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鶏肉と野菜の甘辛煮

白洲京香は10歳で父親を交通事故で亡くしてから母と二人暮らしだった。

母の実家に身を寄せる話もあったが働き口が少ない田舎に帰るよりは、と母はこの街に残ることを決めた。

保険金や遺族年金、母子手当等あったもののやはりそれだけでは心許ないため母は元々パートとして働いていた会社で正社員を目指してフルタイム勤務を始めた。

まだ小学生だった京香はご飯を作って家で母の帰りを待つ鍵っ子になった。

たまに田舎から祖母が手伝いに来てくれたものの、それも結局は短い期間。

一人で家にいる時間が当たり前になっていった。


必死に働く母はいつもこう呟いていた。


「人生何があるかわからないから備えておかないと。

 お金なんてすぐなくなっちゃうんだから知識と経験を身に付けるのよ」


幼い京香にはその真意がよくわかっていなかったが、成長するにつれ母の言いたいことがじわじわと理解出来るようになってきた。


こんな世の中だ。安定なんてない。でも確実に堅実に稼ぎたい。

学歴なんて関係ないなんて言う大人もいるが就職に優位なのは当分変わらないだろう。



まずは難関国立大に入ろう!

そうと決まれば勉強だ!



京香は家での一人時間のほとんどを勉強に充てることにした。

無駄にお金を使いたくないので友人も作らない。

学校で会話をする必要がないので流行りのテレビも動画も見ない。

無限に時間があった。


黙々と勉強し続けた結果、県で一番の進学校に合格することができた。


目標に向かって第一歩を踏み出した!と思った矢先。


「お母さん再婚しようと思うんだけど…いいかな…」


寝耳に水だった。

再婚相手に出会う時間なんてあったの?と真っ先に素朴な疑問を抱いたが

相手は会社の同僚で母と同じく配偶者を亡くした男性だった。

会ってみると新しい父親が普通に良い人だったこともあり、反抗期らしい反抗をする暇もなかった京香は意外とすんなり受け入れ母の幸せを喜んだ。


しかし…


「それでね、お母さん春から転勤が決まっちゃったのよ。

 新しいお父さんも同じ支社への転勤が重なって一緒に行こうと思うの」


母は無事正社員になれたものの、正社員には安定と引き換えにこういう制約があるのだ。

二人とも栄転ということなので自分のために出世を諦めて欲しくない。

でも京香としても念願の高校に合格したばかり。

仕方なく京香は住み慣れたこの街での一人暮らしを選んだ。


女子高生の一人暮らしは危ないからと母の友人が大家をしているアパートに入居することになった。

母の顧客だった大家さんは60過ぎのおばちゃんでアパートのすぐ隣に住んでいる。

旦那さんは定年退職した後嘱託で働いているらしい。

何かあればすぐ駆け込めるし事情もわかっていてくれるので、京香も母も安心してお願いすることが出来た。


アパートは高校からも駅からもそこそこ近いのでアルバイトに通うのも便利だ。

今日もバイト終わりにゆっくり休もうとしていたところにまさかの行き倒れ遭遇。


(まぁ隣の人の顔が見れて安心も出来たし良しとしよう。同じ高校だし変な人だったらこれ以上関わらなければいいし)


鶏もも肉を一口大に切ってフライパンで両面に焼き目が付くまで焼く。

そこにいちょう切りにした人参と大根を入れ蓋をして蒸し焼きにする。

野菜から水が出てきたところに長さ3cmほどに切った冷凍いんげんを入れる。

最後に醤油、みりん、酒、砂糖を全体に回し掛けて煮込んだら完成。


(砂糖多めの方が食欲湧くかな?)


いつもより甘めの味付けに仕上げて冷凍ご飯をチンする。

両手が塞がるし洗い物も増えるので大皿にご飯とおかずを一緒に盛りつけた。

ご飯には白ごまを少し振りかける。こうするとちょっとカフェ飯っぽくなる。

ものの20分。効率最優先の京香は手際が異常に良いのですぐに料理を完成させてしまった。

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