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21・食事

「「……」」


 エリーと俺は、どうしようかと悩み沈黙する。

 おしゃぶりって…何でしているのか聞こうかと少し思ったが、目つきがキリッとしているせいか、下から見上げると見下されているようで凄い怖い。

 聞こうという好奇心が一瞬で無くなった。


「す、すみません…俺たちの冗談だったんですよ〜。だよね〜エリー」

「も〜、今日も人に迷惑かけちゃったよ〜本当にすみませ〜ん」

「……」


 よし!やり過ごせそうだ!

 若い子風に退散しよう作戦成功だ!


「よ〜し、エリー。一緒にハンバーグ食べるか〜」

「うん!楽しみ〜私ステーキも食べた〜い」

「この欲しがりさんめ〜…そ、そういうことで、剣士のお姉さん。勘違いさせてしまって、すみません。では!」


 俺たちは店内に入ろうと歩こうとする。


「ねぇ、君たち」

「「…っ!」」

「良かったら一緒に、ご飯良いかな?」


 ダメだった!店の前でふざけるんじゃなかった!俺のバカ!エリーで遊ぼうだなんて思いつくんじゃなかった!


「そ、そうですね…人数が多い方が美味しいですしね」


 断る勇気がなく一緒に店の中に入ると、中は至って普通のファミリーレストランだった。

 腕が少し光った気がしたので見ると、武器として装備していた腕輪が消えていた。後ろのおしゃぶりを咥えた女の子の背中の剣も消えていた。店内では戦闘が禁止されているのか?

 店員さんに奥の方の席に誘導され、おしゃぶりを咥えた女の子と対面して座る。エリーは机の上に座布団を置き正座している。


「……」

「……」

「……」


 3人居て、こんなに喋らない事ってある?お通夜の帰りかよ!

 もうここは勇気を振り絞って聞こう!

 俺は店員さんの置いていった透明なプラスチックのコップに入った水を少し飲み覚悟を決める。


「あの…」


 エリーも小さなコップに入った水を飲みながら俺を見つめる。

『遂に聞くんだね…マリー!』と思っている気がする。


「俺、ハンバーグとステーキのセットにしますけど、お姉さんはどうします?」

「ブッ!!」


 エリーが水を吐き出す。

 仕方ないだろ…凄いジッと見つめてきて怖くて聞きづらいんだよ!


「私はチーズデミグラスハンバーグ~辛かった冒険の思い出風~ で」

「じゃあ注文しますね」


 横にあったボタンを押して、店員さんに注文を済ませる。


「……」

「……」

「……」


 店員さんが去ったあと再び沈黙が始まる。

 かと思ったが、店員さんが戻ってきて鉄板を2つ持ってきた。


「ハンバーグとステーキセットとチーズデミグラスハンバーグ~辛かった冒険の思い出風~、お持ちしました〜」


 テーブルに置かれ、ジュウジュウと肉が雄叫びを上げている。


「い、いただきます」

「いただきます」


 横にあったフォークとナイフを持つ。

 これを食べたら聞こう…絶対に聞こう!


「あのさ…私がどうして、おしゃぶりを咥えているのか聞かないの?」

「え…!」


 突然の一言で切ろうとしていたナイフをピタッと止める。


「き、聞いても良かったんですか?」

「いえ…聞いてほしくはないけど、でもどうして聞かないのかなって思って。普通、おしゃぶりをしている人が話しかけてきたら『どうしてそんなの、してるの?』って聞くでしょ?」


