空の飛び方を知ってる?
ねえ、君。
空の飛び方をしっている?
落ちるの。
目の前に大きな、暗い穴が空いたと想像してみて。
真っ暗で怖いよね。
でも、大丈夫。
暗い底を覗いてみて。ほら、一筋の光が見えるでしょ。
その光は空に繋がってるんだ。
だからね、
落ちるんじゃない。飛ぶの。
ねえ、私と空を飛ぼう。
気持ちよく、雲のベッドに寝転ぼう。
たった一歩踏み出せば、
ほんの少し勇気を振り絞れば、
君もこっちに来れるよ。
プラットホームで電車を待つ間、耳もとでやたらしつこく囁くアレに出くわした。
朝っぱらから気分が悪い。明日からは車両を変えよう。
アレもまさか全部聞こえるとは思ってないだろうが、なんとかそれっぽい気分にさせて、仲間増やしたいんだろう。
全く、季節になると湧いてくるのは、夏の虫と同じだな。
一向にそぶりを見せない俺に業を煮やしたか、アレはターゲットを隣の中年サラリーマンに切り替えた。
そいつなら、仲間になってくれるかもな。
まあ、がんばれや。