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夏休み明け

夏休み明け初日は金曜日だった。

全校集会の後のホームルームでは夏休みの宿題を提出して

9月以降の予定を聞くだけで午前中で終わった。


自主性を重んじる京香の高校は必要最低限の宿題しか出されない。

それは長期休暇中でも同様であり、生徒たちは自ら考え勉強することを課される。

塾にも予備校にも通っていない京香はここでも頭を悩まされた。


ひたすら前期の復習を行い学校の夏期講習を受講しバイトに明け暮れた。

本当にこれで良かったのかと焦る気持ちが膨らむばかりだ。


(せめて通信講座だけでも受けるべきだったかな…でもお金もったいないし…)


周りを見渡すと既に予備校の冬期講座の話をしている同級生もいる。

予備校が同じで仲良くなった子もいるようだ。


「今月末に期末考査があってさらに文化祭と体育祭の後に実力テストってどういうスケジュールなのこれ…」

「思い出作りさせる気がないに等しいよね」


ケラケラ笑いながら帰宅していく同級生を眺めてため息をつく。


(そうだよ…なんでこんな時期に実力テストなんてやるの…)


京香の高校は前後期の2期制で6月に前期中間考査、9月に前期期末考査、12月に後期中間考査、2月に後期期末考査があり、その間の5月と10月と1月に実力テストがある。

1年生は5月の実力テストが実施されないので10月が初めての実力テストになる。

授業の復習が中心の中間期末考査とは違い、実力テストは大学二次試験を想定した応用問題が多数出題される。

まだ基礎の出来上がっていない1年生には難題で、200満点中5点等という点数もざらだ。


中学では無敵だったエリートたちは見たことのない自らの点数に驚愕しここで鼻をベキベキに折られる。

ここでようやく悟るのだ。自分が小さな井の中の蛙であったことを。


さらに実力テストでは学年における明確な順位が出てしまう。

京香の学年は約400人。旧帝大を目指すならせめて200位前後には入っておきたい。

そのためには過去問で問題傾向を見ておかなければならない。


「先輩から去年の問題もらったんだけどいる人ー」

「あ、俺欲しい。コピーさせて」

「私もー」


わいわい集まる同級生を尻目に帰宅しようとすると


「白洲さんもコピーいる?」


輪の中から出てきた神崎梓に話しかけられた。

梓は開業医の娘で地元国立大医学部を目指す品のあるおっとりタイプの生徒だ。


「あ、私は大丈夫。ありがとう」

「もう持ってるの?」

「うん」

「そっか。じゃあまた来週ね」


(神崎さんは優しいなー余裕のあるお金持ちは違うなぁ)


相変わらずグループには所属しない京香だが、最低限の挨拶と会話はするので

特にボッチ扱いされることもなく話しかけてもらえている。


中学とは違い、大人な生徒が揃ったこの高校では一人が好きな生徒も多く京香もその部類に入る。

この高校に入って良かったと思える点である。

高校生になってまでいじめ対策しなければならないのではないかと構えていたが、入ってみれば全然そんなことはなくみんなそれぞれ自分のやりたいように過ごしている印象だ。


もちろん部活の仲間や中学時代の友人で固まる生徒もいるが

そのグループで徒党を組むわけではないし

最悪関わらなければ問題ない。


そして京香は今日も一人帰路につく。

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