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第2章15話 [決着]

「ミツハ、頼む!賢者の腕輪、貸してくれないか?!」

「別にいいけど、マリーってMP沢山使うスキルってあったっけ?」

「黙ってて悪かったけど、実はMPを大量に消費して召喚する召喚獣がいるんだ!」

「そうなの?」


 ミツハは迷うことなく腕に装備していた『賢者の腕輪』を俺に差し出す。


「いいよ、その代わり期待してるよ!」


 召喚する召喚獣に対してなのか、勝負の勝敗に対してなのかは分からなかったが期待には答えよう。


「おう!任しとけ!」



 ミツハとPvP前にした会話を思い出す。


「召喚獣の力?まだ出してない召喚獣でもいるのか?」


 俺は無言でメニューから『妖精の聖衣』を装備する。


「ああ。アカネ、お前に最強の召喚獣を見せてやる」


 メニューを開き合成士を選択し、ナイトと賢者の腕輪を選ぶ。


「ナイト。ミツハ。力を貸してくれ!『合成!』」

「ワウ!」


 ナイトと装備していた賢者の腕輪が発光しながら浮かび上がり、勢いよくぶつかると激しい光が放たれる。


「頼む…!」


 心の中で祈っていると、頭の中で『ピポーン!』と音が鳴る。

 光が収まっていき、目の前に狼の顔が彫られた黒くなった腕輪が浮かでいた。


「装備!」


  右腕腕輪をはめて装備する。

 メニューでステータスを確認する。


 マリー Lv 8 〔13322G〕 Ranking--  

 メインジョブ/召喚士 Lv2 サブジョブ/格闘家 Lv3 覚醒ジョブ/合成士Lv1


  HP/415 MP/1300 STR/250 VIT/200 DEX/150 AGI/150 INT/175 LUK/100  


 《武器》

  黒狼王(こくろうおう)の腕輪 MP+800 HP+400〈R7〉

  《 装備》

  頭/ 星のヘアピン LUK+25 HP+15

  胴体/ 妖精の聖衣 MP+700〈R7〉

  腕/【黒狼王の腕輪】 (武器として装備している為、変化なし) 〈R7〉

 足/冒険者の革靴 AGI+55


 黒狼王の腕輪スキル『闇の壁』

【毎秒HP10消費しSTR2000までの攻撃を防ぐ壁を5つまで生み出せる。使用後5秒間使用不可】


 黒狼王の腕輪アビリティ『影操り』

【毎秒MPを10消費し相手を影で縛り動けなくする。使用後再使用不可制限なし】


 妖精の聖衣アビリティ『聖なる加護』

 《15秒間MPが減らなくなる。このアビリティ使用後、【妖精の聖衣】はゲーム内で1日の間は使用不可になる》



 よし!思ってた通り、壁を生み出すスキルとMPが1000を超えた。これでゴッドが召喚できる!

 にしても、今の俺の見た目が弱そうだ…白いワンピースと靴と腕輪しか装備していない。


「すまない。待たせたな」

「もういいのか?じゃあ見せてもらうぜ!お前の力ってヤツを!」


 アカネは腕を組み、俺が合成し終わるのを律儀に待っていてくれた。

 先ずは確実に攻撃を当てるためにアカネの動きを止める!


「スキル『闇の壁!』4枚!」

「なんだ…!」


 アカネを四方に壁が現れ囲む。


「洒落せぇ!『正拳突き!』」


 『ドン!!』と壁を殴る音がしたが、壁は頑丈だったようで壊れなかった。


「焦ったぜ…アビリティ『影操り!×5!』

「な、なんだ!くそ…!」


『闇の壁』の中でアカネが慌てている声がする。


「成功したみたいだな…」


 壁を消すと黒いオーラが出るヒモで縛られたアカネが現れる。


「セコイだなんて言うなよ。こうでもしないと勝てないからな」

「ハッ、言わないさ…それで、ここからどうするんだ?」

「言っただろ、召喚獣を見せてやるって!『召喚』!」


 俺の後ろに巨大な召喚陣が現れる。

 勝負は聖衣のアビリティの15秒間。これで終わらせる!


