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図書室

図書室はいつものように満席。

どこか空いていないかキョロキョロ見回すとちょうど席を立つ人を見つけた。

ここからは本棚で隠れて見えないが奥に席があるようだ。

速足で一番奥の窓際に滑り込むと4人掛けの机の角の席が空いていた。


(ラッキー!ついてる!)


取られる前にそそくさと席に座る。


…と隣の席に目を向けると突っ伏して寝ている男子生徒がいる。


(おいおい…寝るなよ…席空けろよ…)


溜息をつきながらも我関せずと京香はイヤホンをしてスマホで音楽を聴きながら教科書を開いた。

今日はバイトもないので夕方までやり込もうと決め集中する。

まだ一年生とはいえ戦いは始まっているのだ。

勉強は基礎が出来ていないとどんどん躓いてしまい先に進めなくなってしまう。


ーー勉強の出来は時間に比例する。


中学の担任が言っていたことだ。

やればやるだけ結果が出るから楽しいのだと。


京香もそれはわかっていた。

友人もおらず趣味もなく時間を持て余しながら勉強していたからここまでこれたのだ。

暇があれば勉強する。それが当たり前の生活だった。


それでも高校でバイトを始めたのは将来の備えのためだ。

生活費は母の再婚で多少楽になった。

そうはいってもまた誰かを亡くすかもしれない。

まだ子どもの自分には自力で生活できる力がない。

稼げるときに稼いで将来の不安を少しでも取り除きたかった。


中学ではバイト禁止だったが高校では学校の許可が出れば可能なので

高校入学後すぐさま京香はバイトを始めた。

駅前のカフェは忙しいが忙しいがゆえにわずらわしい人間関係も希薄だ。

みんな人に構っている暇がないのだ。

そしてスピードと効率最優先のこの仕事は向いていると京香は今日まで続けてきている。


ただ体力がない京香はバイトを始めた当初は帰宅後すぐ寝てしまい勉強に割く時間が減っていた。

徐々に慣れてくるもやはり危機感は募りせめて夏休みは集中しようと学校の夏期講習を入れまくった。

だから夏休み中でも毎日登校している。


家事もバイトも勉強も必死にこなしているうちに夏休み終了間際の今、身体が悲鳴を上げているのに気づかなかった。



…はっと目が覚めると空が暗い。


(ん…?あれ…私… 寝てた!??)


うわああああぁぁ……と頭を抱える。

今日はバイトがないからがっつり勉強しようと張り切っていたのにいつの間にか寝てしまっていたようだ。


と、周りを見渡すと相変わらず隣で寝ている男子生徒以外誰もいなくなっている。


(閉館時間過ぎとるがな!!!)


時計は18時20分を指していた。

ヤバいヤバいと片づけを始めるが隣の生徒は起きない。

仕方ないと声を掛ける。


「あの、もう閉館時間ですよ。起きてください」


「うーーん……?」


顔を上げた生徒と目が合う。


「「あ…」」


同時に声が出た。


「こ、こんにちは。昨日はどうも…」


京香が先に挨拶する。

眠りこけていた生徒は『202号室 琴吹圭介』だった。

寝ぼけたままの圭介が答える。


「おはようございます…?あれ…?昨日の…」


「はい。201号室の白洲京香です。」


「あ、それはどうもご丁寧に………ってあれ!?今何時!?」


「え!あ、18時20分過ぎたとこです。」


「マジか!!!!」


ガタガタと圭介が席を立ち鞄を掴む。


「起こしてくれてありがとう!ご飯もありがとう!あと、えっと、よだれついてるよ!じゃあ!」


大声で捲し立てながら圭介は図書室からダッシュで出て行った。

残された京香はあっという間の出来事に呆然とする。


「えーっと…は!よだれ!?」


慌てて腕でごしごし口を拭いた。


(いや、律儀だけども!)


もやもやしながら京香も鞄を取り帰宅することにした。


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