#1 運命の日
主人公はただの天才である。彼が中学生のときに作った「タイムメッセンジャー」がこの物語の始まりだ。当時13歳、彼の名前はエリック、学校では成績優秀だったが、いつも一人でなにか考え事をしてるようだった。友達は多くはなかったが親友マークと近所に住んでいる幼馴染カレンとは放課後いつも一緒だった。今日もいつものように放課後はエリック家のガレージに集まった。
エ「ついに完成したよ」
マ「例のあれかい?」
エ「うん」
カ「まさか、冗談言わないで」
カレンは半信半疑だったが、エリックは嬉しそうにガレージの奥から何やら横長の装置を持ってきた。それはエアコンほどの大きさで側面には画面がついていた。マークとカレンは興味津々にその装置を覗き込んだ。
マ「試しに使ってみたのかい?」
エ「いやまだだ」
カ「でも、だれに“送る”の?」
エ「僕らだよ」
そう言ってエリックは装置の画面を操作し始めた。
To 2014/05/24 17:08
From 2014/05/24 17:07
こんにちは エリック
そうして左側についているボタンを押した。画面には送信完了の文字があった。
マ「成功かい?」
エ「1分後にわかるさ」
3人はじっと画面を見つめていた。そして1分が経過したが、画面には何も映っていなかった。
マ「なんだ、失敗かぁ」
エ「いや、これを見ろ」
装置のランプが赤くひかり、画面には“受信”の文字があった。
そうしてゆっくりと1文字ずつさっき送信した文字が表示された。
マ「せっ、、成功か!?」
エ「ああ、成功だ」
カ「さすがエリック! 私も送ってみたい!」
「ねぇ、これって過去にも送信出来たりするの?」
エ「うん、原理は同じだからね」
マ「その場合どうなるんだ?」
「仮に今から送る場合、もう俺たちはその事を知っているはずじゃあないか?」
カ「確かに、、過去に送信するなら今の私達はもうすでにその内
容を知っているはずだけど、、」
エ「いや、過去には送れる。だけど過去の僕たちはそれを確認す
る事が出来ないんだ」
マ「どういう事?」
エ「過去には送信することはできるんだ、でもその過去という時
点には時間が流れていないんだ。だから受信した内容を確認する事ができないんだ」
マ「過去に時間が流れていない?」
エ「ああ、時間が流れているのは現在だけだ、現在は時間の先頭というイメージかな、そんで未来という何もない白紙に現在がやってくる、現在が過ぎ去ったあとは、過去というその瞬間が残るだけだよ。だから、そこに送っても確認のしようがないんだ」
マ「まあ、何となくは分かったけど...」
カ「今の話だと未来は無いって事?」
エ「うん、現在が時間の先頭だからね」
カ「なんか不思議」
エ「そうだね、今日はもう遅いから帰りなよ」
マ「うわっ、もうこんな時間」
カ「私も帰るわ、また明日」
あれから60年現在は2073年12月、僕はカレンと結婚してジャックを授かった。ジャックは政治家として日々頑張っている。マークは僕と同じ大学を卒業後、政府の先端技術研究局の研究者として今は僕とともに物質のタイムトラベルを目標に研究してる。僕らはタイムトラベルを理論上で完成しノーベル物理学賞を受賞している。人類初のタイムトラベルが目前に迫り世間はその話題で盛り上がっている一方、各国政府は水面下で緊張状態に陥っている。
今日はそんな中で開催されるノーベル賞の授賞式である。僕は念のためにカレンを家においていくことにした。家にはジャックも居るから安心だと考えた。