「来い!魔王討伐兵器人製『機械神ゴッド 』の右腕!!」

「機械神だと…!!」


 召喚陣から生えるように、十数メートルの腕が召喚される。


『機械神ゴッドの右腕』 Lvーー 信頼度ーー 〈R10〉

  HP/10000 STR/10000 ATK/10000 VIT/10000 AGI/10000


 スキル『マシニティック・ゴッドブロー 』

【全てを破壊する最強の一撃。スキル発動中、相手の盾や壁を破壊することが出来る】


「最高だぜ!マリー!!来い!!!」

「いくぜ!機械神ゴッドの攻撃!!『マシニティック・ゴッドブロー!!!』」


 勢いよくアカネに向かって拳が向かう。


「くっ!『ホーリーバリア!』『ホーリーバリア!』『ホーリーバリア!』『ホーリーバリア!』『ホーリーバリア!』『ホーリーバリア!』」


 アカネが早口言葉のように魔法を唱える。目の前に天使の羽を模した盾が何枚も出現するが…。


「無駄だ!!いけーー!!ゴッドーーー!!!」


 パリンッ!パリンッ!パリンッ!パリンッ!パリンッ!と薄い煎餅のように盾を破壊していき、ゴッドの(こぶし)はアカネに直撃する。


「…っっ!!!!!!!」


 物凄い勢いでアカネは壁まで吹き飛んでいき砂埃が舞う。

 ゴッドも時間が経ち、徐々に薄くなっていき消えていく。


「勝った…勝ったんだ!」


 俺は安堵から膝から崩れ落ちる。

 装備も妖精の聖衣のアビリティを使ったので、元の魔法使いの装備に戻る。

 だが、勝ったというのにPvPが終わらない。



「何でだ?何でPvPが終わらない…?」

「マリー…アカネちゃんはまだ倒せてないよ…」

「え…?」


 額から冷や汗が流れ、心臓の鼓動が早くなる。


「有り得ない…。あの攻撃で倒せないわけがない…!」

「っ…」


エリーが悔しそうな顔でアカネが吹き飛ばされた場所を見つめる。

 俺もアカネが吹き飛んだ場所を凝視する。

 砂埃が収まっていくと、人影が立っているのが見えた。


「何で…あの攻撃を…!ゴッドの攻撃を本当に耐えたっていうのか!!」


 砂埃の中から満身創痍のアカネが現れる。


「ハァハァ…ハァ。ヤバかった…。本当にヤバかったぜ。あの時『ホーリーバリア』を1回でも少なく唱えれていなかったら負けていた…」

「ど、どういう意味だ…?」

「マリー…『ホーリーバリア』は破壊された時に、自分のHPの上限を破壊されてから10分間だけ、プラス1000される防御魔法だよ」

「そんな…」


 ホーリーバリアを6~8回ほど唱えていた、つまりプラス6000以上されたってことか…。

 10000のSTRでも倒せなかったわけだ…。

 アカネのHPバーが少しずつ回復していき、アカネの体にあった傷が少しずつ消えていく。


「マリー、お前はワタシの戦った中で1番だ!1番、強かった!まさか、ワタシのHPをここまで減らすとはな!」

「くっ…くそ!!」


 俺は膝立ちの状態から立ち上がろうとするが、力が入らない。


「何でだ!力が…入らない!」

「マリー!MPを使い過ぎたんだよ!」


 そんな…!このままじゃ負ける!


「動け!俺の足!頼む…!動け!!」

「マリー。降参しても構わないぜ。ワタシはお前に感謝してるんだ。お前からとんでもないプレゼントを貰ったんだからな」

「そんな…まさか…」


 エリーが何かに気づき驚いている。


「妖精さんの方は気づいたようだな…マリー、アンタにも教えてやるよ。ワタシの格闘家の奥義スキル『模技(もぎ)』は、相手のスキルを受けた時、高確率で使ったスキルをコピーすることが出来る能力だ!」

「俺の使ったスキル…俺はアカネにスキルなんて……っ!まさか!」

「分かったか?想像通りだ…ワタシはゴッドのスキルをコピー出来たのさ!ワタシも驚いてるんだ!まさか召喚獣のスキルもコピー出来るなんてワタシも思っていなかったからな!」


 アカネは嬉しそうに話す。よほど嬉しかったのかテンションが高い。


「マリー、これで決着だ!!」

「…っ!」

「マリー…」


 アカネはゆっくりと、こちらに歩いてくる。

 完敗だ…。もう勝つ手段はない。召喚獣もいない…仮に合成が出来たとしても動けないんじゃあ意味がない。

 俺は何とか足をガクガク震わせながら立ち上がる。


「お?まだ()るのか?」

「いや、もう完全に俺の負けだ…。だから攻撃を当てやすいように立ち上がってやっただけだ」

「マリー!降参して!アカネちゃんの攻撃をわざわざ受けて痛い思いする必要ないよ!」


 エリーは俺の肩を揺すりながら耳元で叫ぶ。何とか立ち上がっている状態だから、あんまり揺らさないでほしい…。


「エリー、俺は負けるんだ。負けるヤツが降参するのはダサいだろ。それに、この負けた悔しさを忘れないように攻撃は受けておきたい。すまないな…」

「いい覚悟だ」

「アカネ、分かっていると思うがコピーしたゴッドのスキルで頼むぜ」

「ふっ…受けたワタシが言うが、結構痛いぞ」


 アカネがニヤリと笑い、腰を落とし構える。


「エリー、離れてろ。それで、この俺の負けを忘れるな!2人で…いや、召喚獣のみんなで強くなって次は負けないようにするぞ!」

「…うん」


 エリーが遠くに飛んでいく。

 俺はアカネに目で合図を送る。


「いくぜ!マリー!!『模技!』」

「アカネ!俺は次は絶対に負けねぇ!絶対に…!!」

「『マシニティック・ゴッドブロー!!!』」

「ッ…………………!!!!!!!!!」


 透明な大きな拳が全身に直撃する

 いてぇ…!アカネ、お前こんな凄い衝撃を耐え抜いて立ち上がってきたのか…。

 俺じゃあ無理だ…そういう意味でも負けだよ。

 吹き飛ばされながら周りを見るとスローモーションのように、ゆっくりとしていた。

 エリーを見れば泣いている。ミツハを見れば驚いているのか悲しそうな顔なのか変な顔をしている。右手を見るとヒビが入ってきている。


「これが負けか…」


 俺の体はガラスのように砕け、視界が真っ暗になる。

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