アランの邂逅
色々書きなおしていたら遅くなってしまいました。
とりあえず切りのいいところまであげます。
尋常ではない破壊音と揺れにアロウの気が動転してしまったので、どうにか宥めつつ階下の気配を確認する。
はっきりとは分からないが、得体のしれない何かの気配を感じる。
鬼が出るか蛇が出るかは分からないが、じっとしていても仕方がないので塔内にいる存在の正体を確かめることにした。
英雄の塔は貴重な人類の遺産であり、歴史ある建造物だ。
それをむやみに破壊している輩がいるのであれば、どうにかしなければならないだろう。
アロウに塔の正面で待機するように指示を出し、使い慣れている弓を背負うとそっと塔内へ侵入した。
英雄の塔は上層部に上がるほど面積が狭く、地上へ近づくほど広くなるように作られている。
下層部から中層部、そして中層部から上層部にかけてはほとんど吹き抜けになっており、基本的には壁に沿って作られた、大人二人がやっと通れるような足場のらせん状の階段が唯一のルートである。。
だが、中層部はまるで下層と上層を隔てる蓋のようになっており、この階層にのみしっかりとした足場と複数の部屋が造られている。
中層部に位置するこれらの部屋にて、英雄の召喚が行われるのである。
屋上から塔内に入ってそっと辺りを伺ったところ、少なくとも上層から中層にかけては特に異常が見当たらない。
問題が無いことを確認した私は、一々階段を下りている時間が勿体ないと判断し、一息に中層部への入り口まで飛び降りると、風の魔術を使用してそっと着地した。
顔を出して中の様子を伺うと、召喚の間の一室から攻撃が放たれたような形跡が見て取れた。
何が起きているかは定かではないが、最悪の可能性として英雄召喚の儀を察知した魔族が刺客を送り込んできた、なんてこともありうる。
少なくとも良識のある人間であれば、英雄の塔内で破壊活動を行うとは考えられないので、現時点ではこの手合いの者は敵性勢力であると推察される。
矢筒から矢を取り出してつがえ、いつでも放てるように用意をしながら、破壊の発生源である部屋の入口付近まで一息に移動し、中の様子をうかがうと、2つの人影があった。
1人は切れ長の目をした美形で、顔だけを見ると男か女か判別のつかない者。
もう1人はあまり身だしなみを気にしていないように見える、ぼさぼさの頭をした野暮ったい男。
2人は似たような衣服を着ており、それはどことなく帝国の貴族着を思わせる造りをしている。
もしかして帝国貴族の子女が見分を広げる為に塔内を見て回っているのだろうか?
などと考えていたが、彼らの言葉を聞いてそうでないことを理解した。
「いやね、ここにきてからすんごい体が軽くってさ。この程度の石壁くらいなら蹴破れるかも、って思って試してみたら想像以上でウケる」
……なるほど。やはりこいつらが塔内の破壊活動の主犯か。
英雄の塔を荒らすなど愚にもつかないことをしでかしたのが帝国貴族の子息とはな。
一体何が目的かは分からぬが、これは一つ灸をすえて———。
「J()Y$)+)U)$FHUE」
野暮ったい男が美形の男に向けて放った言葉を聞いて、血が冷たくなるのを感じた。
この言葉が何を意味しているかは全く分からないが、似たような言葉を口にしている連中ならば知っている。
魔族だ。
これまで幾度となく殺し合いを演じてきた連中だ。
言葉を学んだことは無くとも、戦いの中で耳がなんとなく覚えていた。
筒から弓矢をもう2本取り出してつがえ、連中の気配が緩む一瞬を待ち、
「EIN)#"*+———」
魔族の言葉を操る男に隙が生まれた瞬間、私は3本の矢をまとめて野暮な男目掛けて放った。




