56 仲間
「マリーちゃん早いですね」
部屋に魔法陣が現れてアリアがログインしてきた。
回復薬を大量に錬金して作ったり装備の確認をしていたら集合時間になっていたようだ。
「俺も今来たところだ。アリア、あと少ししたらパーティーメンバーの2人が来るから仲良くしてやってくれよ」
「う、うん!頑張ります!」
アリアはキレてしまった一件から敬語で話すようになってしまったな。
「ん?マリーがもう来てる…」
マイルームのドアが開きミツハが入ってきた。
「たまにはな」
「…あ、あの!」
アリアは入って来たミツハの元に小走りで駆け寄って行く。
「だれ?」
「始めまして!アリアって言います!今日からパーティーに入れてもらいました!よろひくお願いしましゅ!!」
惜しい!最後2回噛んでしまった。
「アリアか。フッ…僕の名前は最強の闇魔法使い!そう!真の闇魔法の使い手!邪龍闇ミツハだ!」
ミツハがお決まりの手を顔の前にやるポーズ決めている。
「なんで言い直したんだ?」
「わ〜!格好良いです!!闇魔法使いってどんな魔法を使うんですか?!!」
アリアが目をキラキラさせてミツハに質問する。
「ふ、ふふふ…マリー、良い子を誘ったじゃないか」
「結構チョロいのな」
ガチャッと音が鳴ったのでドアの方を見るとアカリが部屋に入ってきた。
「あら?私が最後かしら」
「あの!ひゃじめまひて!アリアでふ!真の聖職者の…きょ、今日からパーティーに…」
「もういい!アリア!嚙みっ噛みだし途中にミツハみたいなのが入ってる!」
「僕みたいってなに?」
「そう…アリアちゃんっていうの、よろしくね。私は剣士のジョブのアカリよ。仲良くしましょうね」
噛みまくったアリアのことなど気にせず丁寧に挨拶を返すアカリ。年上感を出しているアカリを見て少し尊敬してしまった。
「でゅふふふふ…アリアちゃん…金髪のシスターとかヤバ…」
小さな声でボソボソと呟きながら人がしたらダメな目線でアリアを見るアカリの姿を見て、アカリに対して生まれたての尊敬が一瞬で死んだ。
「よし!挨拶も済んだことだし明日のイベントの話し合いでもするか!」
俺が席に座るとミツハ達も円になるように席に着く。あれ?椅子の数が増えてる。
「ふっふっふ!明日が楽しみだな!マリー!」
「……」
「……」
アカリとアリアの2人は困った顔で俺を見つめるだけで反応したのはミツハだけだった。
「どうした2人とも?こういう時は声出した方が、話合いが盛り上がってスムーズになるから声は出した方が良いんだぞ?」
「あの…マリーちゃん、私イベントに参加しません」
「私もよ」
「え?そうなのか…」
てっきり参加賞の為に参加しているものと思っていた。
「じゃあ、2人はどっか隅で何かしててくれ」
「いえ、一応聞くわよ」
「私も聞いてたいです」
「そうか…」
俺はミツハに話をしてくれと目線を送る。
「マリー、公式から来たメッセージは見たかい?」
「いや、しっかりと見てないけどイベントの内容が書いてあるんだろ?」
「うん、大体でしか書いてないけど…今回のイベントは決められた広大なフィールドでプレイヤーからポイントを奪い合うサバイバルゲームらしいよ」
「サバイバルゲーム?」
サバイバルゲームか…内容によってはキツイものになるな。
「他には何も書いてないのか?」
「他はね…PvPのルールとかかな。装備やアイテムは賭けて戦えない代わりにポイントを上限なしで賭けて戦えるってのと…えーっと」
「うんうん」
「PvPは1対2、2対2も可能って書いてあるんだ」
「それってつまり…」
「そう。2人で組んで戦った方が得ってこと」
ミツハが突然立ち上がり俺に手を差し出す。
「我が友よ!僕とタッグチームを組んで他のプレイヤーと挑んでやろうじゃないか!!」
「おう!話を聞いてミツハ以外を思いつかなかったぜ!やってやろうぜ!」
俺はミツハの手を勢いよく掴む。
「っふ、ふふふふ!僕たち『ダークフェアリーズ』の力を見せてやろうじゃないか!」
「おう!!…ん?なにそのダーク何とかって?」
「え?何って僕たちタッグの名前じゃないか!僕といえば『闇』でダーク、マリーといえば『妖精』でフェアリー、それを複数形にして『ダークフェアリーズ』」
「俺といえば妖精なのか?エリーがメインみたいで俺入ってなくないか?」
「それじゃあ『ダークネスサモンズ』でどうかな?」
「召喚士だからサモンか…でもそれだと闇を召喚する2人組みたいだし少し違うくないか?他には?」
