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月曜日。

京香の部屋で朝食を一緒に食べて玄関で圭介を見送る。


「じゃあまた夜お願いします」


「はい。私は今日バイトが入っていないので早めに家にいると思います」


「オッケー。俺も今日は早いかな。昨日開発の方は終わらせたから呼び出しがなければ」


「了解です。19時頃でいいでしょうか」


「うん。また連絡する」


「はい、では」


他人がこの会話を聞いたら完全に同棲カップルのものだと勘違いしかねないが二人はあくまで一緒に料理を食べて勉強するだけの仲だ。


そういえばまだ学校で会ったことはないがどんな態度を取ったらいいのだろうか。

挨拶程度はしとくべきだろうか。

でもそうすると周りに知り合いだと認識されてしまう。

二人の関係性を示す適切な言葉が思い浮かばないので説明のしようがない。

色々考えてみたが結局はそうなったときに考えればいいやとまとめて京香は学校に向かった。



昼休み。

2階教室の窓際の席で一人弁当を食べ終えた京香は教科書を出して午後の授業の予習を始めた。

ふと窓から渡り廊下を見下ろすと柱にもたれかかっている圭介を見つけた。

クラスメイトらしき男子生徒とじゃれあっている。

学校での姿を見るとやはり年上の先輩なんだと実感する。

たった一歳しか変わらないのにどうしてこうも大人に見えるんだろう。


京香は不思議に思いながら圭介を眺めていた。


すると前方の窓の側に立っていた同級生の女子2人が圭介を発見し声を上げた。


「あれ琴吹先輩じゃない?」

「ホントだ。やっぱイケメンだよねー周りの先輩がモブにしか見えないんですけど」

「ウケる!」

「髪切ったらもっと美形が映えるのに勿体無いよね」


ほう。琴吹は有名人なのか。

顔が良いからモテるだろうとは思っていたが下の学年にも存在を知られているようだ。

窓から目を逸らし手元の教科書に視線を落としつつ、しれっと2人の話に聞き耳を立てる。


「7組の青山さんているじゃん」

「二中の子?」

「そうそう。夏休み琴吹先輩に告ったらしいよ」

「マジか!攻めるね!」


(マジか)


教科書を捲る手がピクリと反応する。


「でもガッツリ振られたらしい」

「ガッツリて」

「『好きでもない子と付き合えない』ってバッサリだって」

「青山さん可愛いのにね」

「あの子も友達からでもって食い下がったみたいなんだけど、

 『友達ってそうやってなるもんじゃないでしょ』って追い打ち!!」

「こわっ!正論が逆に怖い!」


優しい、もしくは情けない圭介しか見たことのない京香は少し驚いた。


(そんな振り方するんだ…)


あの圭介なら相手を傷付けないようにやんわりとした断り方をしそうなものだが。


「えーちょっと引くわ」

「顔が良くてもねぇ…」


(いやいや、めっちゃ良い人だし)


全く関係ない立場なのに反論したくなる。

告白されて断っただけではないか。

振り方がキツかったとしても言っていることが全て間違っているわけではない。


「しかもあの人学年一位なんでしょ?」

「ひえー!超ハイスペックじゃん!」

「頭良すぎて会話ついていけなそう…」

「確かに。会話成立する気がしない」


(いやいやいやいや…めっっちゃ話上手だし!)


心の中で何度も突っ込みつつ気づく。

そうか。

京香は勝手に話しが合うなぁと漠然とした感想を抱いていたが圭介はいつも自分のレベルにまで合わせてくれているのかもしれない。

圭介に申し訳ないと思いつつ


(ほら、やっぱり優しいじゃん)


と勝手に自分で結論付ける。

それと共に圭介との住む世界の違いを実感し胸がチクリと痛んだ。


顔良し、頭良し、スタイル良し、性格良し…


モテないわけがない。そしてかなり目立つ。

付き合っているわけではないが隣の部屋に住み、ご飯を振舞い、勉強を教えてもらっている。

こんな関係がバレたら…


想像したら恐ろしくなってきた。


学力も見た目も普通かつ平凡でこれといった特徴のない自分が仮に圭介と付き合っているなどと勘違いされたら周りの女子たちに何を言われるか。

それこそモブに徹している京香には表舞台に立たされてしまうなど耐えられるわけがない。

なんとしても隠し通さなければ。

一先ず外で会わないようにし学校でもエンカウントを避けることを決意した。

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