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クロノスの空間、出張版

ここは……どこだ?

なんとなくクロノスのいる空間に似ているような気が———クロノス?

なんで俺、あいつのことを認識できて———なるほど。

ここはこちらの世界に存在する、クロノスの空間なのだろう。

でなければ俺がその名前を思い出すことはない。

ということは、だ。


「え、俺死んだの?」

『その通りですわ』


俺の独り言のような疑問に答えたその声は、俺の頭上から聞こえてきた。

聞きなれない声の持ち主の姿を拝もうと顔をあげるが、そこにはもやもやとした空間が広がっているだけで、誰の姿も確認できない。


『もう!そうやって急に頭を動かさないでくださいまし! 落ちてしまうではないですか!』

「……え? もしかして———」


恐る恐る頭の上に手を伸ばすと、人形サイズの何かに手を叩かれた。


『何の断りもなくレディーに手を伸ばすなんて不躾ですよ! もう!』


そのなにかはプンプン怒りながら俺の頭の上からふわっと飛び上がり、俺の視界に入る位置で静止した。


『クロノス様のお言葉が無ければ氷漬けビームをお見舞いするところでしたわ』


目の前に現れたそいつは両手で包み込めるほどの大きさの人の形でありながら、背中には2対の翼が生えている、いわゆる妖精のような見た目をしていた。

見た目は全違うが、俺の頭の上から飛び出してきたということは———


「お前、ポポか?」

『その名前で呼ばないでくださる! 私にはアレイアという、クロノス様から賜った素敵な名前があるのです!』

「そっか。この空間を見てもしやとは思っていたけど、クロノスの関係者だったんだな」

『ですわ!』


エッヘンと胸を張るポポ、もといアレイア。


「因みにだけど、そのクロノスはどこにいるんだ? ここ、クロノスの空間だろ?」

『……正確に申しますと、ここはクロノス様の空間ではございません』

「え、そうなの?」

『いわば、出張版みたいなものですわ』

「なんかそう言われると途端に安っぽく聞こえるな」

『お黙りなさい!』


かっとなったアレイアに眉間をキックされたが、小人サイズなのでデコピンされた程度の痛みしか感じなかった。


『あなたが懐中時計を向こうの世界に落としてしまった為に、クロノス様が苦肉の策で私をこの世界のあなたの元へ送り込まれたのですよ! 出張版でも時を巻き戻せることに感謝してほしいものですわ!』

「え? 落としたってそんなバカな———うわ、マジでない!」


くっ、多分裂け目への突入時に落としてしまったんだろう。俺としたことがやらかした。


『あれはクロノス様の空間へつながる直通のパスポートのようなものなのよ。あれがあったからこそ、あなたの魂はこれまでクロノス様の空間へ行くことができたのですわ』


そうだ、確かにそのように説明を受けていた。

なので懐中時計の無い俺が死ねばそのまま死んだままになるはずなのだが———


『そこで私が無くされた懐中時計の代わりにあなたの魂をこの空間へ運ぶ役目をクロノス様より請け負ったのですわ!(……私に次元を超えるだけの力が無いので、クロノス様にわざわざ出張版の空間を作っていただくことになりましたけど……)』

「え、最後なんだって?」

『なんでもございませんわ!』


聞き取れなかったから聞き返しただけなのに、おでこに蹴りを貰ってしまった。


『さあ!それよりもとっととやり直すのですわ!』


そう言ってアレイアは水晶のようなものを取り出した。


「えっと……この占い師が持ってそうな水晶で俺にどうしろと?」

『あなたが亡くなられた時の映像を映し出して、戻るべき箇所まで戻す、いつもやっているでしょう?』


呆れたようにアレイアが言う。


「いや、いつもはクロノスにスクリーンとリモコンを出してもらってたんだけど……」

『出張版にそんな便利なものはございません! ほら、うだうだ言っていないで操作なさい!』


操作も何もこのまん丸い水晶をどうやって操作すれば———あ、手をかざしたら俺が死んだ瞬間が水晶に映し出された!

かざした手を何となく動かすと、映像が進んだり巻き戻ったりしている。

結構直感的に操作できるので、ア〇フォンみたいだなと思った。


だが、やはり水晶だから画質……画質?は良くは無いが、何とか見えなくはないって感じだ。


とりあえず、やれるだけのことをやろうと、改めて俺の死の瞬間を確認することにした。

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