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オシャレそうめん

家に着くとまたもや疲れが押し寄せてきた。

図書室で寝てしまった罪悪感とよだれを見られてしまったことへの羞恥心。

ゴロゴロ部屋を転がりたくなる衝動に駆られる。


(もう忘れてしまおう…とりあえずご飯を食べて今日の復習をして寝よう…)


食べようと思っていた昨日の鶏肉と野菜の甘辛煮を出すも食べる気が起きない。

さっぱりしたものが食べたくなったのだ。


棚からそうめんの乾麺を取り出し水を浸した鍋に火を掛けた。

付け合わせを作ろうとしわしわになりつつあるプチトマトとツナ缶を出した。

プチトマトは半分に切りツナ缶の油をきる。

ボールにプチトマトとツナを入れてオリーブオイルで和えている間に大葉の存在を思い出し冷蔵庫を漁る。


(しわっしわじゃん)


切ってしまえば同じだと大葉を千切りにしてボールに加えた。

沸騰した湯にそうめんを入れ軽く茹でる。


亡くなった父はそうめんより冷や麦派だった。

京香は最近知ったのだがそうめんと冷や麦の違いは単純に太さの違いだそうだ。

別に冷や麦でもいいのだが、買い物に行くと父を思い起こさせるのが嫌なのか手がそうめんに向く。


茹で上がったそうめんをザルにあげ水でぬめりを取る。

水を切って透明のガラスの器に移し作った付け合わせとめんつゆを入れる。


(コーン入れても美味しかったな…)


完成したそうめんをつるつるを啜った。


(んまい。多分)


京香はその生い立ちから料理が自然と出来るようになったが、自分では特に上手いとは思っていない。

あくまで必要に駆られて独学で学んだもので、別に料理が好きなわけでもない。

それでも疲れて帰ってくる母が喜んでくれるよう色々工夫はしていた。

シチューを作れば次の日は余ったシチューをドリアに、さらに次の日にはリゾットに…と母が飽きないようメニューを変えたり味変したり子どもながらに考えて作っていたのだ。


世間一般ではそれを料理上手というものなのだが、京香にはその自覚がなかった。

料理をしていると作る過程で味がわかってしまうので驚きがない。

誰かの作ったものなら美味しいのかもしれないが

自分が作ったものを一人で食べても何の楽しみもない。


だから京香は今日も生きるためだけに料理し食べている。


「ご馳走様でした」


一人呟き食器を片そうと立ち上がるとインターホンが鳴った。

知らない人が来た時居留守を使うためにいつものように忍び足でドアに向かう。

ドアスコープを覗くと申し訳なさそうな顔で圭介が立っていた。

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