「え!えー…『ダークファイターズ』ってどうかな?」
「俺が格闘家だからか…他には?」
「ほか?ほか…ダーク…ダーク…ダークライ」
「ねえ、マリー。それまだ続きそう?」
アカリが呆れた顔で聞いてくる。
「ミツハのネタが切れてきたからもう終わる」
「マリーが度肝抜くような、絶対良いチーム名を考えておいてやる!」
さてと、他にする事は…。
「ねぇねぇマリー、召喚士のレベルって上がってないの?」
「あ!そうだエリーがいない時に凄い召喚獣と契約したんだよ…そうだ!」
ミツハにイタズラしてやろうと案を思いつく。
「ミツハ、俺と2人で戦うんならこの召喚獣を使いこなせるようにならないとな」
「どういうこと?」
「『召喚』シャドウ!」
魔法陣が地面に描かれるとドッペルゲイミーのシャドウが召喚される。
「マリー!凄い!ドッペルゲイミーってレアな召喚獣だよ!」
「ドッペルゲイミー?」
アリア以外のミツハとアカリが黒いモヤモヤとしたシャドウに近づきマジマジと見つめている。
「ミツハ、この召喚獣は触れた相手に変身することができるんだ。ミツハも1度変身されてみたらどうだ?」
「な、なるほど」
ミツハがシャドウの手に触れようとする。
「言い忘れてたけど、シャドウが変身したら性格はランダムで決まるからな」
触れようとしていたミツハの手が止まる。
「どういうこと?」
「俺に変身した時は妖艶なかんじで廓言葉を使ってたな」
「妖艶なマリー?!!」
アカリが俺を見つめる。目を合わせるのが怖いので無視しておこう。
「ま、まあ触ってみたら分かるよ」
「もし変な性格が出たら直ぐに戻してね!」
「大丈夫だって、早く触ってみ」
「なんだか対応が適当過ぎない?!」
文句を言いながらもミツハはシャドウの手を握る。
「お?これをイエスで良いのかな?」
ミツハが独り言を呟くとシャドウのモヤモヤが下から消えていき、髪と眼が白いミツハに変身する。
「これが変身…」
「本当にミツハちゃんになった」
ミツハとアカリは近くで見つめる。きっと好奇心で見ているのだろうが、アカリだけ不純な気持ちがあるような気がしてならない。
「あ…あうう…」
「え?」
ミツハに変身したシャドウの顔が真っ赤になっていく。
「あ、あの!恥ずかしいのであまり見ないでください!」
「は?」
目をキョロキョロさせながら恥ずかしそうに話すシャドウミツハの行動にミツハはキョトンとする。
「あの…私、見られると恥ずかしいです…」
「ウソだろ…」
「コレは…」
俺とアカリはシャドウミツハをさらに見つめる。
「あうう…ご主人様…見ないで下さい」
恥ずかしそうに俺の方を見つめてくる。
「このミツハ、クソ可愛いな!」
「ええ!このミツハちゃんメチャクチャ可愛いわ!」
アカリと意見が合う。それもそのはずだ、普段のミツハは見た目は可愛いのにアホみたいなことしか言わないしこんな可愛い仕草もしたことがない。
「シャドウミツハ、ヤバイな〜!」
「ずっと見つめていられるわね!」
「ちょっと!こんなの僕じゃない!」
俺たちの後ろからミツハが叫ぶ。
「どうしたんだ?プロトタイプミツハ?」
「ミツハちゃんマークIIに何か意見があるの?」
「なんで僕の方が劣化版なの?!」
「そりゃあな…」
俺とアカリはシャドウミツハを見つめる。シャドウミツハは声を漏らしながら恥ずかしそうに俯く。
「な?」
「な?ってもう良いから戻して!」
ミツハも十分イジれたので戻すことにする。
「分かったって…ありがとな、シャドウ。戻ってくれるか」
「は、はい。ご主人様、あの…また召喚して下さいますよ…ね?」
少し涙目で小首を傾げながら俺の方を見つめるシャドウミツハ。
「「可愛い!!」」
アカリと声がハモる。
「もういいって!!」
ミツハが顔を真っ赤にして叫ぶのでシャドウを戻す。
「ふふふふ…!皆さん本当に仲が良いんですね」
「ああ、最高のパーティーだよ」
アカリに茶化されて怒っているミツハと横に居るアリア。それを少し遠くでみんなを眺めているエリー。
俺は失ってばかりだった…記憶も何もかも全て。でも俺はこれから先絶対に失くしたりなんかしない。
「俺は絶対に仲間を守ってみせるよ」
こうして公式イベントのランキングサバイバルゲーム。
通称『奪取領域』が開催される。
これにて第2章は終わりです。
次回はバトルがメインの奪取領域編が始まります。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。




