第2章18話 [新たな仲間]
「マリー!もう良いのか?」
ミツハがマイルームにある扉から現れる。
「すまないな。急に呼び出して」
「うわ!凄い、悪の幹部みたいだ!」
椅子に座り、足を組みながらスピカを膝に乗せて足元にはナイトが寝ている。
たしかに典型的な悪い幹部みたいだな。
「まあ、立ち話も何だし座れよ」
「セリフまで悪の幹部みたいだ…」
ミツハは小さくツッコミを入れながら椅子に座る。
「ミツハ、気を遣わせってしまって、ごめんな」
「気にしないでくれ、マリー。初めて負けたんでしょ?僕もキングオークに負けた時はショックだった」
ミツハは優しくニコリと笑ってくれた。
「ありがとな…。それで俺とエリーで色々考えたんだけどさ。今からナイトを進化させようかと思っているんだ」
「なるほど。ナイトが進化すれば戦闘面でも合成でも強くなれるし、良いんじゃないかな」
「エリー、次の街に行く道中ってモンスターって出るのか?」
「うん、ゴブリンとスピードラビットが出るよ」
「スピードラビットか…倒しづらいな…。ゴブリンを基本倒していってナイトを進化させるか」
「そうだね…」
ミツハは俺の膝で寝ているスピカを見て同意する。
「マリー、ナイトはどれくらいで進化出来るんだ?」
「え〜と、あと1回か2回くらい戦闘したら出来るんじゃないか?」
「そうか…」
ミツハは腕を組み考え始める。
「ねぇねぇ、マリー。マリーもレベルアップしてるんじゃない?合成も沢山したし、ゴッドも召喚したしさ」
「そうかな?」
机の上に敷いてある座布団に座っていたエリーが話す。
俺は自分のステータス画面を開き確認する。
マリー Lv 8 〔13322G〕 Ranking--
メインジョブ/召喚士 Lv3 サブジョブ/格闘家 Lv3 覚醒ジョブ/合成士Lv2
HP/130 MP/170 STR/200 VIT/150 DEX/100 AGI/50 INT/50 LUK/25
《武器》
召喚士の腕輪 MP+70
《 装備》
頭/星のヘアピン LUK+25 HP+15
胴体/白魔法使いのローブ MP+50 HP+100
腕/ 魔法使いの腕輪 MP+50 HP+30
足/冒険者の革靴 AGI+55
本当だ。俺のレベル自体は変わっていないが、召喚士と合成士のレベルが上がっている。
召喚士はレベルが上がるごとに召喚獣が一体増やせる。
召喚獣を増やす前に、合成士のスキルが増えていないか確認しよう。
『一点集中合成』
【1つの武器や装備に合成すると、効果が増した装備が合成できる。例〈靴+召喚獣〉〈剣+召喚獣〉】
『クイック合成』
【一度合成した事のある装備をモーションなしで、一瞬で合成し装備できる】
一点集中合成は夢があるな。またやってみよう。
クイック合成は、あのぶつかって生まれる瞬間がなくなるってことかな?これもまた確認しよう。
合成のメニューを見ていると不思議な項目を見つけた。
「合成の素材に俺の名前がある、それにマリーの名前もある…けど薄黒くなっていているけど合成出来るのか?」
俺とマリーの名前があるが黒くなって押しても反応しない。
「まだレベルが足りないんじゃないの?私くらいレアな妖精を合成するんだから当然だけどね!」
「そうか。絶対にいつか、薬草と合成してやる…」
「薬草って!もっとマシなものと合成してよ!私を合成するんだよ?!」
「案外、エリーの羽が草になって面白いかもしれないぞ」
「そんなの嫌だよ!!薬草だけは絶対にやめてよ!せめて剣とかカッコいいのにしてね!」
エリーが本当に嫌そうにしている。
「分かった分かった。召喚士のレベルも上がってるから、召喚獣を増やそう」
「適当な対応だね!でも大丈夫かな?この前がゴッドだったから、運を全部使っちゃったんじゃないの?」
「不吉なこと言うなよ!大丈夫だよ…きっと。俺のこの『勝ちたい!』「強くなりたい!』って思いに召喚獣は答えて召喚されるはずだ!」
「だと良いけどね」
エリーが全然期待していない態度だ。絶対にエリーが驚くような召喚獣を召喚してやる!
「いくぜ!契約『召喚!!』」
魔法陣が目の前に現れる。
「これが召喚士の『契約召喚』初めて見る…」
ミツハがボソリと呟く。
そうか、今回はギャラリーもいるんだ。頼む!カッコいい召喚獣来てくれ!!
ボフンと白い煙が上がる。
「きた!どうだ?」
煙が消えていくと、口がドリルになっている30センチほどの茶色のネズミがいた。
「……なんだこれ?ネズミか?」
「マリー、これはモグラだよ」
ミツハに冷静に訂正された。
「モグモグ」
「ホントだ、鳴き声がモグラだ」
「実際のモグラは、『モグモグ』なんて鳴かないけどね」
ミツハに冷静に訂正される。
「……うわーーーー!!!モグラって!あんだけ言ってたのに!!祈りを込めて召喚した召喚獣がモグラだった件!!」
「落ちついてマリー!僕的には可愛いと思うよ!だから、そんなに落ち込まないで!それと、感想をラノベのタイトルみたいに言わないで!」
ミツハが励ましてくれる。俺は何とか冷静になりモグラを見る。
口のドリルで攻撃されないかビビりながら頭を撫でてみると、モグラは気持ちが良さそうに目を細めている。
「良かった、最初から信頼度は高いみたいだ。にしても、このモグラは一体…?」
モグラのステータスを見る。
・モグラード『No name』 Lv1/8 信頼度6 〈R2〉
HP/100 STR/100 VIT/50 AGI/50
森や荒野などに集団で住むモグラ。火山や雪山などに順応して生きると『火モグラード』『氷モグラード』に進化する。仲間意識が強く仲間のためには命を懸けて自爆する。極稀にジョブを持ったレアなモグラードが発見されることがある。残り進化1回。
スキル『自爆』
【自爆し相手にダメージを与え、VITを50下げる】
アビリティ『突撃』
【相手の装備に突き刺さりVITを50下げる】
何となくでしか覚えていないが、弱さはスピカの幼体の時と良い勝負なんじゃないだろうか。
ステータスこそ低いがレアリティが5以下なのにスキルとアビリティがあるのは強いな。
それに進化するみたいだし、弱いと決めつけるのは良くないよな。たぶん。
「モグラードは結構出現率の高い雑…じゃなくて、倒しやすいモンスターらしいよ。装備に突き刺さってきて防御力を下げて、自爆してくる厄介なモンスターって書いてあるね」
ミツハ!お前、雑魚って言いかけただろ…!メニュー画面を見ながら話すミツハ。多分ネットで調べてくれているようだ。
「まあ良いか。モグラード…モグラ…土に潜る…名前は『モグ郎』だな」
「寒っ!土に潜ろう…しょうもない!」
マリーが何か言っているが気にしない。
「宜しくな、モグ郎!」
「モグモグ!」
頭を撫でてやると嬉しそうにしている。モグ郎を見ていると、口がドリルになっているのにどうやってご飯食べるんだろう、などと考えてしまう。
「召喚獣も召喚したし、次の街に行くか?」
「その前にマリー、僕とPvPをしないか?」
「え?」
ミツハの突然の提案に驚く。