 聞いても良かったのか…でも聞かなかった理由が、目つきが怖かったというのは言わない方が良い気がする。

 ここはカッコつけよう。


「簡単なことですよ…お姉さんの顔が聞いてほしくなさそうだった、聞いて嫌な顔をされるくらいなら聞かずに一緒に楽しくご飯を食べたかった、ただそれだけの話です…」


 俺は少し斜め上を見ながら淡々と話す。

 エリーを見るのは恥ずかしいから見ないようにしよう。


「そうか…君のような考えを持っている人に出会えて良かった…。私の頼みを聞いてはくれないでしょうか?」

「頼み?」


 俺は女の子の方を見る。おしゃぶりを外し、真剣な表情で俺を見つめていた。


「私の名前は『アカリ』ジョブは剣士にしている」


 名前は頭上を見れば分かるし、ジョブもそんな気はしていた。


「俺の名前は…」

「大丈夫だ、マリー君。君は有名人だからね、名前もジョブも、どんな召喚獣が召喚出来るのかも知っている」

「そ、そうか…俺って結構有名人なんだな」


 そういえば掲示板でも俺のヤツがあった気がするな。


「それで、私の頼みは…一緒にガブリとゴブリ兄弟と戦ってほしいんだ」

「それって…!」

「そうだ、酒場にいるNPCキャラだ。この兄弟は2対2のPvPで戦わなくてはいけないだが、私には仲間がいない。だから一緒に戦ってほしい」


 これは有難い誘いだ。

 アカリさんとクリアすれば2つクリアしたことになるし、俺としても是非お願いしたいくらいだ。


「こちらこそ!是非頼むよ!実はガブリとゴブリの兄弟を倒すのがミッションクエストで出てるんだ!」

「何!君もか?それではお互いメリットはあるようだな」

「ああ」


 良かったトントン拍子で上手くいっている。

 これだと今日中に『石』が手に入りそうだな。


「甘いよ、マリー!初恋の女の子から貰ったチョコレートに、きな粉をかけて食べるより甘いよ!」

「アカネの例え方かよ!」


 今まで黙っていたエリーが突然喋り出す。

 エリーの方を見ると、鉄板の上のハンバーグが綺麗になくなっていた。


「お前…俺のハンバーグ全部食べたのか…?」


 座っているエリーの姿は、着ている白いワンピースがはち切れそうな程お腹が漫画の主人公みたいに大きくなっていた。


「ウソだろ、エリー…あの量を全部食べたのか?」

「まあ、私のからしてみれば大したことない量だったよ!」


 ドヤ顔で親指を立てる。


「このヤロウ…!褒めてねぇんだよ!この腹の中か!この腹なのか!!」

「や、やめて!指でお腹を突かないで…!出るから!ハンバーグ、出るから…!」


 ドヤ顔で言っていたのが余計に腹が立つ!

 少し強めに突きまくる。


「フフ…」


 急な笑い声に驚き見ると、アカリさんが笑っていた。


「すまない、笑ってしまって…。でもあまり妖精君を攻めないであげてほしい。私も実は、妖精君が食べているのに気付いていたが君に教えなかったんだから共犯だ」

「いや、それでもエリーが悪いだろ…」

「マリー…ここはアカリちゃんの顔を立てて許した方が良いよ」

「お前が言うなよ…!!」

「やめて!お腹を摘まないで!出るから!ステーキが出るから!!」


 そういえばステーキもあったな!

 コイツ、そんなに食べたのかよ!


「分かったよ…その代わり、甘いって言った理由を教えてくれよ」

「よしゃ!アカリちゃん、ガブリとゴブリと戦ったことはある?」

「コイツ『よしゃ』て言ったな…」

「1度だけ女の子と組んで戦った」


 にしても、エリーのお腹凄いな…。何も知らない人に『明日4つ子を出産なんです』って言っても疑わないだろうな。

 指で優しく突くいたり撫でたりして触っていると、ずっと触っていたくなる感触だ。


「んっ…ど、どうしたのマリー?なんだか優しく触られると、くすぐったくて恥ずかしいんだけど…」

「ごめん!ずっと触っていたくなる触り心地だから、つい…」

「そうなんだ…でもマリーに触られるのは嫌じゃないから、マリーならずっと触ってても良いよ…」

「エリー…」

「ゴッホン!!ゴッホン!!ゴッホン!!」


 大きな咳で我に帰る。アカリさんを見ると顔が赤くなっていた。


「すまないが、妖精君。私が戦った事があるのを聞いた理由を教えてはくれないか?」

「あ〜その話だったね!実はガブリ兄弟は戦う度に兄のガブリのジョブが変わるんだよ」

「「ジョブが変わる?」」


 アカリさんとキレイにハモる。

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