が流れ出るのを止めた俺は、何を決意したのかミルちゃんを抱きかかえて走り出した。
あ、これはあれだ。
なにも思いつかないし、ゴールは目と鼻の先にあるし、一か八か走り抜けることにしたんだ。
まあ、交渉しようにも言葉が全く通じないし、そもそもこっちは手負いの俺と幼気なミルちゃんの二人しかいないし、他にどうしようもなかったんだよな。
あ、でも映像の中の俺は木と木の間をジグザグに走って狙いを定められないようにしてる。
おっと、何本か弓矢が飛んでいるがそのどれもが木や枝に遮られており、俺もミルちゃんもまだ無事だ。
そうこうしている内にミルちゃんの言っていた大木の辺りに差し掛かった。
もしかしたらここでもたもたしている内に射殺されたのかと思いきや、次の瞬間、俺とミルちゃんは大木の中に吸い込まれるように姿が掻き消えた。
すると俺たちを追っていた連中も大木の前に姿を現した。
連中の人数は全員で4人おり、水晶の画質がいまいち良くないせいで性別は分からなかったが、弓を打ってきたやつ以外もそれぞれが武器を携えていた。
……うん、むやみ突撃をしなかったのは正解だな。
この人数の武装集団が相手となると、現状選べる選択肢は逃げの一手につきる。
連中は俺たちが吸い込まれた大木に手を触れたりしているものの、俺た起こったような現象の再現ができず、悔し気に声を荒げているようだ。
あり?
てっきり俺はこの連中に殺されたものと思っていたのだけど違うのか?
ならばどうやって死んだのだろうか。
姿の消えた俺たちの姿を探すべく水晶をいじっている内に、どうにか俺とミルちゃんの姿を見つけることができた。
水晶で調べたからこそわかったのだが、なんとそこは元居た場所から数百キロ離れた場所に位置しているようだ。
何が起こったのか解説を求めるべくちらりとアレイアを見やると、仕方が無いですわね、と説明をしてくれた。
『恐らく転移の魔術が起動したのでしょう。この世界では失われてから久しい魔術のはずではあるのですが、ひっそりとエルフたちの間で引き継がれてきたものと思いますわ』
なるほど。
ならばミルちゃんが唱えていたのは呪文的なものだったのか。
とりあえず起きた事象については納得したものの、俺が死んだ経緯がまだ確認できていないので、引き続き水晶を見ることにした。
俺たちが転移した先は、エルフの集落のようだ。
目の前にあるのは恐らく集落へ通じる門と、その門を護っているであろう、二人の男のエルフがいた。
エルフの男たちは、見知らぬ俺の姿を見て一瞬武器を構えたが、俺に抱えられているミルちゃんが声をかけると、一人は急いで集落へ、もう一人は俺の元へ駆け寄り、何やら話しかけている。
すると画面の中の俺はその男にミルちゃんを託すと、ふっと力尽きて倒れた。
エルフの男の腕の中にいたミルちゃんは俺の様子に気が付くと、男の腕から抜け出して俺の元へ駆け寄り、何事かを語りかけていたが、俺はそれに答えることなく静かに息絶えてしまっていた。
映像はそこで止まってしまったが、詳しく検証するために水晶をいじって俺の顔にズームしてみると、非常に顔色が悪くなっていることが分かった。
確証はないけどこれってもしかして、
『ええ、あなたは毒に侵されて亡くなられたのですわ』
「そっか毒かあ……何度目の死かは覚えてないけど、確か子供の頃にも毒で死んだことがあったっけ? 確かあの時はオオスズメバチの群れにやられたんだよなあ……」
『しみじみと死んだ経験を語らないでくださるかしら?』
ジト目でアレイアが文句を言ってきた。
「あれ、そういえばお前はあの襲撃の時どこにいたんだ?」
『何を仰っているのですか? 私はずぅっとあなたの頭の上におりましてよ。身を縮こまらせて』
「お前あの状況でずっと頭の上から降りてこなかったんか!」
『それはそうですわ。いいですこと? 仮に私があなたより先に命を落としてしまうと、あなたの魂をここまで連れてくることができなくなってしまうのですわ。その為、私はあなたよりも1秒でも長く生き残れるように努めているのですわ!』
「わかった、わかった。それについては文句は全くねーよ。何なら一度空から落ちる時に助けてくれたしな。ありがとう」
「分かればいいのですわ!」
えへんと腕組みをするアレイアを置いといて、改めて死因を確認する。
「今回の毒だけど、思い当たる節はいくつもある。それこそ、森に落ちたときにあちこちに切り傷を作ってたし、その時に毒性の植物とか虫に密かにやられていた可能性が一つ。次に考えられるのは、あの矢だね。矢に毒が塗られていた線もある。ただ、あの時の俺の体の異変を考えると、遅効性の毒でじわじわというよりは即効性の高い毒があっという間に体中に廻ったように感じた。それならば切り傷を創ってしまった時ではなく、十中八九、矢に即効性の毒が塗られていて、そいつが原因で死んでしまったと考えるのが有力かな」
『ほえ~』
アレイアが口をぽかんと開いて変な声を出していた。
「なんだ、間抜けな声を出して?」
『ま、間抜けとは何ですか!?』
そう言って俺の額にデコピンと同じ威力のキックを炸裂させた。
『ぶつぶつ(せっかく人が感心してあげてるというのに……)』
「まあ、俺が悪かったからさ、とりあえず俺を戻してくれよ」
『あら? もうどの時点に戻られるかお決めになられたのですか?』
「ああ。うまくいくかは分かんないけど、試したいことがあるんだ」
『それではお聞かせ下さいまし。いつ、どの時間帯に戻られるのか。それと、どのような暗示をかけるのかを』
「それはだな———」




