第1章3話 【New Equip Adventure World】にようこそ
『いざ冒険の旅へ!』
真っ暗な部屋がカッと急に眩しくなり目を瞑る。
暫くすると周りの賑やかな話し声と水の音が聞こえ少しずつ目を開けていくと今までの真っ暗な空間ではなく明るい街並みに居た。
中世ヨーロッパ風の建物が並ぶ街、上を見れば燦々と輝く太陽がある。下を見ればレンガが敷き詰められた地面がある。
「すっげぇ…」
本当にゲームの中なのか…信じられない。
耳を澄ませば人の声や鎧のガチャガチャする音も聞こえる、風が吹いているのを肌で感じる、匂いも風の匂いとなんだか甘い匂いがする。
自分の服装を確認すると『召喚士の装備』を装備していた。ローブの袖が少し長く萌え袖みたいになっているのが嫌だな。
「ん?」
目の前の地面に魔法陣現れる。するとそこから赤いハチマキをした中級冒険者のような格好をした20代くらいの男が出現した。
なるほど、自分もこういう風に出てきたのか。
そういえば設定終わったらマリアに連絡しないといけないんだった。たしかメニューから接続したスマホで連絡できるんだったな。
「ん?」
ポケットや服をポンポン叩くがメニューがない。……メニューとは一体?
待てよ!焦るな!考えるんだ…そうだ!キャラクター設定で念じたら出来たし、もしかしたら念じたら…!
「メニュー出ろ〜メニュ〜」
目の前に11インチほどのキャラクターの設定をした時のパネルが現れた。やった!思った通り上手くいった!
『可愛い〜』『始めたばっかりかな〜』『いくつくらいなのかな〜』
ヒソヒソと声がするので周りを見ると、色々なプレイヤーが俺を見ていた。さっきの念じてるとこ見られたのか…恥ずかしい!
周りのみんなが俺の事をめちゃくちゃ見てる。何でだろう…と考えてすぐに分かった。そういえば、今見た目がマリアだ!こんなに美少女が独り言を言っていたら、みんなから見られるわけだ。そうだよな!こんな美少女がいたらそりゃ見るわな!恥ずかしくて頭の中が混乱する。
早くマリアに連絡して場所を変えよう。急いでメニュー画面からスマホの項目があり連絡先からマリアを探してメールを送る。
『無事に設定終わった。どうしたらいい?』
10秒ほどでメールが返ってきた。
『始まりの鐘の前で待ってて』
始まりの鐘とは?そういえば、メニュー画面にマップがあったな。マップを開くと自分の居る位置から『始まりの鐘』は真っ直ぐに歩いたら行けるみたいだ。
「ねぇ、君1人?良かったら一緒に冒険しない?」
歩き出そうとしたら声を掛けられる。さっき召喚陣から現れた赤いハチマキをした男だった。
「すみません。待ち合わせしてるんで」
「ちょっと待って!」
歩き出そうとすると目の前に男に回り込まれ遮られる。改めて思うがマリア目線だと普通の男がデカくて怖く見えるな。
「待って待って!待ってる子も一緒で良いからさ!それに俺って結構強いしマリーちゃんの格好的に後衛の魔法使いでしょ?前衛の俺みたいのがいた方が良いって!ねぇ?一回だけパーティー組まない?」
コイツなんで俺の名前分かるんだ!と疑問を浮かべたが、バンダナ男の頭の上を見ると青い文字で「キーパー」と名前が表示されている。
「すみません。絶対に待ち合わせしてる子も知らない人とパーティーを組まないので行きますね」
ハチマキ男を避けて歩き出す。またも回り込まれ前を遮られる。
「待って待って!絶対に後悔させないし楽にレベルも上がるし君も得だと思うから1回だけ!ね!?」
「っ…」
鬱陶し!この場合はどうしよう…。
「おい、兄ちゃんナンパなんてみっともねぇからやめとけって」
「マリ…!!」
後ろから男の声がしたので、え?もしかしてマリア!!っと勢いよく振り向くと、マリアではなく山賊か何かと思ってしまう様な汚い格好をした20代半ば程の男がいた。
「兄ちゃん、そのお嬢ちゃんも嫌がってんだ諦めた方がいいと思うぜ」
「あ、あんた何なんだ!関係ないだろ!」
ハチマキ男が注意されて焦っている。一瞬マリアが来てくれたのかと期待して、知らない奴でガッカリしていたけど結構良い人だ。
「ここでやめとくのはお前のためでもあるんだぜ。そこのお嬢ちゃんが通報したらお前は終わりだ。それに周りにいるプレイヤーもそろそろ通報するかもしれないしな。だから諦める事だな」
「ッチ!!くそが!カッコつけやがって!」
ハチマキ男は走って逃げていく。通報なんて機能があるのか…次もあるかもしれないから覚えておこう。
「お嬢ちゃん、大丈夫だったか?おっと、安心しろよ。俺は別に礼やナンパ目的で助けたわけじゃねぇからな」
「ありがとうございました。もしお礼が欲しいって言われても、始めたばかりなのでお礼なんて出来ないですけどね」
見た目の割に凄い優しい人だ。これからは見た目で人を決めつけないようにしよう。
「気にするな。それじゃあナンパに気をつけてな!ガッハハハハハハッ!!」
豪快に笑いながらその場を後にする山賊風の男。頭の上の名前を見ると『黄金騎士』と表示されている。黄金騎士?黄金要素ゼロだろ!っとその背中を見送りながらツッコミを入れる。
周りが少しざわつき始めたので俺も逃げるように始まりの鐘に向かって歩く。